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俺は大物じゃない!

 商業都市オルワース。

 その裏通りには、表社会では生きられなくなった者がうようよしている。 


 怪しげな思想を持つ組織。

 妙な薬を売っている連中。

 法外な値段で《呪われた武具》を売っている店。


 居を構える店はそれぞれ違うが、どれも異様な雰囲気を放っている。表通りとは違い、明らかに暗いんだよな。


 まあ、俺はこれでも元冒険者。

 それなりに死線はくぐり抜けているので、チンピラどもの威嚇っぽい目には屈しない。魔物よりも明らかに小物だしな。


「…………」


 身体にまとわりつくチンピラどもの視線。

 新参者だってのが即座にバレてるらしいな。

 だが、そんな連中もリオを見て目を逸らしている。


 自慢じゃないが、犬狼はかなりレアな魔物だからな。新入りの俺が誰にも絡まれないのは、おそらくそれが要因だろう。


 ――こういう場所ではビクビクしていると舐められる。堂々としていなければ。


「ほう……あんた」


 適当に歩いていると、地べたに座り込む婆さんに話しかけられた。


 ダンボールなんかの上に座っていて、一見は浮浪者に思えたのだが……出で立ちを見て驚いた。指にはいくつものギラギラした指輪がはめられ、衣服も高級品とわかる。


 しかも、周囲を行き交うチンピラどもがその婆さんを不自然に避けているんだよな。理由は不明だが。


 その婆さんが、リオを見てニヤリとする。


「面白いの連れているねぇ。魔物の売人かい?」


「…………」

 俺は数秒だけリオと目を合わせ、そして答える。

「……まあ、そんなところだ」


「…………!」

「あいつ……!」


 俺の気安すぎる返答に、チンピラどもがざわっとする。


 なにか問題だったろうか?

 こういう場所では堂々としていないと駄目だよな?


「くっくっく」

 しかし婆さんだけは俺の態度を気にしたふうもなく、続けて言う。

「そいつ犬狼だろう? どうだ、あたしに売る気はないかい?」


「ク、クゥーン……」


 怯えたようにリオが俺に身を寄せる。


「そうだね……金貨20枚は出そう。どうだ、悪くないだろう?」


 金貨20枚……!

 その言葉を聞いて内心ぎょっとする。


 金貨1枚あれば、成人男性が一ヶ月は暮らすことができる。


 それが20枚か……

 リオを売れば、俺は一年半近くも遊んで暮らせるようになるってことか。やばいな。


 だが。


「断る」


「なんだって……!?」

 婆さんがぎょっと目を丸くする。

「おいおい、金貨20枚だよ? なに寝ぼけたこと言ってんだい」


「そっちこそ、寝ぼけてもらっては困るな。金貨20枚なんぞ……安いにもほどがある」


「や、安いィ……!?」


 リオとはかけがえのない思い出が沢山ある。

 金なんかに換算できるもんじゃないんだよ。


「ワン!」

 俺の返答に、リオが嬉しそうに吠えた。


「ククク……」

 ふと、婆さんが含み笑いを浮かべる。

「アーハッハッハ! 驚いた! あんた相当の大物だねぇ! ここらへんではあまり見ないが……どこから来たんだい?」


 ここで馬鹿正直に「新参者です」と言ったら舐められるな。

 かといって適当な嘘もまずいだろう。バレた後が怖い。


 俺が答えに窮していると、婆さんはまたもニヤリと笑った。


「……言えないってかい。ふふ、いいだろう。ここはどんなお尋ね者でも大歓迎さ」


「…………」


 なんだ。

 なにも言ってないのに妙な勘違いをされた気がするが……まあいいか。俺はなにも言ってないし。


「来な! いいビジネスがあるんだよ! あんたならうまくやってくれそうだ!」


「……大丈夫なんだろうな。変なビジネスだったら……」


「はは、あたしを誰だと思ってるんだい!? 心配はいらないよ、ついておいで!」


「は……」


 待て待て。こんなうまい話があるものか。

 明らかに怪しいだろ。

 正直逃げたかったのだが、婆さんの勢いはすさまじかった。


 拒否する間もなく、俺は近くのバーに連れ込まれた。


「いらっやいま――って、ル、ルメリア様!」


 出迎えた店員が、婆さんを見た瞬間にピンと背筋を伸ばす。

 その店員もただならぬ雰囲気――黒サングラスに右目を切り裂く傷跡

――を放っているのだが、婆さんを妙に敬愛しているな。


 ルメリア……ってのが婆さんの名前か。やはり俺は聞いたことないな。


「さっきぶりだね坊や。を開けてくれるかい?」


「かしこまりました」

 店員は丁寧なお辞儀をすると、ちらりと俺を見る。

「……ところで、そちらの方は」


「見てわからないのかい。大物の客人さ。舐めてたら殺されるよ」


「…………」

 店員の視線がひたとリオに据えられる。

「……なるほど。これは失礼致しました。私など木っ端微塵でしょうな」


「そういうこった。さ、早く扉を開けな」


「かしこまりました。それではお客様もこちらへどうぞ」


「ああ」


 店員に連れられるままに、俺は進んでいく。


 ――っていうか、これ、まずくないか?

 いったいどこに連れていかれるんだ?


 このルメリアという婆さん、口ではこう言ってるけど、密室で俺を始末するつもりじゃあるまいな?


 こりゃまずい。

 早く逃げないと……


 ルメリアに連れられながら、俺は内心逃げることだけを考えていた。




 


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