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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
明和の政変

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江戸政変秋の陣<16> まだ慌てるときじゃない!by井伊直幸

明和9年10月5日 三宅坂


「隼町方向より敵襲!」


 姿をくらましていた水戸兵団別働隊が本隊の狼煙により横撃を開始したのである。


 本来、この強襲はもう少し後の局面で行うことを水戸兵団は考えていたのであるが、三八モドキによる騎兵隊殲滅という事態で投入せざるを得なくなったのだ。


 だが、いざ乱戦になって井伊兵団も目の前の敵と応戦していると第二の敵がいることを頭ではわかっていても対応が遅れてしまったのだ。


「鉄砲隊、敵別働隊へ制圧射撃!」


 井伊兵団の鉄砲隊指揮官が射撃目標を変更し、別働隊騎兵を制圧するように指示を出す。


「近すぎます!」


「構わん、狙わなくて良い!敵の勢いを殺すんだ!」


 パパパパパパーン ガシャガシャガシャガシャ パパパパパパーン


 敵集団前面に着弾し騎兵の半分が落馬、戦列から去った。


 だが、敵も既に勢いづいているため、あっという間に主戦場に到達する。こうなると勢いがある方に分が出てくる。


 精強と名高い井伊の赤備えと言えど、多勢に無勢とまでは言わないが、徐々に押され始める。


「敵は及び腰ぞ!井伊の赤備えも聞こえしほどではない!蹴散らせ!」


 水戸兵団の指揮官が叫ぶ。


 水戸兵団の足軽らは喊声で応え、戦局が傾くのが誰にも分った。


「……くっ、撤退せよ!鉄砲隊、撤退支援を!」


 パパパパパパーン ガシャガシャガシャガシャ パパパパパパーン


 彦根藩邸の物見櫓からの射撃と一足先に撤退し第二次防衛線を敷いている鉄砲隊の支援射撃が行われる。彼らはある意味では板挟みにあっている。本来の能力を存分に発揮すれば制圧も可能だろうが、やり過ぎないように、だが、味方の被害を出来るだけ出さないように、そして敵も倒し過ぎなように……。


 水戸兵団も撤退する井伊兵団を逃すものかと斬りかかる。彼らは勢いに乗り、功を焦り我先にと統率を失い敵兵めがけて突撃していくのであった。井伊兵団も出来るだけ応戦せず逃げ切ろうとするが、敵の数が多いだけにそうも簡単には逃げられない。


 しかし、物見櫓からの精密射撃によって水戸兵団の足軽指揮官がバタバタと倒れ、組織的な攻撃が出来なくなってきた。


 水戸兵団も鉄砲隊が前線に到着し、物見櫓へ黙らせるように制圧射撃を行い、乱戦を続け統率が取れない集団に戦列復帰の時間を稼いでいる。


 その間に井伊兵団は多くの犠牲を払いながらも第二次防衛線へ撤退したのである。

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