表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
タイクーンエクスプレス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

127/266

将軍専用列車『タイクーンエクスプレス』<1> 鍛治屋橋駅にて

明和9年1月9日 鍛治屋橋駅特設ホーム


 年末特別運輸体制による初詣列車の運行は成功し、大晦日、元日の運行状況から3日まで初詣列車運行を追加増発して初詣客を捌くことになった。


 乗り放題切符の販売の効果で箱根温泉街への日帰り客が増え、箱根が活況を呈した。温泉街から小田原~箱根湯本までの鉄道延伸を望む乗客からの要望が投書箱から溢れ、小田原駅駅長など関係者らが本社まで陳情に来るなどその効果に私も驚くこととなった。


 箱根温泉街はそのキャパシティを越えた来客で完全にパンクしてしまったことから、陳情に来た際に私は温泉組合を作り、温泉街全体のキャパシティの増強と空きのある宿への客の誘導を行うことを提案した。また、将軍家御用宿の設置を依頼すると同時に『タイクーンエクスプレス』の季節運行、急行『はこね路』の毎日運行を約束した。


 そして、今日……。


 幕府直営鉄道の宇都宮~日光間に単線であるが新線が完成、試運転を兼ねて臨時将軍専用列車を運行することとなったのである。将軍家治公の日光参拝に鉄道を用いることで無駄な将軍行列を実質廃止する幕府財政健全化の意図を持った公式行事となる予定だ。


 現段階では所謂御召列車は製造されていない。そのため、新橋~小田原間で運行されている急行列車を将軍専用列車として転用している。


 最近新製したばかりのC51形蒸気機関車を本務機として初運用。慣らし運転で問題がなかったことから本格的運用に入る前に家治公のご機嫌取りに処女運行として起用することになった。


 史実通りの性能であるが、炭水車は石炭20t、水40㎥搭載と全長を延長させた。そして貫通路を設置し乗務員の交代を容易にしている。そして、前面煙室扉付近に葵の御紋をヘッドマーク代わりに設置、デフレクターにも同様に葵の御紋を配置し、車体は黒鉛で磨き上げられ黒光りしていて美しい。


 1号車は荷物車兼乗務員休憩室、2~4号車は供奉車、5号車は食堂車、6号車は展望御座車となっている。車両そのものは急行列車から転用しているので特に内外装ともに変化がない。急拵えではあるが、急行列車には元々展望車が連結されているので見栄えが悪いということはない。もっとも、そのままではアレなので……展望御座車には外装には少し装飾を施した。金箔張りの葵の御紋を側面に3つ貼り付けている。


 9日の日程

  鍛治屋橋1000発

  大宮1100通過、宇都宮1200通過

  日光1330到着

  所要3時間の行程

  日光今市駅に到着後、日光東照宮に参拝し鬼怒川温泉にて一泊

 10日の日程

  日光今市1100発車

  宇都宮1200通過、大宮1300通過

  鍛治屋橋1400到着

  所要3時間の行程


 9日運転時は最後尾に展望御座車が位置するが、翌10日運転時は機関車次位に展望御座車が連結されることになる。これは日光線が盲腸線であり、編成の方向転換が出来ないためだ。




 いよいよ主賓の搭乗を待つだけとなった鍛治屋橋駅特設ホームであるが、ホーム上には楽団が配され、彼らも今か今かと演奏の時を待っている。彼らにはVOC経由で入手した西洋楽器が与えられ、これまたVOC経由で雇ったお雇い外国人の楽団による調練でイベント時に活躍してもらうようにとこの半年の間訓練の日々だった。そう、彼ら大江戸鉄道楽団は正規の鉄道職員であり日本初の西洋楽団である。


 彼らは家治公入場の際に行進曲の演奏……お雇い外国人にラデツキー行進曲のメロディーを耳コピーさせて楽譜に起こさせてアレンジさせた……後世にタイクーンマーチの初演奏となる……させ、その後は専用列車に搭乗、家治公が飽きない様にBGM演奏をするという2つの仕事を受け持っている。


 家治公の行列が見えてきた……その瞬間、指揮者のタクトが振るわれた……。

将軍専用列車『タイクーンエクスプレス』<2>へと続きます。本日、2話更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ