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好きだった幼馴染に消えちゃえと言われた俺は〜〜いまさら好きと言われてももう、あの頃には戻れない  作者: 野良うさぎ(うさこ)


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十二話


 妙な異変は一瞬だけで収まった。俺と真央さんは授業が始まるから教室に戻ることにした。


「じゃあね、蓮夜」


「はい……」


 いつもどおりの言葉、なのにいつもよりも感情がこもっている。嫌な予感がしてたまらない。真央さんも同じ気持ちなんだろう。

 後ろ髪引かれる思いで廊下を歩く。


 なんだろう、少し学校の生徒たちが騒がしいような気がしないでもない。


「あっ、蓮夜! ここにいたんだ、遅刻しちゃうから早く教室に行こ!」


 幼馴染の薫子。最近、段々と異世界転移をする前の記憶が蘇ってきた。薫子は明るく振る舞っているけど、自分の心を殺してるようにも見えた。


 ……そういえば、俺が異世界に飛ばされた時――、最後に見たのは、俺が買おうとしていた白いスニーカーを手に持って、泣いている薫子だった。


 だから、異世界にいた時はあの光景が忘れられなかった。

 だから、異世界から帰還できたら、薫子に言ってやりたかった。


「なんて言いたかったんだ? 俺は」


「ん?どうしたの?」


 俺は思考の海へと沈んだ。



 ***



 異世界フィルガルド。

 剣と魔法と王政が支配する世界。


 トラックに轢かれた俺は――、異世界フィルガルドへと転移したのであった。


『今回の神様からのご褒美は……十人の転移者ですわね。……C級、D級、あらS級、S級、A級……魔力ゼロ? 等級もつかない雑魚ですわね』


 それがこの国の王女との初めて出会った時のことだ。転移者は通常魔力があり、強さ、保有量によって、等級が分けられる。


 召喚された十人、俺以外は全員魔力や、特別なスキルを持って転移していた。俺だけ何も持っていなかった。


 一般の兵士、いや、訓練されていない分、一般の兵士以下の俺は、転移者としては異例の一兵卒として配属された。


 地獄のような日々を送った。隣にいた兵士が、昨日まで笑ってご飯を食べていた仲間が、紙くずのように死んでしまうんだ。


「絶対に、死にたくない。薫子……、あのスニーカーは俺のために買ってくれたのか? それを聞くまで……」


 現実世界で悩んでいたことがチンケに思えた。ひどいと思っていたいじめや、親の仕打ちは、遊びに思えて仕方なかった。


 一日、一日、日が経つ事に俺の精神が勝手に大人になっていく、そうしないと心が死んでしまうからだ。


 だから、いまならわかる。姉ちゃんや薫子は俺の味方になろうとしたけど、不器だから上手くできなかったんだ。


 きっと、異世界から帰れたらうまくやれる。俺はそう思った。


「だから、絶対に死なない」




 ***


 現実は無惨だった。いくら自分に誓ったとしても、圧倒的な暴力には勝てることができない。


 俺が所属していた小隊が、魔王軍がいるとされる森へと斥候することになった。そして、そこで出くわしたのが――魔王軍四天王の一人――


「四天王の一人、スサノオ……」


 自分の息が荒い。四天王のスサノオは俺の方を見向きもしなかった。足元には俺の同僚の死体が転がっている。炎で丸焦げだった。


 軍の基礎知識として、魔王軍の幹部連中の顔は把握していた。四天王は全員若い女の姿をしており……、初めてみたスサノオは……どこかで見たことがあるような女の子だった。


 角は生えている以外は、普通の女子高生に見えた。


「妙な気配がするわね。……あなた、転移者なのになんで最前線にいるの?」



 俺の後ろで震えている新兵がいた。貧乏な家庭出身で身を売るくらいなら、軍に入って一旗あげる、昨日お酒を飲みながらそう言っていた。


 なんだか、俺の姉ちゃんに似ていると思った。

 たった一ヶ月しか一緒にいないけど、なんだが、悪くない気がした。


「ふぅ……、まあいいわ、ここにいるのを見られたなら、殺すしかないわね」


 俺は覚悟を決めた。新兵にハンドサインを送り、即時撤退して、状況を報告しろ、と伝える。


「待ってくれ、妙な気配ってなんだ?」


 会話を少しでもして、新兵が逃げる時間を稼ぐ。


「いや……、もういいわ。どうせ死ぬんだから。じゃあ向こうの世界で会いましょう」


「ここは俺に任せろ、行けっ!!」


 俺は剣を構えた。ここが俺の人生の分岐点だ。一分一秒でも時間を稼ぐんだ。


 だが、現実はうまくいかない。

 トスッという音が聞こえた。


 逃げたはずの新兵が……俺を庇うように……そして、――新兵の胸が血で一杯に染まり……、地面に倒れていた。


「な、なんで俺を守ったんだよ……、俺なんて生きていても価値がなに人間なのに……」


 新兵が血を吐きながら、俺の顔を触る。


「……お、とうと、に似てたんだよ。……お姉ちゃん、守りたかったんだ。こんどは――守れた、かな……?」


 そう言って、新兵は息を引き取った……。


 俺は新兵に首に付いているネームタグを取る。リディア。ああ、忘れない。俺はこの名前を忘れない。


 身体がおかしかった。怒りで叫んで絶叫したい気分だった。なのに、頭が反応しない、身体が反応しない。


 ――ただ、深い悲しいに襲われて――涙が出て止まらないんだ。


 俺は立ち上がり、スサノオを向き合う。


「すまんな……、これが戦争だ。お前も苦しませずに楽に殺してやろう」


 悲しみが俺の身体を変質させる。頭が沸騰するような気分と変わり、全身の血液が凍りつく冷たさだ――


 身体を動かす。剣を振るう。


「――――ッ!? なんだ、お前は? その威力はなんだ?」


 心を殺せば強くなれる。

 俺は生き残る。

 理由なんて忘れてもいい。






 気がついたら、俺の目の前には血だらけのスサノオが倒れていた。俺はトドメを刺すために、剣を握りしめ――


「強制転移術式魔法――」


 俺の身体が結界に動きを止められた。それでも、結界を「破壊」しながら、剣を動かそうとする。


 森の奥から声が聞こえた。メガネの少女――四天王の一人キサラギが杖を奮っていた。


「ま、魔王様、あの子止まりません! 結界が、転移ができません」


「仕方ないわね。あーしに任せなさいよ!」


 俺は、その時、魔王と言われる存在と目を合わせた。


 自分の時が止まったような気がした。


 呆然と彼女を見つめている。


 心臓の鼓動が早い。


 この気持ちはなんだ? 


 魔王が俺に笑いかけた瞬間――俺の目の前は真っ暗になり、転移魔法が発動したのであった。



 ***



 神域観測


『妙な転移者を発見したのじゃ。あれは……良い駒になると思うのじゃ。ふふ、儂が作った無限ダンジョンにぶち込んでみるのじゃ』







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