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小さな魔王は皆の推しになりました  作者: 光流
第二章 神々のサイコロ

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15 龍と空へ


「ふふん、ふふん、きょーうを楽しく歩きましょう。悲しい時にはとまっていい。それでも道は続いてく。いつかはてくてくたどりつくーララララー」


 カラクが適当にふふん、ラララーと歌いながらとてとてと歩いて行く。その様子を獣と龍姿でふにゃふにゃに顔を緩ませたレフ、イトラ、饕餮が身体を歌に合わせるようにリズムを取りながらついて行く。わずかに音程が外れているのは、誰も気にしていないようだ。


「うーん、平和やなぁ」


 山王は、ぽつりとそんな皆の姿を見て呟いた。それから思い出したように苦笑する。


「けれど、これまで起こった出来事は平和とはほど遠いなぁ。カラクは人助けをしとるけど、生まれ変わる前はどんな魔王やったんや?」

「うーん、よく覚えてないの」

「我が主は今が最上! 常に史上最高を更新中である」

「俺が噂で聞いていた魔王は、極悪非道で勇者によって倒された。その配下も常に魔王の座を狙う殺伐とした奴らやって思ってたんやけどねー」


 イトラのその言葉に山王は目を細めて含みのある言い方をする。


「俺はどんな魔王だったの?」

「ええ……」


イトラは目を泳がせた。そして、キリッと顔を上げて断言する。


「魔王カラは不思議な方でした。力を誇示もせず、気づけばいつのまにか魔王として君臨していた。周りはいつもその自由さに翻弄されていました。しかし、カラクは比較にならぬほどの輝ける存在!」

「ああ……あいつは魔王なのに平和主義で世界征服もせず、いつも美味しい物を食べるのが好きだったな……めちゃくちゃ強かったのに……カラクほどの愛らしさや可愛らしい魅力は持っていなかったが」

「……うーん? 俺とそんなに変わらない気がする?」


 イトラとレフの言葉に、カラクはこてんと首を傾げた。生まれ変わる前の記憶は、とても混沌としていて、その時の自分自身の感情などは全く思い出せないのだった。


「まあ、良い。カラクは今のカラクが全てなのじゃ。どの者も、前世など気にせずともよかろう。今を生きるので皆、精一杯のはずじゃ。妾はカラクだけを好いておる。そなたの過去、ましてや前世などどうでもいいわ」


 饕餮が鼻を鳴らしてそういうと、ぴょんっと獣姿のままカラクに飛びついてきた。よろよろしながら、抱きとめてよちよちとカラクは歩き続ける。その言葉は、わずかに残る記憶を思い出そうとすると沸く、ざらざらするような不安な気持ちを軽く吹き飛ばしてくれた。



 次に向かう場所は、四天王の一人、アシュラが縄張りとする南平原という土地だという。


「あの者は変わり者で、貴族の人間のような姿をし、己が支配する土地を持ち、人間どもをその土地に住まわせているのです」


 イトラが人型に戻り、よろよろと歩くカラクの腕から饕餮を抱え上げ、説明をしてくれる。


「うーん、戦闘狂って言っていた?」

「ああ。あいつは誰よりも強い奴と闘うことが好きで、毎年、武闘大会を開いているんだ」

「ふぁっ!?」

「そして優勝者には南平原を全て渡すと言っているのですが、いつも決勝でアシュラが勝ってしまうそうです」


 カラクはシュッシュッとパンチの素振りをしてみるが、握り拳はとても小さく弱々しい。


「カラクもその武闘大会に出てみたらどうや?」


 にやりと山王はからかうように言うのを、イトラは睨みつける。


「とんでもない!! アシュラと対戦した者はほとんどの者が殺されるようです。カラクは既に最強、もし、あの者の命をご所望なのであれば、お手をわずらわせることなく、この私が戦いましょう!」

「やめてー」

「あいつとは、一度白黒つけたかったんだ! お前があいつの首が欲しいっていうのなら……」

「いらないのー」


 なんとか、イトラとイフには、穏便にアシュラと話をすることを納得してもらって、引き続き歩き出す。


「……ところで、南平原ってのは、どれくらいかかるん?」


 山王の問いに掛けにイトラは二本の指を立てた。


「二日間か……」

「いや、二十日です」


 その言葉を聞いてヨロヨロとするカラクを見て、イトラはふうっとため息をついた。


「我が主カラクのみを乗せるのであれば、今すぐにでもと考えるのですが。死ぬほど嫌ですが、カラクに辛い思いをさせるのであれば、この下賤な者たちごと私が運びましょう。死ぬほど嫌ですが」


 そう言って、イトラは銀色の鱗の美しい龍の姿に変わる。そして、どんどんと大きくなって小山のような大きさの姿となった。皆が問題なく乗れるほどの大きさだ。


「うわ~~、大きい!!」

『どうぞ、カラク。私の背中に乗ってください』


 イトラがそう言ってぺたりと頭を伏せるので、そっと、鱗を掴んで、カラクはよじ登っていく。


「きれい。キラキラの鱗は宝石のよう……」

「カラク」


 イトラの大きな銀色の眼が切なげに細められる。すると、レフが饕餮を抱えながら、山王とともに背中に飛び乗った。


「邪魔するぜ」

「ああ、嫌だ。やっぱり死ぬほど嫌です」

「俺だって嫌だぜ!」


 そうして騒ぎながらも、イトラは上空へと一気に飛び上がった。眼下の森は小さくなり、びゅんびゅんと風を切って空を翔ける。


「うわ~~、すごい! 空を飛んでるよーー楽しいの!!」


 その言葉に気を良くしたイトラは、どんどんと高度を上げ始めた。雲を突き抜け、目は見張るほどに真っ青な空に、カラクは歓声を上げる。


 イトラが魔法を掛けてくれているのか、吹き付ける風もなく、揺れに落ちることもない。一同は美しい景色を堪能したのだった。


 

次話より新章


第三章 『空虚をうめるもの』



山王 「カラク。魔方陣でどうしたん?」

カラク「ここまで応援してくれた皆に感謝の舞を踊って、感謝の気持ちを送ってるの」

山王 「うん? みんな? なんやこの魔方陣は電波でも受信するんか?」

カラク「愛は世界を超えるのー。みんな、俺を見失わないでまた応援してほしいの」

山王 「そうなんや。まあ、なんでもええけど……そやけど、カラク」

カラク「なーに?」

山王 「いや、やっぱええわ」

カラク「言ってほしいの。気になって夜眠る前に思い出すやつなの」

山王 「……カラクは音痴やな。舞やなくて、足でもつったんかと心配したわ」

カラク「……」

山王 「……ごめんやで。まあ、感謝は気持ちが大切やから!」

カラク「……」





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