可愛がりたい
ストックが終わりました。
このお後のことは全然考えていません。
気が向けば更新予定です。
気長にお待ちくださいませm(__)m
タイトルだけ変えました。
水面から浮上するように、意識が覚めた。
それでも心地よいぬくもりに震えた瞼がくっついて離れそうにない。
起きなきゃ、でももう少し、でも眠い……
「……ん…ぅ……」
幼い仕草でむずがり、体をくるりと丸めて布団の中に潜り込む。
ふたたびまどろみを甘受した意識の端でふと、やわらかな微笑みの気配。
それから、身じろいだときにできた隙間を埋めるように布団をそっと抑える仕草は母が子を寝かしつけるそれによく似ている。
なんだか体じゅうがむずむずするほど無性に嬉しくてもたばたと転がるのを、はっきりとしたちいさな笑い声の持ち主が再び抑えて、かわいい、と告げる。
無意味で無邪気な攻防がしばらく経ったあと、ふわあぁあ、と口をめいいっぱい開けて、丸まったままぐぅーっと伸びる。
滲んだ涙を拳でこしこし拭う。
もう一度ころん、と寝返って、布団から顔を出すと、
「ああ、おはようございます。リオル様」
「……だりる」
とろけるように甘い極上の微笑みを浮かべて目覚めを告げる、漆黒の『守護者』の姿があった。
そういえば今週の学食デザート、チョコレートプリンのホイップとバニラアイスの苺ソース添えだった。
「ちょこぷりん…たべたい」
「はい、かしこまりました。ですがその前にお顔を洗って、ご飯を食べましょうね」
我ながら色気よりも食い気だなぁ、とぽやぽやしながらやさしく手を引いてくれる『守護者』の背中で揺れる黒髪を見ながら思った。
「リオルが寝ぼけている…だと…!?」
「この爺、再びリオルさまの愛らしい姿を見られるとは…感無量でございます」
今、よく見知った顔がいたような?
それが姉の乳兄弟であり兄がわりになってくれている高等部2年A組ラドリック=ギニュースとハンライト家の筆頭執事であり祖父代わりのノーテム=カラントであると気づいたのは身支度を整えてリビングの椅子に座り、暖かいミルクティーを前に挨拶を交わした直後だった。
「え、もう朝?」
「左様ですよ。起こそうと思いましたがお疲れのようでぐっすりお眠りになられていましたから、起こすのはやめたのです」
「ううん、ありがとう。すごく体が楽になってるし、助かった」
「それはようございました」
まだどこかぽやんとした意識のまま唇がほわりと上がる。
ただ素直に受け入れるということを、受け入れることを許容してくれる存在がいるということを教えてくれたことが、わかることがただ嬉しかった。
「リオルかんわいいなぁ……俺らのこと忘れてっけど」
「リオル様が嬉しそうで、爺は嬉しゅうございます」