5 生徒会に入りたい!
森の中を暫く歩くと小さな家が見えた。何でここに家なんてあるのだろう、と思ってついじっと見てしまう。そんな私をメイソンがニコニコと見つめている。一応の確認として「…もしかして、アレ?」とメイソンの方を見ると頷いた。え、本当に?
「あれが生徒会室だよ」
どうやらライコウ君は、ただ単にメイソンを森に突き落としたのでは無くきちんと目的地にまで連れて行ってくれていたらしい。
家は、普通に小さな一軒家の形である。人が住んでいてもおかしくない。しかし、この広い森の中にちょこんと置いてあると雰囲気に溶け込むことなく異物の様に感じてしまう。……それより、あの小さな家…おっと生徒会室に体の大きなライコウ君は入るのだろうか?と思ってメイソンに聞くと「大丈夫、大丈夫」と言う。
メイソンが「どうぞ、お入り下さい。」と扉を開けてエスコートしてくれた。少し慣れないけど、有難うと答えて「お邪魔します…!」と生徒会室に入る。続けてメイソンも「ただいまー」と入る。すると…
「おかえり。遅いぞ、メイソン!」
と、生徒会長のエイハブさんが非常にラフな…具体的に言うと上下ジャージ姿に手には牛乳を持ってやって来た。…………。……この間会った時の、あの凛々しい姿は何処に行ったのでしょうか?
まずは、私の知っているエイハブさんの情報を纏めてみよう。
ルーカス=エイハブ。学園の生徒会長でこの国の宰相の息子という非常に高い地位に立っており本人もそれに相応しく優秀。彼の優れた容姿は、整のい過ぎていた故豪華絢爛な舞踏会でもそれに染まることなく尚一層輝いていた、とか…。メイソンもイケメンではあるが、親しみ易いイケメンで少し彼とは違う。ついた渾名は『パーフェクト超人』…正直悪意を感じるような渾名だがそれを言っている本人達は皆本気だから悲しい所。(マジとかヤバイをくっ付けた感じだな…)
記憶を辿っていると、咳払いが一つ聞こえた。
「メイソン、何故リリィ=アネットをここに連れて来た?」
あなたが昨日生徒会室に来いって言ったのですが…と思いながらもそんな格好で昨日と同じ様に凛々しく喋るから思わず笑いそうになる。メイソンは「わかるよ、その気持ち」と言う様な目線で私を見る。どうやら彼はもう既に見慣れている様だ。
「君が生徒会室に連れて来いって言ったんだろう?」
「お前…わざとか。だが、お前が彼女にそうする理由がわからない。」
「…別に、彼女の為では無いさ。これは自分の為…君だって、遅かれ早かれこうするだろう?だから僕が先にやった。」
「…っ…俺はお前の興味本位とは違う…」
「興味本位、かー…言うなぁ。僕は自分の夢を叶える為なら自分を貫くけど?」
……2人の会話についていけなかった。しかし、情報は読み取れる。それについて考えていてもいいがまずは喧嘩を止めた方が良いと思った。彼は悔しそうな表情をしている。私の知っている『パーフェクト超人』はこんなに表情を出さない。人に表情から情報を渡さない。
何か喋ろうとした時、
「……まぁ、取り敢えず折角来てくれたんだから部屋を案内するよ。いつまでも玄関にいるわけにはいかないしね」とメイソンが私に顔を向けた。
「……でもその前にルビィを出してくれるかな?」
頷く。私はドラゴン持ちで無い以上、やはり生徒会室に入るべきでは無い。……私は空中に指で魔方陣を描く。最後まで描くと私がなぞった形通りに光が溢れる。その魔方陣の中心部分からルビィは飛び出した。飛び出してすぐに私の胸に来るあたり、ルビィは私のことを心配してくれていたらしい。そんなルビィが愛しく、体を撫でる。
「ご覧の通りです。ルビィは、恐ろしいドラゴンではありません。私の可愛いパートナーです。」
折角仲良くなれたメイソンと話せなくなるのは寂しいが、元より住む世界の違うひと…「うっわぁーーーーー!うん本当に可愛い!ねぇ、僕も撫でても良い?」…一応シリアスな雰囲気を出したつもりだったんだけどな、と普段なら思う所ではあるのだが、彼の反応があまりにも新鮮かつ初めてのものにより反応が遅れた。言われた本人、ルビィも驚いている。言葉がうまく出ないので、首を全力で縦に振った。
メイソンは優しい手つきでルビィを撫でる。ルビィは困惑しているが嫌では無いようだ…ただ、どうすれば良いのかわからないだけ。私はその姿に嬉しくて泣きたくなった。皆がルビィを見れば「気持ちが悪い」と言った。でも彼は違った。
……今さっき言ったことと逆になるが、やはり生徒会に入りたい。たとえ、ルビィが恐ろしい赤いドラゴンと言われても…こんなに優しい人がいるなら大丈夫…。少しその優しさが怖くもあるが、私はもっと不安だった。ルビィが関わっているのは私だけ。私には少なくとも小学校や中学校の友達がいるが、ルビィにはいない。ルビィにも、もっともっと世界に触れて欲しい。
「メイソン、部屋に入っても良い?」
先手必勝。この生徒会室に入れば、もう元へは戻れないだろう。…メイソンも気がついたようだ。阻もうとするエイハブさんを横に退けて、
「さぁ、今度こそ。
いらっしゃっい、リリィちゃん」
私は玄関から部屋へ一歩踏み出す。




