6 庶務(仮)の最初の仕事はお掃除
外見は家だけど実は中は生徒会室らしく教室の様なスタイルでした…ということは無く、家の中は普通に家だった。ダイニングにソファー、テレビがあって…お風呂もある。本当に暮らせそうだ。
正直、寮よりも住みごごちが良さそう……汚くなければ。
「……。」唖然、呆然。この部屋でこの学園の取り決めが行われていたと知ると流石に怒りが湧いてくる。いや、むしろ最近にきちんとした生徒会活動が行われていただろうか?行われている生徒総会は、ただ女の子がキャアキャアと騒いで終わるモデルさんのイベントの様なものだ。
テーブルの上にはお菓子の紙袋が捨てないまま放置されていて、テレビにはやりかけてあるゲームがある。さっきまでやっていたのだろう、コントローラー部分にまだ手の温もりを感じる……
「ねぇ、メイソン。この部屋は本当に生徒会室なのね?」
私の怒りを感じとったのか、少し控えめに頷くメイソン。「そう…」と呟き私はテレビの所へ行く。不思議そうに見る2人の前でゲームを操作する。まずはセーブ…そして、電源を切る。その行動にエイハブさんは文句を唱えようとしたがその前に口を開く。
「まずは、お掃除しましょう。」
またもや文句を唱えようとするエイハブさんを今度はメイソンが制する。「ほらルーカス。君、こないだ掃除をするって言っていただろう?良い機会だ。やるぞ」と言ったメイソンの言葉にエイハブさんはとても面倒臭そうにした。「……なら、私が1人でやりますよ?」そう言うとやっとエイハブさんは文句をつけた。
「な…お前は、部外者だろ!」
「いいえ…私は先程確認しました、此処が生徒会室であると。生徒会室は学園を動かす場所。この学園の一生徒である私には、生徒会に問題があるならば改善をする様に注文をつける権利があります。」
この部屋で、きちんとした活動を出来るはずは無い。部屋の隅に目をやったが書類はバラバラだ。これが一般生徒に知られたらどうなるだろうか?神聖化されている生徒会に嫌悪を覚える人や敵対しているグループもあることを知っている。その人達がここぞとばかりに押し寄せるだろう。
「馬鹿め…!この学園の生徒会は特殊だ。普通のと一緒にするな!ドラゴン持ちである俺達が生徒会をやめることは無い。それは王国からの命令であり規則だ!」
私は少しルーカス=エイハブを軽蔑した。自分達は国に守られている。だから何をしても良い…権利を主張し義務を果たさない。
「…昨日のことだからあなたも覚えていると思いますが、私は国の命令であなた方生徒会の管理下に置かれました。私は赤いドラゴン持ちかもしれない、良い意味でも悪い意味でも重要人。もし、私が逃げたらどうしますか?……それは国の命令に背いたも同じ。」
……正直最初は逃げようとしてたのだが、それを知っているメイソンは私の味方の様だ。だから黙っていてくれるだろう。
「……。」黙るエイハブさんに少し軽蔑が薄くなる。実際問題、メイソンが言っていた様に此処は寮であるのだから無理矢理にでも拘束すれば良いだけなのだ。つまり、エイハブさんは私にそうするつもりが無いと言うこと。
「……私に庶務の役を下さい。掃除なら出来ます。その他にもどんな雑用もします。役に立ちます……なにより、私はこの生徒会室を知ってしまった。」
「……わかった。取り敢えずは、お前を生徒会庶務とする。…あくまで管理下に置くついでだからな!仮だからな。」
メイソンの腕にいるルビィは少し嬉しそうだ。この中で一番不安なのはルビィなのだ。いきなり「あなたは恐ろしい赤いドラゴンの生まれ変わりなんですよ」と言われたルビィもきっと自分を知りたいはず…
うん、まずは掃除を頑張ろう!