【第17話:雫に消える火花】
第17話:雫に消える火花
炎の剣が彼の首へと迫った。
炎は刃の上で踊り、熱く、飢えていて、一瞬にしてすべてを終わらせる準備ができていた。二人を取り巻く空気は熱を帯び、赤い光が両者の顔の上で揺れていた。
しかし、何かが起きた。
その刹那、刃が彼の首に触れるはずのその瞬間に、ヒノラは固まった。
止まろうと計画していたわけではなかった。意識的な判断でもなかった。胸の中で燃え盛っていたすべての怒りに逆らうように、彼女の身体が止まったのだ。両手が震えていた。制御できない震えだった。意志よりもさらに深い場所から来る震えだった。
「なぜ……なぜ終わらせられないの? なぜ手が言うことを聞かないの? あいつは無抵抗だ。自分を守ろうともしない。あと一瞬で……復讐が果たせる。誓いを守れる。でも……なぜ胃の奥に吐き気がするの? なぜ続けたら窒息しそうな気がするの?」
刃の切っ先は彼の皮膚のすぐ傍にあった。首の脈打ちが見えた。彼は立ったまま、静止し、目を閉じていた。顔に恐怖はなかった。懇願もなかった。あるのはただ……諦めだけだった。
「なぜ怖がらないの? なぜ戦わないの? このばか……なぜ私がもっとあなたを憎む理由を与えてくれないの?」
彼の顔を見た。もはや叩いた少年の顔ではない、その顔を。まだ頬に乾ききっていない涙を。閉じられたその目を。つい先ほどまで、彼女を見ていたその目を。
憎しみではない何かで。
「あいつは……私と同じだ。あいつもすべてを失った。あいつも一年間修行した。あいつも……私と同じくらい罪を背負っている。いや、違う。罪がないわけじゃない。二人とも置き去りにした。二人とも。私も洞窟で修行しながら、あの人たちが死んでいったんだ。私も……あいつと同じだ」
その手がさらに震えた。剣が今にも落ちそうになった。
その時、カイロンがゆっくりと目を開けた。
彼女を見た。その目に憎悪はなかった。恐怖さえもなかった。あるのはただ……理解だった。まるで彼女が止まることを知っていたかのように。彼女自身が知らなかった自分について、何かを知っていたかのように。
「なぜ止まった?」
その声は穏やかだった。挑戦的でもなく、怒りもなく、ただ……問いかけていた。
「それがお前を楽にしてくれると思っていた」
彼女の目が大きく見開かれた。唇が震えた。胸の中で何かが砕ける感覚があった。
「楽に……? あいつは、あいつを殺せば私が楽になると思ったの? 無抵抗の人を殺して、安らかな気持ちになれると? 自分を守ろうとしない人を? どんな怪物に見られているの……そして、それを証明しようとした私は、どんな怪物なの?」
一歩後ずさった。また一歩。手の中の剣を見つめた。まるで初めて見るもののように。刃はまだ燃えていたが、その炎が今は……醜く見えた。暴力的で。間違っていた。
目を閉じた。剣を吸収した。
刃が消えた。炎の印が手首に現れ、淡い赤金色に輝いた。手のひらの刻印はまだ深紅だったが、その握りは今や緩んでいた。
「あなたは……」
その声は嗄れていた。彼を見ていなかった。地面を見ていた。
「あなただけが罪を背負っているわけじゃない」
カイロンは顔を上げた。黙って待った。
「私も……ここにいるべきだった。守るべきだった。でも……逃げた。洞窟に隠れた。あの人たちが死んでいく間、復讐の修行をしていた」
彼女は目を上げた。涙が再び流れ落ちていたが、今回は隠そうとしなかった。
「二人とも……どちらも罪がある。どちらも失敗した。あなただけじゃない」
沈黙した。そしてほとんど聞き取れないほどの声で付け加えた。
「ごめんなさい……あなたを殺しそうになって」
二人の間の沈黙は重かった。風もなかった。音もなかった。世界全体が止まり、待っていた。
それからカイロンは咳払いをした。首を見やった――刃が触れかけた場所を――そして彼女を見た。
「復讐のことは? 俺がメギンとの戦いでお前の攻撃を止めたことは?」
彼女は彼を見た。目にはまだ涙が残っていたが、今は何か新しいものが見えた。これまでなかった何かが。
「自分に問い続けていた。一年間ずっと。俺の攻撃は十分だったのか? あいつが割り込まなければ、メギンは死んでいたのか?」
黙った。自分の手を見た。輝く刻印を見た。手首の炎の印を見た。
「分からない。もしかしたら……十分じゃなかったかもしれない。あなたは私を救おうとしていたのかもしれない。でも私には……見えなかった。怒っていた。盲目になっていた」
彼を見上げた。
「また向き合う時……自分で確かめる。あいつの力を、自分自身で試す。その時……分かる」
彼女は手を伸ばした。まだ少し震えていた。手のひらの刻印はまだ赤かった。
「今日はあなたを殺さない。明日も殺さない。一緒に戦う。一緒にメギンと向き合う」
カイロンは伸ばされたその手を見た。つい先ほどまで彼を殺しかけた剣を握っていた指を見た。輝く赤の刻印を見た。手首の炎の印を見た。
考えた。
「信じられるか? これだけのことがあった後で? 殺しかけた後で?……信じられる。かつて俺がいたのと同じ場所にいるから。怒りがどういうものか知っているから。一人ではメギンに立ち向かえないから」
手を伸ばした。彼女の手を握った。
温かかった。予想外の温もりだった。灼ける炎ではなかった。灰の下の熾火の温もりだった。……人間の温もりだった。
ゆっくりと立ち上がった。両膝が少し震えていた。彼女を見た。彼女の目が彼の目と交わった。今はもう憎悪はなかった。完全な信頼もまだなかった。二人の視線は触れては素早く離れた。まるで炭火に触れて熱さを恐れるように。
手を放した。半歩後ずさった。二人の間の距離はまだ残っていた。警戒は完全には消えていなかった。しかし、剣はもはや彼の首へと向けられていなかった。
「約束だ」
その声は穏やかだった。
「一緒にメギンを倒す。復讐を果たす。じいちゃんのために。お前の兄のために。死んでいったすべての人たちのために」
ヒノラは頷いた。微笑んだ。疲れた、かすかな笑みだったが、本物だった。
「約束ね」
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カイロンは言いかけた言葉の途中で止まった。
首の後ろに冷たい刺すような感覚を覚えた。まるで氷の針が皮膚を刺すような。ゆっくりと振り返った。
同じ瞬間、ヒノラは目の端に淡い赤い閃光を捉えた。その方向へ向き直った。
突然、二人を取り巻く空気の温度が下がった。普通の冷たさではなかった。奇妙で深い、骨まで沁み込む冷たさだった。二人の息が空気の中で白く凍った。廃墟の壁に残っていた露の滴が、小さな氷の結晶へと変わった。
そして反対方向から、突如として熱が押し寄せた。焦げるような乾いた熱さで、硫黄と煙の匂いを帯びていた。
二人は辺りを見渡した。包囲されていた。
凍てついた影の中から、一体の氷の兵士が進み出た。気泡も亀裂もない、澄んだ水晶のような身体をしていた。両目は淡い青で、いかなる人間的な表情も宿していなかった。その手には長い氷の剣が握られており、その刃は薄明かりの下で輝いていた。
名はオーリスといった。
反対側からは、もう一体が、廃材の上でまだ燃え続ける炎の中から現れた。細身で、溶岩の輝きにひび割れた身体をしており、剥き出しの両手はオレンジ色の炎に包まれていた。その目は小さな二つの燃え滓のように、息をするたびに明るくなっては暗くなった。
名はザイロスといった。
二体は並んで立ち、恐ろしい対比を成していた――氷と炎、霜と溶岩、沈黙と爆ぜる音。
やがてオーリスが口を開いた。その声は乾いていた。生命がなかった。足の下で氷が割れる音のような声だった。
「退屈な光景だ」
ザイロスは横目でそれを一瞥し、それからカイロンとヒノラへと視線を戻した。その声はより粗かったが、脅威という点では劣らなかった。
「俺たちが来たのは、紋章のためだ」
「水の紋章の半分」
「火の紋章、完全なものを」
二体は視線を交わした。そして再び二人を見た。
「氷の領国が、かつての栄光を取り戻す」
「火の領国も、かつての姿に戻る」
オーリスは氷の剣を持ち上げた。その周囲の空気が凍り始めた。足元の地面が固い氷へと変わり始めた。
ザイロスは燃える拳を構えた。その周囲の空気が熱で揺れ始めた。足元の地面がひびを入れ、輝き始めた。
カイロンとヒノラは並んで立った。まだ互いから一歩分の距離を保ちながら。警戒は完全には消えていなかった。しかし今、両者の手はそれぞれの剣の柄へと向かっていた。
カイロンの青い剣が穏やかな光を放ちながらその手の中に宿り、ヒノラの手首の炎の印が力強く燃え上がった。
二人は互いを見た。言葉は交わさなかった。しかし両者の目がすべてを語った。
「準備はいい?」
「いい」
沈黙が終わった。
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