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あくる日の王都

―――フィレリア王国・王都グレミア―――



 あくる日の朝、

 フィレリア王国・王都グレミア。


 フィレル山のふもと、

 王宮と軍施設の中間地点に設けられた、

 王国魔導科学技術院・機兵用実験場。



 現在、実験場格納庫において、

 「レゾナンス・エクス 計画」における重点試験のひとつ 、

 最新型ルーンリアクター”バベル・コア ”の出力実験が、

 行われていた。


 装置に固定された次期主力汎用機の試作機(プロトタイプ)

 その背部オーグメンター・ユニット(大型推進装置 )から、

 激しい火柱が噴出する。


「バベル・コア 、最高出力点到達!

 現在出力、定格比九十九・七 パーセントを維持しています! 」


 数多くの計器類が設置された

 パネルモニターの前に立つ中年の女性技官が、

 大きく声を上げた。


 それに続き若い男性技官からも、


「バベル・コア内部圧正常、エネルギー位相 に異常なし!

 各制御系統、想定レンジ内です! 」


 報告が飛ぶ。


 実験場全体を見下ろす監視室では、

 白く立派な(ひげ)を蓄えた壮年男性が、

 厳しい表情を崩さなかった。


 隣にいる細身の中年の男性魔導士も、

 

「あとは、この出力を、

 どれだけ維持できるかにかかっています。」


 厳しい表情で告げる。


「…うむ。」


 ひげの男性は多くを語ることなく、

 実験の推移を見守った。


 この(ひげ)の老人こそ、現職の王国魔法大臣、

 ”セベリウス・ダリオン”である。


――フォン!フォン!フォン!!


 しばらくすると、格納庫内に、

 けたたましい警報音が鳴り響いた。


「バベル・コア出力低下!

 定格値を下回ります! 」


「機体周囲から魔導エネルギーの流出を検知!」


 格納庫内は一気に慌ただしくなった。


 セベリウスの横にいる副官は、


「手順に従い、ルーンリアクターと機体間に、

 魔導障壁を展開します。」


 この状況に対し冷静に対応する。


 すぐに格納庫内の魔導士たちが、

 機体を取り囲み詠唱を始めた。


 状況が収まると副官はセベリウスに告げる。


「バベル・コア の出力と安定性、

 まだまだ課題があるようです…。」


「課題か…、しかしな…、

 そう悠長に待ってはおれんぞ、

 いつまでも帝国に()()をとるわけにはいかん。」


 セベリウスが重い口ぶりで話すと、

 二人の後ろから若い女性が口を挟んできた。


「今回、実験が行われているバベル・コア は、

 魔鉱石の圧縮率を高めた分、

 従来の王国製に比べて、

 約15パーセントの出力向上が見込まれる。

 だけど、その安定性に課題、

 実用化へ向けては、さらなる改善が必要ってところかな。」


 セベリウスと副官の二人が後ろを向くと、


「ミルファではないか!」「ミルファ様!」


「やっほー!」


 そこには、アルレオンの若き領主、

 ミルファ・ダリオンの姿があった。


「わぁー!

 これが次期主力汎用機の試作機(プロトタイプ)!!

 さすが王都の最新研究施設!」


「そんなことよりミルファ、

 どうしてお前がここにおるのじゃ…。」


「それなんだけどさ、

 じいちゃん!

 至急サラ王女に会いたいの!!

 お願い、取り次いでくんない!!」


「サラ王女に!?

 一体……どういうことじゃ?」


 戸惑うセベリウスに対し、

 ミルファは真剣なまなざしを向ける。


「”リゼル・ティターニア”

 っていう少年の命が掛かってる。」


「リゼル・ティターニア……。」


 それを聞いた横の副官が、

 セベリウスに告げる。


「確か……軍事裁判に王室が介入したという…、

 隻眼の少年ではありませんか。」


「隻眼の少年………、

 ふむ、演習林での襲撃事件、

 あの事件の…少年か。」


「そう…、そいつ。

 そいつのアルレオンでの決闘を、

 ()()()()()()()させなきゃいけないの!」」


「…決闘を…無効…!?

 ミルファよ…ずいぶんと面倒なことに、

 関わっておるようだな。」


「そのことは一旦置いといてさ、

 王女に会わせてくんない。」


「いくら儂とて、

 サラ王女との面会、

 すぐにとはいかんかもしれんぞ。」


「大丈夫、こっちには()()がある!」


 ミルファは肩掛けバッグから、

 一通の手紙を取り出す。


 セベリウスは手紙の封に目をやった。

 

「この手紙の封蝋…、

 ベルディアの印璽、

 ということは、差出人はサンダースか!?」


「うん、これがあれば少しは役に立つだろうって、

 サンダースから預かってきたの、

 詳しい事情は後で必ず説明するから!」


「そうか……それならば…。」


「じゃあ……?」


「急ぎ王宮へ向かう…ついてきなさい。」


「じいちゃん!ありがと!!」


 ミルファは勢いよく、

 セベリウスに抱きついた。

 

「お、おい…やめんか…!」


 戸惑うセベリウスだったが、

 その声はどこかうれしそうだ。


 そしてすぐに、

 二人は実験場格納庫を後にした。





―――アルレオン領・軍医療施設―――



 毒蛇に噛まれたデイニーが、

 軍の医療施設へ送り届けられた翌朝、

 サンダースは再び医療施設を訪れた。


「あの子は、寮へ戻らなかったのか。」


 施設の女性医務官へ、

 声をかけたサンダースの視線の先に、

 ソファで眠るリゼル・ティターニアの姿があった。


「はい、自分のせいだからと、

 動きませんでした。」


 サンダースの元へやってきた、

 初老の男性医務官が、


「帰って休めと伝えたのですが…、

 どうしてもここにいると、

 まぁ、こちらで簡単な食事などは用意しましたが、

 気づいたら、そこのソファで眠っておりました。」


 少し困った表情で伝えた。


「そうだったか……、

 ところでどうだ、バッケンハイムの容態は?」


 話題が変わると、

 初老の男性医務官の表情が険しくなった。


「お呼び立ていたしましたのは、

 まさにそのことでございます。」


「…話せ。」


 サンダースの表情も自然と険しくなる。


「基地にある全ての血清を試しましたが、

 どれも効果がありませんでした。」


「…………。」


 サンダースは大きく息を吐き、

 天井を見上げた。


「その後、ベルディア公が戻られた後、

 ……心肺停止となりました。」


「…………そうか。」


 サンダースは力無く返した。


「実はここからが、

 今回の報告の要点となります。」


「何か…あったのだな。」


 サンダースは、

 医務官へ鋭い視線を向けた。


「はい、心肺停止後、

 身体に異変が起こり、

 蘇生したのです。」


「生き返った……

 それならば良かったではないか、

 …違うか?」


「ただし、その異変というのが問題でして…。」


「もったいぶらず、さっさと結論を申せ!」


 サンダースは老医務官へにじり寄る。


 老医務官は、

 サンダースの迫力に押されながら、

 答えた。 


「姿を変えたのです、()()へと。」






―――王宮・王女サラリンドの屋敷―――



 アルレオン領主、魔法大臣、

 サンダース”ベルディア”ヒルからの紹介状。


 ミルファはあらゆる手段を用いて、

 フィレリア王国宰相”サラリンド・フィズ・フィレリア”

 との面会を果たした。


 ミルファと対面した王女サラの手には、

 サンダースからの手紙がしっかりと握られている。


「連絡がつき次第、

 サウール総督がこちらを訪れます。

 これで…よろしいのですね。」


「殿下の速やかな御采配、

 まことにありがとうございます。」


 ミルファは王女サラの迅速な対応に、

 心からの礼を伝えた。


 ミルファはまず第一関門を突破し、

 少しだけ緊張が和らぎ安堵感を覚えた。


 その時だった。


「サンダースは…どうしています?」


 今までの硬い王国宰相とは別人のような、

 女性らしいサラの声色だった。


 ミルファは正直ビックリしたが、

 表情を崩さず、そのままサンダースの近況を伝えた。


 サラはミルファからの報告を、

 一言一句かみしめるように聞いた。





―――アルレオン領・軍医療施設―――



「意識が戻りました!」


 ソファで眠っていたオレは、

 サンダースのおっさんに起こされ、

 デイニーの病室へ入った。


 デイニーは、おっさんを見たとたん、

 ベッドから起き上がろうとしたけど、

 手足が鎖でベッドと繋がれていて、

 起き上がることが出来なかった。


「こ、これは…どうして…。」


「すまない、必要な処置なのだ。」


 戸惑うデイニーへ、

 枕元の女性医務官が答えた。


「ベルディア公、

 バッケンハイム君を詳しく検査したところ、

 ()()()に…間違いありません。」


 「人狼!?」<人狼!?>

 

 オレとリゼルは、

 驚きを隠せなかった。


(ミルファの屋敷へ行く途中、

 デイニーがオレに話そうとしていたのは、

 この事だったんだ……。)


 オレは昨日の道中を思い出した。


 人狼と聞いても、

 おっさんは全く動揺を見せず、

 その報告を聞くと、

 デイニーのベッド脇へ腰かける。


「バッケンハイム、

 話を聞かせてもらおうか。」


 とデイニーへ声をかけた。


 おっさんの表情から、

 デイニーはこの状況をある程度理解したみたいで、

 自分の身に起こったことを話し始めた。


「あれは、半年ほど前の夜、

 人気のない湖畔の林で、

 自主トレーニングをしている時でした。」


 デイニーは天井を見つめながら、

 話を続ける。


「そこで…()に襲われました。

 今考えればあれが人狼だったのだと思います。」


 ここでおっさんが、


「そこで身体に幾つか傷を負った。」


 デイニーの話に割って入った。


「はい、一方的にやられました。

 しかし、人狼はオレの命までは取らず、

 去っていきました。」


「その後、どうしたのだ?」


 おっさんの問いかけに、

 デイニーは、


「このことをレリウス教官へ、

 報告しようと思ったのですが…。」


「しなかったのだな…。」


「はい…、その通りです。」


「まぁ、理由は容易に想像つく、

 この際だ、話してみよ。」


「門限を破って自主トレをしていたのは、

 その日だけではなかったのです、

 もし、それが全てバレたらと考えると、

 当然、成績に影響すると思い、

 教官には伝えられませんでした。」


「寮の管理人も…知っていたのだな。」


「襲われたことは伝えていません、

 ただ、管理人のモンザロームさんは、

 自分が遊んでいるのではなく、

 トレーニングをしていることを伝えると、

 門限はいつも大目に見てくれていました。」

 

「…………。」


「それから、何週間が経過して、

 また外で自主トレをしている時でした、

 全身が熱くなって、意識は混濁し、

 身体が…獣へと変わったのです。」


 その場にいるオレたちは、

 ただ黙ってデイニーの告白を聞いた。


「そうなってからは、

 懸命に意識を保つことだけに集中しました、

 気を抜くと、咆哮を上げ、

 暴れまわってしまうのです。」


「…………。」


「その日からは、内なる獣との戦いでした、

 興奮すると、この発作が起きるんじゃないかと、

 それを抑え込むために、

 授業にも集中できなくなっていきました。」

 

(だから……、

 デイニーの成績は良くなかったんだ。)


 オレは一人で納得する。


「そして、その状態が長く続くと、

 気が狂いそうになってしまって、

 時々外に出て、発散させていました。」


「人を襲ったのか!?」


 おっさんは言いながら、

 ベッドから腰を上げた。


「いえ、決して人は襲っていません!

 ただ姿を変え、

 咆哮を上げて暴れまわっていただけです。」


「あっ!あの時だ…。」


 オレは思わず声を上げた。


「真夜中…、

 窓から入ってくるのを見たのは。」


「ああ、あれは獣になって戻ってきた後だ…。」


 ここで、今まで黙って話を聞いていた

 女性医務官が口を開いた。


「今回は……、

 そのおかげで、命拾いをしたの、

 蛇の猛毒が利かなかったわけだから。」


「ど、どういうことですか?」


 デイニーはすぐに聞き返した。


 答えを返したのは、

 女性医務官ではなく、

 サンダースのおっさんだった。


「人狼の免疫システムが、

 蛇の猛毒に勝ったということだ。」


 おっさんはそう言って、

 もう一度ベッド脇に腰を下ろし、


「ひとまず安心せよ、

 現在、人狼症は治療が可能だ。」


 デイニーの肩を軽く叩いた。


「しばらくは、

 治療に専念してもらうことになります。」


 女性医務官が付け加えた。


 デイニーは何も言わず、

 ベッドで横たわったまま、

 天井を仰ぎ見ている。


 そこで、オレは黙っていられず、


「そ、それじゃあ、デイニーは、

 トーナメント戦、どうなるんですか?」


 つい口を出してしまった。


<タツヤ!?>


(ど、どうしても気になっちゃって…。)


 おっさんは女性医務官へ顔を向けた。

 

 女性医務官は困った顔つきのまま、

 首を横に振った。


「さすがに間に合わんようだ、諦めよ。」


 その瞬間、

 デイニーは顔をベッドから上げた。


「当然、その間の授業も…。」


「欠席となる。」


「……そうですか。」


 デイニーの落胆、

 オレたちにも痛いほど伝わる。


 オレは寮への帰り道、デイニーから聞いた、

 ”家族を支えるためにどうしてもパイロットになりたい”

 その思いが頭から離れなかった。

 

 リゼルがオレに話しかけてくる。


<デイニー……、

 パイロットを諦めなきゃいけないのかな…。>


「そんなのダメだよ!」


 オレはリゼルに答えたつもりが、

 声に出してしまった。


「どうしたのだ急に。」


 おっさん含め、ここにいる全員が

 オレのいきなりの発言にさすがに驚いている。


<ちょっとタツヤ何してんの!!>


 それはリゼルも同じだ。


「あ、いえ、その、

 ただ欠席するなんて、

 ダメだと思ったんです、

 だから補習とか、

 個別授業みたいなことはできないのかなーと。」


 オレは何とか必死にその場を取り繕う。


「補習か……、

 一般の学科ならば考えられるが…。」


 おっさんは腕を組んで考え込む。



「選抜クラスのリンド・ブルムです。

 落第者は普通に考えれば、退学、

 良くても転籍をしてからの休学ですよね。」


 デイニーは力無く笑った。


 きっと今できる精一杯の強がりなのかもしれない。


 そんなデイニーのために、

 オレは引き下がらなかった。


「どうにか、どうにかデイニーの

 パイロットへの道、残してくれませんか!」


 自分でも驚く発言をしていた。


「ティターニア…。」


「気持ちは、…わかる。」


 おっさんは目を閉じて、

 さらに考え込んだ。


 しばらくの間、沈黙が続いた。


 沈黙を破ったのは、

 サンダースのおっさんだった。


「一つわしに考えがある、

 バッケンハイムの話を聞く限りでは、

 もう一人の人狼、()()()がいるはずだ、

 そうだな?」


「はい。」


 デイニーは言われるがまま、

 返事をする。


 おっさんは、女性医務官へ、


「軍が保管する人狼に関する資料、

 病原サンプルをすべて調べよ、

 何かわかるかもしれん。」


 指示を出した。


「どういうことですか?」


 オレは率直に聞いた。


「人狼症は根絶されて久しい、

 自然に発生したとは到底考えられんのだ、

 確実に感染源がおる、

 そいつを捕まえれば、

 バッケンハイムが()()()だと、

 立証されると思ってな。」


 おっさんはゆっくりとベッドから腰を上げた。


「それとだ、バッケンハイムの

 リンド・ブルムでの処遇についても、

 悪いようにはせん、これで良かろう!」


 言いながら、

 サンダースは病室を出た。


「まったく、どいつもこいつも、

 わしを都合よく使いおって…。」


 廊下から、

 サンダースのぐちぐちと呟く声が聞こえる。


 リゼルとオレは、


「あははははは!」<やったー!!>


 おっさんの最後の態度を笑いつつ、

 素直に結果を喜んだ。


 デイニーはというと、


「…ありがとう…ございます。」


 天井を見つめる瞳から、

 一筋の涙が零れ落ちた。





―――王宮・応接の間―――



 ミルファはサラと一緒に宰相執務室から、

 豪勢な王宮応接間へと場所を移した。


 しばらくすると、

 人の動きが慌ただしくなった。


 サラの秘書官がこちらへ早足で駆け寄り、

 サラに耳打ちをする。


「同行者の中に、

 中央所属ではない、

 北の軍属の者が複数名見受けられます、

 いかがいたしましょうか?」


「…仕方ありません、

 いきなりこちらが呼びつけたのです、

 全員通しなさい。」


「かしこまりました。」


 秘書官が部屋から出てゆくと、

 硬く整った靴音が、

 少しづつ大きくなってくる


 足音が部屋の前で止まると、

 扉がゆっくりと開いた


 幾人もの従者を引き連れ、

 参謀総長”サウール・ポウジー”が姿を見せた。


「これはこれは、サラ王女殿下、

 おはようございます。」


 サウールは軍隊式ではなく、

 仰々しい貴族式の挨拶を選んだ。


 サラは立ち上がり、


「ポウジー閣下、

 いきなりのお呼び立て、

 申し訳ありません。」


 いきなり呼びつけたことを、

 率直に詫びた。


「こちらは、アルレオンの、

 ミルファ・ダリオン公爵です。」


 サラは続けて、

 ミルファを紹介した。


 ミルファはサラと同じタイミングで立ち上がり、


「ミルファ・ダリオン、軍籍は魔導少佐であります。

 ポウジー閣下、

 このたびの参謀総長ご着任、誠におめでとうございます。

 お目にかかれて光栄であります。」


 ここでは軍隊式の敬礼と挨拶を選んだ。


「これはこれはダリオン卿、

 北のサウール・ポウジーです。

 こうやって、きちんと御挨拶するのは、

 初めてかもしれませんな。」


「はい、まだ幼かった頃、

 両親とともにお会いして以来かと存じます。」


「そうでしたか。

 これからは、気兼ねなく、

 お付き合いください。」


 サウールは顔色一つ変えず、

 ミルファに答えた。


 ここでサラが、


「ここからは、どうぞ二人でお話ください。」


 と、切り出した。


 それを聞いたサウールは、


「なるほど、そういうことでしたか。」


 状況をすぐさま理解した。


 サラが席を外すと、

 セバスチャンや、サウールの取り巻きたちは、

 一斉に退室した。


 部屋に一人残されたミルファ。


 この状況がミルファの緊張を強めた。


 先に口を開いたのは、

 ミルファだった。


「ポウジー閣下にお願いがあります。」


「…………何でしょうか。

 その前に座りましょうか。」


 サウールは、しっかりと間を取って答えた。


 そして、二人は椅子に腰を落とした。


 着席すると、

 ミルファはさっそく本題に入った。


「先日アルレオンで行われた、

 ”機兵決闘”についてなのですが…、」


「それなら存じておりますよ。」


 今度はミルファが話し終わらないうちに、

 返答をかぶせてきた。

 

 ミルファは焦った、

 すでに()()()()()()()()()()()()かもしれない、

 もしそうだとしたら、

 処刑は何としても止めねばならない。


「先日の決闘、

 無かったことにしていただけないでしょうか!」



 王宮応接間が沈黙に包まれた。



 ミルファは今まで経験したことのない、

 重圧プレッシャーを、

 サウールから感じる。


(な、何なの、このイヤな感じ…、

 あいつら、次会ったら覚悟しといてよ!!)


 ミルファは脳裏に、

 ティターニアの顔を思い浮かべ、

 文句を言わずにはいられなかった。

 


「………良いでしょう。」


 サウールは軽い口調で答えた。


「えっ…!?」


 ミルファは自分の耳を疑った。


「よ、よろしいんですか。

 ドレ卿は、許さないとおもいますが…。」


 ミルファは自身の不安をそのまま口にする。


「聞こえませんでしたか、

 ”良い”といったのです。

 そして、なぜここで、

 ドレ卿が出てくるのです、

 卿が何と言おうと、決めるのは私です。」


 サウールはここでも、

 表情を全く変えることなく答えた。


「失礼しました。」


 ミルファは先走った自分が恥ずかしくなった。


 ミルファがうつむきかげんでいると、


「それから……街の修繕費用、

 こちらは、それなりの金額が必要なのではありませんか?」


 まさかのサウールからの逆提案だった。


「は、はい。」


 ミルファはさらに驚かされた。


「こちらもすぐに工面させましょう。」


「あ、ありがとうございます。」


 ミルファは間髪入れず礼を言った。


「ただし、条件があります。」


「条件…ですか?」


「実は…、

 ドレ卿から狩りに誘われているのですよ、

 この度の参謀総長着任の祝いとして。」


「それは…素晴らしいですね。」


 ミルファは何と答えていいかわからず、

 無難なあいづちを打つしかなかった。


「その狩りに、是非とも御同行願いたい。」


「狩り…ですか?」


「お嫌いですか?」


「嫌いっていうわけではないのですが、

 ただ経験がないものですから…。」


「構いませんよ、

 ならば、お教え致します。」


「あ、ありがとうございます。」


 ミルファこの誘いに乗り気ではなかったが、

 条件を考えれば引き受けざるをえなかった。


「条件は、本当にそれだけですか?」


「それだけです。」


 ミルファはなんだか、

 拍子抜けした気分だった。


「では、同行させていただきます。」


 そういうと、サウールはこの日初めて笑みを見せた。



 ミルファはサウールの見せた笑顔に

 言いようのない気味の悪さを、

 感じずにはいられなかった。











次回


王都から決闘無効の知らせが届き、

安堵するタツヤとリゼル。


だが――この決闘の裏に隠されたサウールの真意とは……。


『機導大戰ライデンシャフト』


お楽しみに!




◇◇◇◇◇◇◇

魔法大臣”セベリウス・ダリオン” ミルファの祖父

挿絵(By みてみん)


フィレリア王国宰相”サラリンド・フィズ・フィレリア”

挿絵(By みてみん)


新参謀総長”サウール・ポウジー” 北方領領主

挿絵(By みてみん)

◇◇◇◇◇◇◇


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


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