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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
新線建設と江戸の大改造

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競い合うライバル

明和9年5月10日 大江戸鉄道本社


 本社に戻ってきてそうそうに大名屋敷問題にぶち当たるが、まぁ、良い方向の問題だったから折衝次第でうまくまとまる範囲だろう。


 さて、問題はここからだ。


「高崎、小海入ります」


 高崎新橋駅長、小海上野駅長が揃って入室してきた。彼らはいずれ国鉄において鉄道管理局長に就任するエリートだ。それ故に最近は縄張り争いを繰り広げている……別のところで悩みの種だ。


 彼らは駅長業務と並行して国鉄関連の実務も取り仕切っている。


「江戸外環鉄道の買収統合の件ですが、先方の承認が得られ、関係企業と大店との折衝も纏まりました。三井が力添えしてくれたことで反発していた大店も渋々同意し、これで近日中の統合が可能かと……」


「また、軌道などの工事は元々我々が行っておりましたので改軌などの必要性はありませんし、通常の保線工事で馬車鉄道から蒸気鉄道への置き換えは容易に可能であると判断されます。こちらも6月までに車両の準備も整いますので、6月中には蒸気機関車牽引の列車を運行可能かと判断されます」


 期待通りの報告が上がってきた。


「二人の尽力の結果だ。ありがとう。ところで、山手線の方はどうなっている?」


 外環鉄道の問題はほとんど気にしてはいなかったが、山手線の進捗状況は気掛かりである。想定されていた明和の大火ではあるが、結局、備蓄していた資材も復興に使っている。当然、その分だけ遅れが出ているはずだ……。


「実は……総裁には無断ではありますが、工期短縮と東北本線のダイヤの兼ね合いで赤羽から軽規格標準軌の新線を建設し、池袋に資材基地を設置し、田端~池袋を挟み撃ちで建設しております。ここは間もなく完成する見込みです。また、池袋~新宿間の資材集積も順調に進んでおります」


「品川~新宿も線路は既に完成しております。こちらは駅施設の完成を待ち、営業を開始する予定です。当面、山手線の部分を旅客営業、中央本線の部分を資材搬入用に用いる予定で、新宿での資材集積が済みましたら順次八王子へ向けて中央本線の建設を進める段取りとなっております」


 こいつら、自分の縄張りを拡大するために競争してやがる……。そのためにはフライングも事後報告も辞さないし、平気でやるつもりだ。しかも、この調子だと現場に至るまで伝染してるんだろうな……。相手の邪魔をしないだろうけれど、相手を出し抜くためには出来る限りの手段を講じる……。


「思っていた以上の成果を出してくれているのは良いのだが……ふたりとも縄張り争いで鉄道会社という組織を引き裂いたり、乗客に迷惑がかかるようなことはしないでくれよ?」


「勿論です。お互いの邪魔をするような真似などしません。そんなことをしては、我々の鉄道への熱意や誇りに傷がつきます」


「ええ、無理な工期設定などはしていませんし、無謀な調達計画を立てるなど……そんなことをしては結局、部下が苦労するだけで自分にとっても利益がありません。そもそも、小海はこちらの資材不足に快く資材提供してくれていますし、こちらは余剰な貨車を提供しています。赤羽~渋谷~新宿~品川の貨物線が通れば江戸上野ラインに余裕が出来ますからお互いに利益なのです」


 さすがに彼らはプロだ。何処に問題があるのか、それをどうすれば解決出来るのか、自分たちで上手く処理している。やはり、彼らに鉄道管理局長として鉄道運営を委ねる方針は間違いではなかった。


 今まで私や幸太郎にあらゆる権限や決済が集中していたが、彼らを中心に鉄道官僚が育ってきているのであれば大まかな方針を示すだけで鉄道が動くようになるだろう。


「今後の方針を君らに任せても大丈夫そうだな……」

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