第1話 夢を見ていたのです。あなたの夢ですよ。
龍と人と。わたしのとても大切な古い友達と出会う。
あなたと一緒に笑っていたいんです。
あなたと一緒に泣いていたい。
あなたとずっと一緒にいたいんです。
ある日、私は『とても美しい龍』と出会った。
夢を見ていたのです。あなたの夢ですよ。
「お休みですか?」
「はい。そうです。変ですか?」
道草さんが宮殿のお仕事をお休みするなんて、とってもとっても珍しかったので、思わずつい林林はそう聞いてしまった。(恥ずかしい。たぶん顔にも素直に驚きが出てしまっていたと思う)
お昼の宮殿の食堂は混んでいて、みんな楽しそうに美味しい料理を食べている。
道草さんの前には白いご飯と焼き魚と焼き椎茸、林林の前にはおにぎりとたまご焼きとほうれん草のおひたしがあった。
道草さんは綺麗に焼き魚を食べていて、そんな焼き魚の骨を見てから、林林はおにぎりを一口、小さな口を開けて食べた。
「友達に会いに行くんです」
くすっと笑いながら道草さんは言った。(たぶんほかの人もみんな私のように驚いたのだろうと思った)
「お友達、……ですか?」
「はい。『とても大切な古い友達』です」
いつも一人で過ごしている道草さんにお友達。もちろん『変わり者の道草さん』にもお友達はいるのだろうけど、やっぱり少し驚いてしまった。
でも、あの道草さんがお友達に会うためにお仕事をお休みするのか。うん。まあいいことだと思う。道草さんはとっても頭が良くて、とってもいい人で、とっても優しくて、とっても真面目だけど、とっても変わっていて、いつもひとりぼっちだった。(一匹だけ違うたくさんの鳥の群れの中に紛れ込んでしまったみんなと違う変わった鳥みたいだった)
都の宮殿の中で一緒にお仕事をしている仲間のみんなはたくさんいたけれど、それでも、林林の目には道草さんはひとりぼっちに見えていた。だからこれはとってもいいことなんだって素直に思った。
会いに行くとても大切な古いお友達が『女性』のひとだって、教えてもらうまでは。
「え!? 女性のかたなんですか!?」
思わず大きな声を出して、とっても驚きながら目を丸くして林林は言った。(食堂の中にいる人たちが何人かこっちを見ていたみたいだった)
「はい。そうです。珍しくとても久しぶりに手紙が届いたんです。会いたいって書いてありました。なにか『ぼくに大切な用事がある』ってことらしいんです。まあ女性の一人暮らしなのでいろいろと大変なこともあるみたいで。彼女はとても頭がいいので、その力仕事みたいなことだと思うんですけどね。そのときに、きっとふとぼくのことを思い出してくれたんだと思います」
楽しそうな顔で道草さんは言った。(ちょっとだけだけど、楽しそうな道草さんを見ていて、なんだかいらいらしてしまった)
「私も一緒にいってもいいですか?」
林林は思わずそんなことを言っていた。(女性のひとに会いに行くって聞いたときには、迷惑かもしれないけど、もう一緒について行こうって、心の奥では思っていた)
「林林さんも一緒にですか?」
「はい。会ってみたいんです。その道草さんの『とても大切な古いお友達』に。私も」
にっこりと笑って(顔は笑っていたけど、なんどかちょっと怒っているみたいな顔だった)林林は言った。
すると道草さんはちょっと困ったような顔をした。(まあ断られたとしても、もうこのときには林林は変装をしたり、隠れてでもついて行こうと思っていたのだけど)
そんな道草さんの顔を見て、林林はまた不機嫌になった。




