表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

第3話:乱入する保護者

俺は今、とてつもなく緊張している。

何故なら一介の教師では絶対に出席できない類の会議の場にいるからである。

事の発端はミコトとゲンサイが発見した隠しダンジョンとモンスターだ。


両方ともクレイモアにおいても、フランベルジュにおいても歴史に残るであろう大発見である。

それを海外からの留学生が発見してしまった。

しかも成績的には落第生が、だ。

どんだけ強かろうが、潜在的な才能を秘めてようが現在の成績が悪い人間が発見したとなると、

長年の歴史を誇り、優秀な冒険者達を輩出してきたクレイモアの名声に傷が付くとかいう話らしい。


実際に二人を受け持っている俺からすると馬鹿馬鹿しい限りではあるんだけどね。


これは非常に体裁が悪いとフランベルジュから文官が乗り込んできて対応する事になった。

しかも、辻褄が合うように知恵を絞ると名立たる学者達・現役の騎士団の幹部達を連れてきやがった。

どうやら騎士団が訓練中に発見・モンスターを捕獲した事にしたいらしい。

そしてミコトによってガウと名付けられたモンスターは、未知の新種だ。

学者達に渡したら調査、最悪の場合は解剖にまで話がいきかねない。


んで、なんで俺がそんな連中がいる会議にいるかと言うと、ミコトがガウの引渡しを拒否したからだ。

そりゃあ気に入ってるペットをよこせなんて言われたら、子供は拒否するに決まってるわな。

しかも、相手はミコト。後ろにゲンサイまで控えてる。


クレイモアの風習に例えると、ミコトはれっきとした第一王女様。

そしてゲンサイは元宰相で元軍部の司令長官で候爵位までもった外戚だ。

そんな人間に強権振りかざそうものなら一気に国際問題になってしまう。

そこで当の本人達を呼び出して話し合いを行うことになったのだ。

ミコトは幼いためにゲンサイと担当教師の俺が会議に出席することになったのだが、

爺馬鹿になっているゲンサイが一切引かないために遅々として進まなかった。


「わしはガウさえ戴ければ良いのですがな」


ダンジョンの発見に関しては問題なかった。

ゲンサイにとっても持ち帰りようもないし

上層だろうが下層だろうがモンスターの強さに変わりはない程度の認識みたいだ。


何より問題だったのが交渉の仕方が大きく異なる事だろう。

フランベルジュは最初に多少無理を押し出して徐々に妥協点を探っていく手法を採った。

しかし、ゲンサイはのっけから結論に至ってしまっている。

これでは纏まる物も纏まらない。

現に交渉は渡せ、断るのループに陥っている。


と言うか、フランベルジュのお偉方がマジ切れ寸前だ。

ゲンサイなんかそれがどうしたと言わんばかりに平然と茶をすすってやがる。

お陰で連中の視線が俺にまで向けられて俺の胃がどうにかなりそうです。


気分転換に外を見ると、ミコトがガウと遊んでいた。

ガウがミコトの服の襟を咥えて首を上に振る。

そうするとミコトが宙に投げ出され数メートル先まで飛んでいく。

すかさずガウが先回りして背中でジャンピングキャッチ。


どこをどう見ても異様な光景なんだが、心洗われるのはなぜだろうか。

ミコトも楽しそうに笑ってアンコールを要求している。


「微笑ましい光景ですね」


誰かが声を掛けてきた。

それには俺も同意する。

王女様といってもまだ子供。遊びたい盛りだし大人の事情ってのもわからんだろう。


「そんな光景を大人達の勝手な思惑で壊す。

 それはとても残酷な事だと思いませんか?」


確かにその通りだが相手は国ですよ?

面子というのもありますよ。

口が裂けても国民たる俺が言えたものじゃない。


「面倒なものですね」


まったくです。


しみじみ同意すると同時に近くで破砕音が生じた。


見るとゲンサイが誰かの頭を掴んでテーブルに叩きつけた際に割れたようだ。


って、あんたそりゃ不味いでしょ!?

協議の場で暴力行為なんてしたら最悪の場合、即戦争でしょうが!

あんたの場合、ここにいる人間を皆殺しに出来るんだから自重してくださいよ。


「なぜお前がここにおるんじゃ!」


どうやら知り合いのようだが、何時の間に知人なんて作ったんだ?

そもそも知人でもこんな事しちゃ駄目でしょうが。


「娘の頑張ってる姿を一目見ようと遠路遥々やって来た孫に対する仕打ちですか?」


叩きつけられた人は大丈夫そうだな。

けど、娘?孫?


え?この人ってひょっとして・・・


「か、顔を伏せたままで失礼します。ミコトの父です。

 自分でも似合ってないと思っているのですが王配なんてのをやってます」


ヒノモト王国第1位王位継承者。

それよりも「極東の魔王」って言われてる人ですか!?


故郷にいる姉さん。

俺、辞表を用意していなかった今朝までの自分をぶん殴ってやりたい。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ