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46 メイソン侯爵家からの奪還 その1

家族が急に入院になり、バタバタしております。

隙間を見て執筆していますので、更新頻度が駄々下がりになります。申し訳ございません。


   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「ナシュダール! 貴族院でリリアナについて動きがあったぞ!」

ナシュダールの職場に父親のローズウッド子爵が顔を出し、ナシュダールを呼び出す。

「貴族院でリリアナ関連の申請書類はすべて止めてもらっている。それでだ、この2枚を見ろ」

ナシュダールは2枚の書類に目を通した。

「養子縁組変更? リリアナの婚約申請書!?」


その時、ナシュダールは後ろにいた人物に、持っていた書類を引き抜かれる。

「誰だ! 勝手に……」

「リリアナが何だって? ジョシュア・フローディン?」

書類に書かれた署名をレイノルドが読み上げていた。

「レ、レイノルド!」「殿下!」

『不味いヤツに見つかった!』とナシュダールはげんなりした。以前から友人ながらレイノルドのリリアナに注ぐ愛情は度を越していると感じていた。そして、リリアナもレイノルドを必要以上に警戒している。リリアナは貞操の危機を感じてレイノルドを避けているのではないのか? ナシュダールはそう結論づける。

「フローディン宰相の息子がリリアナと婚約するだって? そんなのリリアナの同意なしなのは明らかじゃないか! リリアナと結婚するのはこの僕だから!!」

「レイノルド……王族のお前と子爵家では家格差がありすぎてリリアナと結婚なんて無理に決まってるだろ!」

ナシュダールが正論を語ると、レイノルドは床に膝をつき、許しを乞うた。

「お義兄(にい)様! 僕とリリアナとの結婚の許可をください!」

「お義兄(にい)様と呼ぶな、気色悪い!! お前は王族としての自尊心も誇りもないのか!」

「そんなもの、リリアナと結婚できれば簡単に捨てられるものだ!!」

極めて大真面目にのたまったレイノルドに、ナシュダールはドン引きした。


(けが)れを嫌う王族が、既にお腹に子どもを宿してるリリアナと結婚できる訳がないだろう!」

ナシュダールはうっかり口を滑らせる。

ローズウッド子爵は「あちゃー」と顔を手で覆う。


「子ども……リリアナに、子ども……? だ、誰なんだ! リリアナにそんな(うらや)ま……下劣なことをしたのはっ!!」

ローズウッド家の2人は顔を見合わせては『レイノルドは〝羨ましい〟と言いたかったに違いない』と意見が一致した。


「子どもの父親は俺も父さんもまだ会ったことのない男性だ」

「え?」

「ところが、セントアルカナ公国の公子様は相手をご存知のようだった」

ナシュダールの言葉にレイノルドの表情が強張る。

「……また、コンラーティシア公子か……僕はアイツに負けたくないのに、僕の行く手を阻むのはいつもアイツだ」

レイノルドは悔しさからギリリと歯を食い縛る。


ナシュダールはレイノルドから書類を奪い返し、レイノルドを無視して養子縁組変更の書類を読み直した。

「父さん、メイソン侯爵家とはご存知でしょうか?」

「王都の北東部に位置するメイソン侯爵領の領主だろう。リリアナを養子にできる権限があるのは母親であるエミリアだ。エミリアの再婚相手がメイソン侯爵であれば養子は可能だ」

「リリアナを迎えに行きましょう、父さん!」

「ああ、そうだな」

「ナシュダール! 王家の馬車を出すから僕がリリアナを迎えに行く!!」

レイノルドが前のめりぎみに言う。

「「ええっ!?」」

「レイノルドは家族じゃないだろ!」

「いや、殿下が来ることで牽制にはなる。なるんだが……護衛が前後左右6人に御者……う~ん……」

ローズウッド子爵は考え込んでしまった。

「今回の件ではフローディン宰相に相談する訳にはいかないから、私の上司のトルーマ法務大臣に相談して大至急で殿下の護衛騎士を配備してもらおう。殿下とナシュダールは王家の馬車と御者を確保してください」

ローズウッド子爵はそうと決まると、バタバタと通路を駆けていった。

「俺たちも行くぞ、レイノルド!」

「──ああ!」

レイノルドはナシュダールの後を追いかけた。


   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


セドリックは脱いだ軍服の上着を着直すと、自身の馬をユベイル州の国境に置かれた軍部の官舎まで取りに戻り、素早く馬に跨がった。上官の命令も振り切り、セドリックはリリアナの乗った馬車を追いかける。


(……リリー!)


程なくセドリックはリリアナの乗った馬車に追い付いた。馬車の窓には並走しているセドリックに気づき、心配そうに見るリリアナが張り付く。

しかし、馬車はメイソン侯爵家の敷地へ進入したため、セドリックはやむを得ずメイソン侯爵家の敷地への侵入は諦め、敷地の外で待機することにした。


しばらくして、メイソン侯爵家に立派な馬車が入っていった。窓はすべてカーテンが掛けられ、乗っている人物は不明だった。


(ロックウェル家も侯爵家でそれなりの馬車を所有しているが、それよりも質のいい馬車だった。今のはまさか、公爵家の馬車なのか……?)


   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


リリアナがエミリアとメイソン侯爵家の馬車に乗っていると、窓の外に銀髪で黒い服装の人が馬で並走していると気づいた。

「───セドリック様!」

リリアナは馬車の窓に駆け寄って、窓に手をつく。


(追い掛けてきてくれた……!)


鼻の奥がツンと痛くなるのを感じた。

だが、馬車がメイソン侯爵家の敷地へ入ってしまうと、セドリックはメイソン侯爵家の門前で馬の手綱を引き、馬を止める。

リリアナの目には、セドリックの姿が段々と小さくなっていった。窓に手をついたまま俯く。

「……セドリック様……」

馬車が屋敷の前に停まり、扉が開けられるとリリアナは、いの一番に馬車から飛び降りる。しかし、メイソン侯爵家の侍従たちに阻まれ、セドリックの元へ駆けつけることは叶わなかった。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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