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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
明和の政変

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江戸政変秋の陣<13> やべぇ、この歩兵銃クセになりそうだby彦根藩士

明和9年10月5日 三宅坂


「敵、水戸兵団、行動を開始!」


「鉄砲隊が前進、種子島の射程まで移動する模様!」


「鉄砲斉射の後、騎馬隊が突撃してくるぞ!馬防柵の設置急げ!」


 三宅坂の彦根藩邸付近に陣取る井伊兵団も水戸兵団の動きを察知するやいなや行動を開始した。


「いいか、程よく引き付け、手際よく撤退するのだ!」


「敵騎馬兵が突撃してきたらこれを殲滅しろ、足軽や弓兵は目もくれるな、突進力のある騎兵だけ潰せ!」


 各持ち場の指揮官が部下の兵に指示を飛ばす。彼らも訓練はしているが、実戦は初めてである。緊張しつつも妙な高揚感に支配されるのも仕方がない。


「伝令!越後与板の兵、予定の場所へ移動完了。会津の兵も接近しつつあり、こちらの準備万全なり」


「会津、与板に伝えよ、敵が動いた、これより応戦する。頃合いを見て後退する故、手筈通りに!」


 至る所で喊声が上がっている。一部の兵が実戦を目の前にして怖気づいてしまったのであろうか、指揮官が檄を飛ばし、士気を鼓舞している。


 井伊の赤鬼と呼ばれた初代井伊直政以来の赤備えの軍勢であっても太平の世に毒され武士の看板は実質お飾りとなっていることを当代井伊直幸は改めて実感した……。


「精強無比の赤備えが狼狽えるな!我らは井伊の赤鬼ぞ!初代以来の忠義を今ここに示さん!勝ってその名を残そうぞ!」


 ワァーワァー


 彼の鼓舞によって井伊兵団は文字通り赤鬼と化した。


 ズダダダーン


 鼓舞の喊声が収まったその時、戦の火蓋は切って落とされた。


「敵の火力など恐れるに足らず。だが、まだ撃つなよ!引き付けて、騎兵を殲滅するのだ!斉射5連、用意!」


 敵の斉射が終わると同時に突撃を敢行してきた騎馬隊は間近に迫ったその瞬間……。


パパパパパパーン カシャカシャカシャカシャ パパパパパパーン


 ボトルアクションライフルの斉射が始まる。


 事前の訓練で扱い方は習熟しているが、実戦に用いるのは初めてである。焦って薬莢の排出に苦戦する者もある程度出たが、種子島銃の様に弾込めをする必要がなく、慣れてきた者はガシャ、バン、ガシャ、バンと撃ちまくる……。


 井伊鉄砲隊の斉射が終わったとき、水戸兵団騎馬隊は全て倒れていた……。


 しかし、坂道で一度突撃を始めた敵兵団が立ち止まるなど自滅を意味するだけに敵兵団は死に物狂いで突撃を敢行する。


 井伊兵団は予定通り、鉄砲隊を真っ先に後退させ、足軽の抜刀隊による乱戦に移行した。同時に藩邸の物見櫓などから精密ピンポイント援護射撃を実施し、戦術的後退を支援した。


 水戸兵団も騎馬隊の壊滅による心理的ダメージから立ち直り、銃撃による支援を開始するとともに狼煙を上げ、別働隊の投入を決断したようであった。


 だが、井伊兵団は水戸兵団別働隊の存在は知っていても居場所を知らずにいた。

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