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「せっかく催眠かけ直すならさ、設定変えて恋人ってことにしようかな」


 そうしてシロ兄があの恐ろしい目でこちらを見たところで私の記憶は途絶えていて、気づけば翌朝になっていた。

 

「あれ? 私……」


 何か大事なことを忘れているような気がするけど、とりあえずいつものように身支度をして、普段通りに二人を起こしに行く。


「シロ兄、そろそろ起きて! 日曜だけど寝過ぎだよ」


 シロ兄は『兄』とは言っているけど私の恋人だ。幼馴染で昔からシロ兄と呼んでいたから、付き合った今も変わらず呼んでいる。

 恋人がなぜうちで一緒に暮らしているのかは……ああ、そうだ、シロ兄の親もうちと同じように仕事の都合で遠くで暮らしていて、両家の親が話し合って子どもたちを一緒に暮らさせることにしたんだ。三人暮らしの方が色々安心だからって。

 頭の隅でもう一人の私が「ちょっと無理がある」って一瞬考えたけど、霧に包まれるようにその考えは有耶無耶になる。


「ロウ兄、もうすぐお昼になっちゃうよ」


 別の部屋にいるロウ兄も起こした後、私は朝食兼昼食の準備に取りかかった。ロウ兄もシロ兄も夜しか食べないから作るのは私の分だけだ。


「フレンチトーストにしようかな」


 冷蔵庫を覗いて独り言を言う。お腹が空いていたので手早く作って、できたフレンチトーストをお皿に移していると、シロ兄とロウ兄が順番にリビングにやってきた。二人とも朝の支度を終えたようだけど、今日は日曜だから制服には着替えずラフな格好でいる。

 ロウ兄は歯磨きをしながらテレビをつけ、シロ兄は顔を拭くのに使ったタオルを肩にかけたまま私のところにやってきた。


「甘い匂いがする」

「うん、フレンチトースト作ったの」

「まずそう」

「え?」


 ちょっとムッとしながら振り向くと、シロ兄は思ったより近くにいて首元しか見えなかった。

 

「そんなパンよりお前の方が美味しそう」


 その言葉に軽く上を見ると、シロ兄は目を細めて私を見下ろしていた。

 大好きな恋人なのに、この近過ぎる距離や相手の瞳、笑顔が何故か少し怖いと感じる。


「シ、シロ兄……」


 距離を取ろうと思ったけどすぐ後ろはキッチン台で、おまけにシロ兄が私を囲うようにキッチン台に両手をつくから逃げられなくなった。

 そして拒否する間もなくキスをされる。

 静かにゆっくりと、まるで蛇が地を這うかのようにシロ兄の舌が私の中に入ってくる。


(キスって私、初めて……? シロ兄と前にもしたことあった?)


 この行為が私とシロ兄の間で当たり前のことなのか初めてなのか分からず混乱する。初めてのキスなんて大事なことなのに記憶が曖昧になっていた。

 恋人なんだから応えなくちゃと謎の義務感でキスを受け入れるけど、体は何故か鳥肌が立って涙が滲む。


 そして私は気がついてしまった。

 シロ兄の舌の先が二股に分かれていることに。


 ぎょっとして私が身を引いたのとシロ兄が唇を離したのは同時だった。

 私が冷や汗をかいているのに気づいていないのか、シロ兄は濡れた自分の唇をぺろりと舐める。


(蛇みたいな……)


 私が呆然としている一方、リビングにいたロウ兄はいつの間にかこっちを見ていて、淡々と、でも興味ありげに言う。


「それ、楽しい?」

「うん。でも結構気が高ぶるかも」


 口調は冷静なのに、ふと顔を見るとシロ兄は興奮と殺意をない交ぜにしたような恐ろしい目をしていた。


「な、何かシロ兄怖い!」


 不穏な空気を壊したかったのと、ビクッと反応して怯えてしまったのを隠すため、私はなるべく冗談ぽく言いながらシロ兄の手を払い、ロウ兄のところに逃げた。

 ロウ兄にそっとくっついて服の裾を握ると、ロウ兄も優しく肩を抱き寄せてくれる。それを見たシロ兄は面白くなさそうな顔をしていたけど、しつこく追いかけては来なかったので安堵した。


 そんなふうにその日私は昼頃まで催眠にかかっていたものの、夕方が近くなるにつれ正気に戻っていった。


(シロ兄と私が恋人!? あり得ない!)


 怖がりつつもシロ兄を受け入れていた自分が信じられない。今日はキスを三回もしたし、ソファーでいちゃついたりしたことも思い出してぞっとする。

 三回目のキスの時は「やめて」と言ってもやめてくれなくて、シロ兄が何だか……いつも以上に怖かったけどロウ兄が止めてくれた。止めてくれなかったらどうなっていたのか恐ろしい。


(もう無理……。演技を続けられない)


 兄妹の演技ならまだしも、恋人の演技はこれ以上できそうにないと、夜になって完全に催眠が解けた私は思った。

 今もリビングでロウ兄とシロ兄と一緒にテレビを観てるけど、私はシロ兄にくっつきながらどうやって自室に戻ろうか考えていた。私からくっついているわけではもちろんなく、シロ兄に抱き寄せられた形で、私の腰に回されているこの長い腕が怖い。


(次キスされたら突き飛ばしちゃうかもしれない。絶対に拒否反応が出ちゃう)


 そうしたらシロ兄はキレるだろうか? また催眠をかけられるのか。一日程度で催眠は解けてしまうと分かったら毎日かけられるかも。


(嫌だ……。嫌だ嫌だ嫌だ)


 催眠にかけられて自分の意志とは違う行動を取るのも、シロ兄の恋人の振りをするのも、この二人と一緒に暮らすのも、何もかもが嫌だった。


「私、もう……」


 部屋に戻る、と立ち上がりかけたところで、テレビに推しの男性アイドルが映った。清涼飲料水のCMに出て今日も爽やかな笑顔を振りまいていた。

 するとロウ兄が冷めた目をして言う。


「こいつだっけ? 希沙の好きな奴」

「……や、推しだよ」

「ふーん」


 恋心までは持っていない。ただ彼は格好良くて、外見がロウ兄やシロ兄に似てたから親近感が湧いて応援し始めた。

 でも今改めて二人と彼を見比べてみると、彼は良い意味で普通で人間らしい。変な圧もないし見ていて鳥肌も立たないし、二人とは全然違う。


「……」


 シロ兄はしばらく不機嫌な顔をして黙っていたけど、私が自室に戻るためもう一度立ち上がろうとしたところで口を開いた。


「やっぱ家族の方がいいな!」

「?」


 私とロウ兄はシロ兄を見る。


「恋人って結局他人だし、希沙が他の人間を好きになることもあるし、恋人の絆って案外脆いじゃんって気づいた。家族の絆に勝るもんないわ。それに設定変えると明日から学校の奴らとかに催眠かけ直すの面倒くせぇ」

「え?」


 学校の人たちにも催眠かけてたのかと思っているとシロ兄と目が合って、やばいと感じた時には、プツンとテレビが消えるみたいに記憶が途絶えた。


 そうして気づくと次の日で、私はいつものように兄二人と学校へ行き、仲良く一緒に帰ってきた。変わったことは何もない平和な一日だ。


 けれどさらにその翌日になるとやっぱり正常に戻って催眠は解けた。だから私は懐いている妹を演じてあの二人に催眠が解けたことをバレないようにしなきゃならなかったけど、それでも自分の意志を失って都合の良い存在になっているよりマシだ。

 

 とはいえ怖いものは怖いし、演技をするにも限界はある。日が沈んでくると二人の異様さが際立つ気がして目が合うと震えてしまうし、話しかけられるとビクッと肩を揺らしてしまう。本能的な反応はどうしようもなかった。

 けれど幸いあの二人は催眠が解けていることに気づいていないので、この機を逃すまいと私は策を練った。

 

(とにかくあの二人をどうにかしなきゃいけない)

 

 私とお父さんとお母さんの家を守りたい。あの人たちに操られて家族ごっこの妹でいるのはもう嫌。


(でもお母さんたちはまだ催眠にかかってるし、私一人でどうしたらいいんだろう)


 ずっと考えているけどなかなか良い案は浮かばない。だから今日も学校にいる間、授業そっちのけで考えていた。

 そしてふと、最初に催眠が解けた時にシロ兄が言っていた言葉を思い出す。


『お前何か、お祓いとかそういうのやった? お守りとかも持ってないよな?』


 それって二人が私にやってほしくないことだったに違いない。


(お守りとか持ってたら二人はもしかして私に近づけなくなったりするのかな)


 催眠が解けて一週間、やっとそう思い至って帰りに神社に行くことに決めた。お祓いとか除霊ができる人は知り合いにはいないから探すのが大変だし、簡単なお守りから始めることにする。


「ごめん、今日友達と遊びに行くから先に帰ってて」


 放課後、兄たちはいつも私を迎えに来るのでそう言って帰宅してもらい、私は電車で二駅離れた場所にあるそこそこ大きな神社に向かった。地元の小さい神社ではお守りを売っているのか分からなかったし、有名な神社のお守りの方が効果がある気がするから。

 神社に着くと私は一直線に授与所に行き、お守りを選んだ。

 

(交通安全、無病息災、学業成就……)


 案外平和なお守りしかない。悪霊や妖怪の類に悩まされてる人間って少ないの?

 どうしようかと迷ったが、ふと端の方を見ると御札も並んでいるのに気づいた。

 こちらの方が魔除けの効果がありそうだと思い、一番高いものでも十分お小遣いで買える範囲だったのでそれを購入し、持ち帰った。


(でもあの二人は先帰ったからもう家にいるんだよね)


 本当はいないうちに家のどこかに貼りたかったけど仕方ない。鞄に御札を入れたまま側に置いておけば二人は私に近づけなくなるかもしれない。


「ただいま……」


 控えめに言ってそっと家に入る。どうして私のうちなのにこんなに恐る恐る行動しなきゃならないのか。

 リビングの明かりはついていたし、廊下を通ると二人はソファーに寝そべってそれぞれスマホをいじっている姿が見えた。

 大丈夫、特に異変はない。


 いや、今日に限っては異変があった方がいいのか。二人に何も変化がなければ御札の効果も特にないということになってしまう。


「希沙? おかえりー。早かったね」


 シロ兄が体を起こして言う。ロウ兄も私が帰ってきたのに気づいてこちらを見た。


「た、ただいま」


 すぐに二階に上がろうと思っていたけど、二人の様子を観察するために私も足を止めてリビングへ目を向ける。

 

「どこ行ってたのー?」

「えと、友達の買い物に付き合ってただけ」


 普段と変わらずリラックスしている二人に、私はちょっとがっかりしながら自室に向かう。


(なんだ……、何も効果ないじゃん)


 もっと有名な神社とかお寺に行くべきか、いっそ神主さんを自宅に招いてお祓いしてもらえば良いんじゃないか、とか色々考える。


(これからお金かかりそう)


 それでもあの二人を家から追い出すために、効果のある方法を見つけるまで出費は惜しまないつもりだ。

 


 その後、私は基本的に自室にいたものの、リビングにいる二人を完全に避けることはしなかった。御札は鞄に入れっぱなしだったけど、じわじわ効いているんじゃないかと彼らの様子を確認するためにも一階に降りて夕食を食べたりした。

 だけど私が期待していたような反応を二人がすることはなく、悲しいことに普段と何ら変わらない。

 

 けれど失意のままお風呂に入り、まだ濡れている髪をタオルで拭きながら自分の部屋のドアを開けた瞬間――暗い部屋の中に四つの光る目が見えて悲鳴を上げた。


 照明のスイッチに伸ばしかけていた手を引っ込めて、震える足で一歩下がる。廊下を照らしているオレンジの光が私の部屋にも入って、シロ兄とロウ兄の姿をぼんやりと浮かび上がらせた。


 ロウ兄はいつも通り気だるげな表情でこちらをじっとり見ていて、シロ兄は瞳の奥が笑っていない笑顔で私に向かって何かを見せつけてくる。


「そ、それ……、なんで」


 シロ兄が持っていたのは神社で私が買った御札だ。お風呂に入っている間に鞄を漁られたのだ。


「やっぱり催眠効いてなかったんだぁ? 一生懸命演技してたけどたまに震えてたもんね?」


 私は恐ろしくなって固まったまま、何も言えずにいた。だってシロ兄が持っている御札は大部分がドス黒く変色してしまっている。まるで邪悪な〝気〟に負けてしまったみたいに。

 シロ兄は笑いながら続ける。


「でもそれも可愛くて放っておいたんだけど――これは駄目だわ。御札買ってくるなんて」


 途中からスッと真顔になって、怒気を含んだ低い声で呟いた。

 それによって一気に空気がピリつき、息をすると喉が裂けそうになって、一人じゃ立っていられずに震える手を壁について体を支える。じわりと出た冷や汗は全身を濡らして気持ちが悪い。

 ロウ兄は御札をちらりと見て言う。


「しかもちゃんとある程度効果あるやつな」

「俺らを追い出すために頑張って考えたんだね〜。でも俺らの方が力が強くて意味なかったね、残念」


 シロ兄はまたふざけた調子に戻っていた。


「この世で三人きりの兄妹なのにな」


 冷えた瞳からロウ兄も怒っているのだと分かる。

 

(殺されるのかな)


 上手く働かない頭で必死に死を回避する方法を考えた。

 そして自然に出た涙を滲ませながらすがるように言う。


「ご、ごめんなさい……」


 一度息を吸ってから、死ぬ気で演技を続けた。


「そうだよね、私たち、きょ、兄妹だもんね。血は繋がってないけど、本当のお兄ちゃんみたいに思ってるんだよ……。一緒にいて、たの、楽しいし」


 本当は「あなたたちなんて私の家族じゃない! この家から出ていって!」って叫びたいけど、そんなふうに刺激したら本当に殺さねかねない。懐かない妹は殺して次の家族を探しに行きそうだ。


「御札を買ってきたのは……や、やっぱり間違いだった。だって私、お兄ちゃんたちが人間じゃなくても、す、好きだから。だからこれからもたまに少し怖がっちゃったりするかもしれないけど、きっと慣れてくるから、ゆ、許して」


 怖いのと、心にも無いことを言っているせいで自然と涙が出てくる。

 とにかく今は催眠をかけなくても懐いてくる可愛い妹を演じながら、この二人から逃げる方法を探すしかない。

 本物の霊媒師とかががいれば二人を祓えるかもしれないし、相手が人間じゃなくても何かやりようはあるはず。絶対にこの二人を家から追い出して、本当の私の家族の形を取り戻すんだ。


 すると私がそんな決意をしているとは気づかずに、シロ兄は安心したように笑って私を抱きしめた。


「うん、いいよ、許すよ。俺に触れられてガタガタ震えてる希沙も、どうしようもなく脆弱で愛おしいし」


 意外とあっさり許してくれたようだ。

 そして気が済むと私を離して、心配そうに眉を下げて言う。


「でも希沙はずっと怯えてるの嫌でしょ? また催眠かけてあげようか?」

「え……」


 催眠をかけられて本当に彼らに従順になってしまうのは困る。それじゃあ霊媒師を呼べないし。

 いや、でも……。


「お兄ちゃんが言うならそれでもいいよ」


 どうせ催眠はすぐ解けるから問題ないと思った。ここは大人しく言うことを聞いておいて、二人を油断させた方がいい。


「じゃあかけよう。良い子だね、素直で可愛い」


 シロ兄は嬉しそうにほほ笑んで私の頭を撫でると、すぐ後ろにいるロウ兄の方を振り向いてこう言った。


「んじゃ、お願い」

「うん」


 ロウ兄が瞳を紫と黄色に光らせながら、不穏な空気をまとって前に出てくる。


「え、何で……? 催眠っていつもシロ兄の方がかけて……」

「これからは俺がやるわ」


 戸惑う私にロウ兄が言い、シロ兄は軽い調子で続けた。


「ま、そっちの方がいいね。俺、催眠苦手だから練習がてらやってたけど、ロウの方が断然上手いし」


 シロ兄より催眠が上手い?

 私は目の前が真っ暗になったような感覚に襲われながら、慌ててロウ兄を止めようとする。

 

「ちょ、ちょっと待って」

「俺がやると強烈にかかりすぎて人形みたいになる時あるから、希沙にかけるのはちょっと嫌なんだけどな。本来の性格みたいなのが失われる」

「いーじゃん、別に。本来の性格なんて。ついでに俺たちのこと大好きなブラコンの妹にしといて」

「そ、そんな……!」


 シロ兄はおちゃらけて言いながら私の背後に回り込み、逃げられないようにぎゅっと抱きしめてきた。

 絶望を感じながらも一縷の望みをかけて、私は正面にいるロウ兄を見る。シロ兄よりロウ兄の方がまだ人間の気持ちを理解してくれそうだと思った。


「ロウ兄お願い、やっぱり嫌だ! 待ってっ……!」

「俺たちのこと愛してくれる可愛い妹を作ろうよ。な!」


 必死で待ってと言う私と、笑顔で催眠をかけろというシロ兄。どちらの言葉も聞いた後で、ロウ兄は特に迷うことなくシロ兄に向かって頷いた。


「そうだな」


 二人にとって、私の気持ちなんて道端の石ころ程度の価値しかないらしい。気に留めるようなものではないのだ。

 すんなり了承すると、ロウ兄は私の顔を両手で掴んで、親指でまぶたを持ち上げながら強制的に目を開かせてきた。


「やめてっ、嫌! やめてーッ!」


 あらん限りの声で叫んだところで、はたと気づく。

 ――私は何をこんなに恐怖して、どうして泣いているのか。


「……あれ? 私……」


 戸惑いながら呟くと、ロウ兄は手を離して頭を撫でてくれた。シロ兄は何故かにっこり笑ってる。


「なんで泣いてるんだろう? 恥ずかしい」

「ストレスでも溜まってたんじゃない? 突然泣き出すからびっくりしたよ。ま、今日はもう寝な」


 袖で涙を拭いていると、シロ兄は謎の黒い御札みたいなものを持ったままロウ兄と一緒に部屋を出ていこうとする。


「待って」


 私は慌てて駆け寄って、二人の服の袖を引っ張った。


「まだ眠くないし、お兄ちゃんたちと一緒にいたい。そうだ、下でゲームでもしようよ。そんでゲーム終わったら一緒に寝よ!」


 二人の間に入ってそれぞれと腕を組むようにくっつきながら言う。

 私はお兄ちゃんたちのことが大好き。格好良くて優しくて自慢の兄だ。家ではいつもくっついていたい。


「ゲーム? いーよ」


 シロ兄はにこにこしながら言い、ロウ兄も頷いてくれた。

 三人で部屋を出ながら、私はため息をついて呟く。


「私、お兄ちゃんたちに彼女とかできたら絶対耐えられない。二人とも恋人は作らないでね!」

「おい、狭いし危ない」


 二人の腕をぎゅううっと抱きしめながら階段を降りていると、ロウ兄に注意された。でも満更でもなさそうな顔をしている。

 一方、シロ兄も満足げな笑顔を浮かべていた。


「うちの妹はかわいーなー!」

「心配しなくても恋人とかは興味ない。家族が一番大事だから」


 そうして二人で私の顔を覗き込むように振り向きながら、薄っすらと妖しく笑って同時に言う。


「俺たちはこの先もずっと、永遠に家族だ」



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