序
しょっぱなから殺人シーンです。
個人的にはそうでもないと思うのだけど、友人各位からはグロイと苦情を頂いたのでワンクッション。
グロイの苦手だって人は逃げて。チョー逃げて。
振り上げられた鈍器で、左顔面が陥没した。
譬えようもない痛みに、絶叫できるものならしたかった。すでに掻き切られた喉から、頼りない空気の抜ける音しかしない今、それが叶うこともないだろうが。
鈍ることのない痛覚は、鮮明に、ダイレクトな痛みをそのまま伝えてくる。発狂しそうでしない精神は、すでに〝慣れ〟を覚えて状況観察を始めていた。
辛うじて残っている右眼球が捉えるは、白く美しい男。白髪というよりは銀に近い髪は、月明かりに照らされて、幻想のように煌めいている。口元に歪な笑みを湛え、卑しいほどに美麗な男は、けれど、無表情に私を殺している。
「なんだろう。なにか、な、にか、たたた、たり…な――――い?」
空ろに呟かれた言葉は、傷み、朽ちていく。どうやら聴覚がイカレ始めたらしい。ぐるりと、腸を掻き混ぜられ、ずるりずるり、引き抜かれているのは小腸だろうか。
「ぅゔー」
子供の癇癪を見ているようだった。私の一部であったそれらを叩きつけ、振り回し、投げつける。刃の欠けた包丁で千切れた私の右腕をめった刺しにして、己の中の不可解な感情を吐き出そうとする。瞳が濡れてもいないのに、縮こまった肩は小刻みに震え、泣いているのだと理解する。
もしこの腕がまだあって、動いていたら、優しく抱きしめてやることもできただろうに。できないことを思い描いて、内心で嘲笑した。
自分を現在進行形で殺している相手を気遣うなんて、私はマゾの素質でもあるのだろうか。それとも、心が摩耗、あるいは摩滅しているのか。
どちらだろう?
どちらだろう。
どちらだろう…。
ああ、どちらでもいい。そんなこと。
繰り返されていることを気にしても仕方がない。それよりも、この繰り返しから抜け出すことを考えなければならない。
何の繰り返しかって?
決まっている。
彼が私を殺し、私が彼に殺される、果ての見えない、この螺旋のようなそれだ。
ホラー…ホラー?
昔書いた小説の改訂版。
とりあえずこれはさっさと書きあげられそう…だと思うw




