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ヒロインもどきが私のパートナーを倒そうとします。  作者: ゆいらしい
1章 ラスボスは生徒会入りを所望する
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7 第一生徒会室の秘密

 お掃除中はとても大変だった。

あちこちがとても散らかっていて、大抵がゴミ箱にいったがその数も尋常では無い。喜ばしいことなのかなんなのか…後から聞けば、ここは第二生徒会室だったらしい。ちゃんと人に見られても良い様な生徒会室はあり(あんなことを言っちゃったけど、きちんと仕事をしてくれていたのね…)、そこをシャーロット=イベリアは拠点としている…何故かはわからないがあまり第二生徒会室には顔を出さないそうだ。


「とはいっても、困ることでは無いんだよ。ここは一種の生徒会員同士の交流をする場だからね。あっちが、仕事場。彼女は仕事熱心だから…」


私はその言葉に失礼だけど少し驚いた。私が持っている彼女のイメージは「奇妙」。彼女の言動は、理解の出来ないものだった。……しかし同じ生徒会員になったのだしこれからは仲良くやっていかなくてはと思っていた私にとって、その言葉は救いのあるものであった。


「どうして、彼女はここに来ないのかな?」


「うーん、それはここが『真実の部屋』だからだと思うよ。」


真実の部屋?


「うん。ここでは、部屋に入った人間の本来の性質みたいなのが言動に現れるんだ。例えば…僕の部屋。召喚獣の資料とか標本が散らかってただろう?僕は将来、召喚獣の研究をしたいと思っている。だからか、それが露骨に現れてあんな部屋の状態になったんだ。」


……。確かに、メイソンの部屋は資料で埋まっていた。龍の鱗、人魚の涙、ハンプティダンプティの殻の一部…等の貴重なものを何処で手に入れたのか綺麗に飾られていて、まるで博物館の様だった。


「…正直に言うとね?君を積極的に生徒会に招待したのも、ルビィを観察したいからなんだよ…ルーカスが言った通り、只の自分の興味本位みたいなもんなんだ。幻滅した?」


……だと思った。

それが、私の気持ち。特に落胆も無ければ怒りも無い。考えていた可能性の一部。


「ううん、特には…。遅かれ早かれ、ルビィを狙う人にも色々な考えの人がいる。例えば、ドラゴンを恐れる故の討伐対象、また神と崇める敬意の対象、研究対象としてのもの…。たまたまあなたが、その一部として現れただけ。


ただ、改めて確認したいのは…

自分にもライコウ君がいるにも関わらず、ルビィの観察を目的にするというのは、ルビィが伝説に出てくる赤い恐ろしいドラゴンの可能性があるから?」


メイソンは私の質問に困った顔をするが、私の別に私はもう生徒会員である以上、ここで肯定があったとしても辞めるつもりはない。


「…うん。でも、それだけじゃないよ。前にも言ったけど、鯉がドラゴンになる伝説は他にもあるんだ。それについても気になる。」


困った顔をした割には、とても正直な答えで私の反応を気にした感じの無い発言…とても欲望に忠実……


「……って、あぁ、ごめん。えーと、まぁ、こんな感じにこの第一生徒会室では隠し事が出来ない様に魔法が貼られているんだ。だから、真実の部屋。なんでも、昔の生徒会員がなんかで争ったことが原因らしいんだ。そこらへんの詳しいことはわからないんだけどね。


シャーロットみたいにこの部屋に近寄らない人間もいれば、ルーカスの様に居座る人間もいる。ここは結構好き嫌いが分かれるよ。僕は、研究に没頭出来るから結構ここにいるけどね。」


 ……ここに来ない理由…イベリアさん(同じ生徒会員であるので、これからはさん付けにしよう)には何か隠したいことがあるとか?って、それは疑心暗鬼になりすぎか…あぁ、メイソンが仕事熱心って言ってたことだしやはり生徒会の仕事を一生懸命にやってくれているのか!……そして、昔の生徒会員は何をやったのだろう?







「おい、いつまで長話をしてるんだ!さっさと来い。俺が茶を淹れてやったぞ。」


 ルーカス=エイハブがドアからひょこっと現れた。その態度を見て思う。初めて会った時との態度の違い…やっぱり真実の部屋の魔法のせい?と考えて、じっとエイハブさんの顔を見てると「なんだよ」と不機嫌そうに言われた。うん。やっぱり全然違う。


 茶の間に行くと、びっくり!ライコウ君がミニサイズとしていた。もう一匹ドラゴンのミニサイズがいる。多分この子が、エイハブさんの召喚獣であろう。


『せやで。紹介したるわ!こいつがルーカスの召喚獣のフータや!』


『よろしくです』


「私はリリィ。宜しくね。」


『リリィは、俺らの声がわかるんやで!何か主人らに言いたいことがあれば言ってやりーや!』


『そうなんですか?驚きました。じゃあ、僕、ホットケーキが死ぬ程食べたいです。』


なんだかフータ君は無表情だけどまだ幼体でとても可愛いらしい。ライコウ君が兄貴分なのかな?微笑ましいな…


でも、どうやって伝えようかな〜…“以心伝心”の力をメイソンには受け入れて貰えたけど果たしてエイハブさんにはどうか……


「おい、アネット。お前、今何の魔法を使った?」


どうしようと困っていた私に、突然エイハブさんから警戒を持って質問される。私は、急に突きつけられた敵意に困惑と恐怖で固まってしまった。(これは、初めて会った時と同じ…)


 時間でいうとそう長くは経っていない筈だが、私にはこの膠着状態がとても長く感じれた。


「はい、そこまで。」


メイソンの言葉が聞こえて、私はハッと意識を外へ持っていけた。しかし、この緊張感は変わらない。


「メイソン、お前、やけにこいつの肩を持つよな。お前はこいつに何かの洗脳魔法でもかけられたんじゃないのか?」


「まさか?この僕が?馬鹿にしないでよ。……彼女は確かに今魔法を使ったよ。でも危険なものじゃない。“以心伝心”の魔法。そうだね、ライコウ?」


メイソンはライコウ君ら召喚獣の方に顔を向けて確認する。


『せやで、せやで。本当、ルーカスは何熱くなっとんやか……』


『全くです。ご主人様、やれやれです。……でも、やっぱり“以心伝心”の力だったのですね。僕、初めて見ました!』


言葉のわからないメイソンやエイハブさんの為に顔を大きく縦に振って意思表示をしてくれた。


自分の召喚獣にも肯定されたからか訝しながらも一応は敵意を表さないでくれた。


「“以心伝心”?それは高等魔法だろ?落ちこぼれのこいつに、そんな魔法が使えるのか?」


 私も同じことを思っていたから、全然嫌じゃない。むしろ、よく言ってくれた。


「うーん、僕もついさっき知ったんだけどね〜…掃除中考えてたんだけど、もしかしてコレはリリィの性質なんじゃないかな?」


性質?


「うん、性質。人間にもたまに召喚獣の特性と同じ様に性質、つまりは特殊魔法が使える場合があるみたいなんだ。あまりその数は多く無いみたいなんだけどね。」


特殊魔法って言っても、他の人でも頑張れば出来る魔法もあるからね。使うのに条件とか高い魔力が必要な魔法のことだと思ってくれて良いよ。……と説明してくれた。


 一応は納得しておくが、数があまり多く無い、という言葉が引っかかる。その様な特殊なものをエイハブさんが納得してくれるか……


「なるほど、その可能性はあるな…」


と思ったら簡単に納得してくれていた。もっと、「そんな信憑性の無い話なんて信じられるか!」とか言われるかと思った。


「それはね、ルーカスにも性質があるからだよ。」


苦笑いでメイソンが教えてくれた。


「ふん、まぁ、良いだろう。お前の性質を聞いた以上は俺の性質も教える必要がある。


俺の性質は、“魔力高低”だ。相手がどれ位魔力があるのか・残っているのかを見ることが出来る。」


なるほど、それで私が魔力を使ったかどうかわかったのか……



「どうして、わざわざ教えてくれたのですか?」


「性質があるか、無いか。その性質は何かで戦いの作戦は大きく変わるからな。……ちょうど、今度のイベントで《デュエトーナメント》が開催される。お前も仮とはいえ、生徒会役員なのだから出場しなくてはならない。その時に俺だけお前の性質を知っていてはなんだからな。」


《デュエトーナメント》とは召喚獣と一緒になって戦うトーナメント。王室の要人達も見学に来ることから、多くの生徒が出場する。…そうか、私も生徒会員として今までは見学しかしなかったが、今回は出場しなくてはならないのか……


なんて考えていたら、


ギュルルルル…


『リリィ!フータがお腹減って不機嫌になっとる!』


慌てた様子でライコウ君が私に言って来た。


「あ!えーと、フータ君にホットケーキを作ってあげたいのですが…、台所を借りても良いですか?」






 ……さっき、お掃除したからか大体の物の位置がわかった為に早急にホットケーキを作ることが出来た。

そして、それを持って行ったら


『美味しいです!リリィ、有難うです。また作って下さいね?』


とフータ君に懐かれました。ちなみにお腹が空くと不機嫌になるらしいフータ君は、私が作っている間、エイハブさんの頭を齧っていた。そして、それを愛情表現だと思っているらしいエイハブさんは満更でも無さそうな顔をして齧られていた。














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