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最終決戦

「遅くなった。すまない」


 突き飛ばしたアレクシに視線を合わせたままアランが言う


「隊長!お兄様は…」

「大丈夫だ。気絶させて保護してある」

「保護?」


 リリーが聞き返したところでアレクシが立ち上がった。リリーもアランも攻撃に備えて構える


「仲間が増えたところで変わらない。私は下級兵士たちとは違う」

「これだけいればどうだ?」


 どこからともなく聞こえてきた声にリリーはあたりを見回した。声の主を見つける前にリリーの前に人が立ち並ぶ。全員がSFDの戦闘用スーツを着ている


「お前ら水臭いぞ」


 そう言ってリリーを振り返ったのは5番隊隊長のエディだ


「バーノン隊長……」


 エディの隣に並んでいるのも全員隊長だ

 応援に駆け付けたのはSFD最強部隊BIG7だった


「隊長たち……どうして……」


 驚くリリーの前で隊長たちはすでに戦闘態勢に入っている


「事情はアランから聞いた。こいつが本当の黒幕なんだろ?」


 リリーはアランを見上げた。いつの間にか他の隊長たちに支援を要請してくれていたのか

 エディの問いかけにリリーは力強く頷いた。隊長たちの体にも緊張が走ったのが後ろからわかる。BIG7とは言えどもストレンジャーのボスともなれば戦力は未知数だ。リリーも少しでも加勢になればと立ち上がる


「最終決戦だな。いくぞ!」

「おお!」


 エディの掛け声でBIG7がアレクシに飛び掛かった。先陣を切った数人がアレクシの手をふさぎ、間髪を入れずに残りのメンバーが攻撃を仕掛ける。多勢に無勢ともなるとさすがのアレクシも多少はダメージを受けているようだったが、それでも膝をつかせるまでも至らない。

 リリーも何発か拳や蹴りを食らわせてはいるが、前日までまともに飲み食いをしていなかったのがたたってほとんど力になっていなかった。それどころか徐々に立っているのすら危うくなっている


――いったん退かないと……


 そう思った矢先、アレクシの強烈な裏手を浴びた。叩かれた体は軽く吹っ飛ぶ

 今度壁に叩きつけられたら確実に動けなくなる――そう覚悟した瞬間、体は柔らかい何かに包みこまれた


「隊長……」


 アランはそのままリリーを部屋の隅に降ろすと「ここにいろ」と言い残して再び戦闘に戻っていった

 追いかけてともに戦いたいその後ろ姿を歯がゆい思いで見つめることしかできない。家族を守るために、母親を殺したストレンジャーを倒すために強くなったはずなのに、このままだとあの時と同じだ

 何か助けられることはないか――部屋の中を見回していると、部屋の入口で何か動く影を見つけた


――まさか、まだ何かいるの!?


 正体を確かめようと目を凝らす。影が部屋の光に照らされて姿が明らかになった


「お兄様……」


 アランとの戦いでつけられたであろう傷を庇いながら床を這って部屋に入ってくる

 エルマーは誰かに保護されていたはずだ。リリーは事態が把握できず、エルマーが味方なのか敵なのか判断しかねていた

 エルマーが部屋の片隅にある何かスイッチのような物に手を置いた。危険を感じて止めようとリリーが腰を浮かす

 エルマーと目があった。口が動いている


「いくぞ」


 エルマーがスイッチを押した。途端に部屋が薄暗くなる

 原因はすぐに判明した。アレクシの体から光が消え、アレクシ本体も動けなくなっていた


「っな!エルマー!」


 リリーは直感的に判断して叫ぶ


「隊長!今です!」


 リリーの声に反応してアランが宙に舞った


「これで終わりだ」


 白い閃光がアレクシを貫く。痛烈な一撃を正面からまともに受けたアレクシは壁まで吹っ飛んでその場に倒れた


「死んだか?」


 エディの問いかけにアランが首を振る


「いや、気絶してるだけだ」

「よし、連れてくぞ」


 7番隊隊長のスコット=ルイスがアレクシを担ぎ上げる


「あの、お兄様も……」


 リリーの言葉で隊長たちもエルマーの存在に気が付いた


「こいつが助けてくれたのか?」


 リリーが頷くと、傍にいた2番隊隊長シオン=ガーディナーがそっと背中に背負った。傷だらけの体はピクリとも動かない。心配で駆け寄りたかったが、リリーもそれどころではなかった

 今後のことを話しながら隊長たちが部屋を出ていく

 リリーはその後ろ姿を霞んでいく視界の中で見つめていた


「リリー!」


 薄れゆく意識の中でリリーが最後に聞いたのは、必死に自分の名前を叫ぶアランの声だった

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