第1話 首都直下大地震
授業中の静寂の中、あの音は鳴り始める……
ウィーン!ウィーン!
緊急地震速報です。強い揺れに注意してください。
ウィーン!ウィーン!
緊急地震速報です。強い揺れに注意してください。
学校の授業中、生徒のスマホ、先生のスマホなどから一斉にこの音が流れた。
「みんな机の下に隠れろぉ!!!!!」
先生の一言で生徒は一斉に机の下へと隠れる。
その直後、
ドゴォォォォォォォン!!!という地響きと共に、今まで経験したことのないような大きな揺れが起きた。
女子の生徒の中には友達と少し笑いながら話してる生徒がいたり、男子生徒の中には地震を面白がってる奴もいたりした。
だが……そんな余裕を見せていた生徒たちも次の瞬間には、顔から笑顔が消える。
地震の揺れがさらに強くなって窓のガラスは砕け散り、教室の天井付近についているエアコンや扇風機、ライトなどが一気に落ちてきた。
その頃には机の下にゆっくりと座っていられる状況ではなく、机同士が激しくぶつかり合ったり、生徒も机の下から投げ出されていたりした。教室には地震による揺れの音や生徒の悲鳴が響き渡っている。
俺はそんな状況でも、自分の身の安全よりも先に考えていたことがあった。
「結衣……!!!」
俺の妹であり、たった1人の家族だ。今頃、中学校で授業を受けていたはず……心配だ。
俺が妹のことを考えていたら、急に体全体が浮遊感に包まれる。床が突然抜け、机も椅子も、人間も、全てが下へと落下していく……そう、学校全体が崩れ始めたのだ。俺たち高校2年生が授業をしていた3階の上には高校1年生がいる4階、音楽室と美術室がある5階、そして屋上がある。
俺は地面に叩きつけられるのを避けられないと察して、衝撃に備えた。
ドォォォォン!
鈍い音と共に俺は地面に叩きつけられた。全身に痛みが走る。俺は手足が動くか確認する。
「問題ないな、多少傷がついてるぐらいか」
俺は奇跡的に落ちてきた瓦礫や机、椅子などに当たらず、落下した衝撃のみで無事だった。まぁ打ちどころが悪ければもうこの世にはいなかったかもしれないが。
俺は冷静に周りを見てみる、周りは机や椅子が散乱しているし、壁や天井などの瓦礫が山のようにある。その下には下敷きになっている生徒が大勢いた。
地震の揺れはその頃には収まっていたがとても悲惨な状況だった。
俺はゆっくりと立ち上がり、周りの生徒のところに向かう。
「おい!大丈夫か?」
俺が落ちてきた近くにいた、隣の席の松山に声をかける……だが返事がない。
「死んでる……」
残酷な現実をこの時突きつけられた。だが、悲しんでいる余裕は俺にはない。この時の頭の中は妹のことでいっぱいだった。
どうか……どうか妹の結衣が無事でいてほしい。ただそれだけを願っていた。
俺は学校の瓦礫の中を進んで、多少被害が少ないと予想される校庭へと向かう。向かっている途中に何人かの生徒に声をかけるが全員返事がなかった。
少し進んでいくと、校庭に出た。校庭は周りのネットが倒れているぐらいで、そこまで大きな被害はなかった。
校庭の中心には5時間目が体育で外で授業をしている先生とその授業を受けている生徒がいた。そこから、声が聞こえてきた。
「悠真!無事だったのか!」
俺の名前を呼ぶ親友、佐伯晴人だ。
「晴人……そうか、5時間目体育だったのか、無事でよかった……」
「悠真、大丈夫か?妹の結衣ちゃんのこと考えてるだろ?」
「あぁ……心配で仕方がないんだ。俺はもう家族を失いたくない。失いたくないんだ……」
怖い、たった1人の家族を失うのが。
少し時間が経ち、俺らは生き残っている先生の指示に従いながら、余震に備える。
すでに電気とガス、水道は使えず、学校に備蓄されているものでの生活がこれから続くことが先生から説明された。それと、去年に改築工事をされた体育館は無事に残っているらしい。
「生徒のみなさんにはこれからここ、都立青葉高校の避難所設営を手伝ってもらいます。こんな状況ですが、みなさんで協力して頑張りましょう」
体育館を中心に避難所を設営することになると、その後説明された。
俺ら生徒たちは体育館へと移動する。
移動の途中、
「なぁなぁ悠真っち!俺っち、先生たちが話してるの聞いちゃったんだけどさ!」
こんな状況下でも騒がしく俺に話しかけてくるのは、もう1人の親友、立花颯だ。
「騒がしいな颯、お前この状況が分からないのか?」
俺は颯に言うと、
「分かってるぜそんくらい!だからこそ明るくしないとやってけないだろ?んで、そんなことよりも!今回の地震は東京を中心とした首都直下大地震らしいぜ!まじやべぇよな!」
首都直下大地震、30年以内に来る確率が70%とかって聞いたことがある。
「確かにそれは被害が大きそうだな……その情報は先生たちからって言ってたよな?」
「ん?あぁそうだぜ、それがどうかしたか?」
「今電気止まってるはずだよな、そんな情報どうやって手に入ったんだろうって思って」
「あぁ、そのことか。先生たちはラジオから聞いたって言ってたな〜」
「なるほど、ラジオか。それなら納得だ。」
ラジオは電気を使わないで使えるからだ。
「そういえば、晴人っちはどこにいるんだ?あいつのことだから絶対生きてるだろ?」
「あぁ、さっきまで一緒に居たんだけどな。いつの間にかどっか行っちまった」
俺と颯が話していると、
「いや〜すまんすまん!ちょっと向こうでおじいちゃんの荷物持つの手伝ってたんだ!」
晴人が走ってやってきた。
「さっすが筋肉ダルマ!こういう時は頼りになるな〜!」
颯が晴人に向かって言うと、
「うっせえ細メガネ!」
晴人が颯に言い返す。
「んだとぉ〜!?俺っちはただの細メガネじゃないですぅ!どっかのゴリラと違って頭のいい細メガネです〜!」
「んだとぉ!?俺だってどっかのメガネと違って筋肉もあるし、体力もあるぞ!」
颯と晴人が言い争っているのを俺は間に入って止める。
「まぁまぁ2人ともそこまで。どっちも得意分野があっていいことじゃないか。」
数秒の沈黙のあと、颯が言葉を発する。
「あぁそうだな、晴人っちの筋肉と体力の多さは頼りになる!」
続いて晴人が、
「まぁ颯もいいところあるもんな!情報とか知識だったら頼りにしてるぜ!」
とまぁいつもこんなくだりを俺ら3人はしている。今の状況下でもこんな調子なのは、いつもの調子でいないと不安や恐怖に押し潰されそうだからだ。それを俺らは察している。
「さて、晴人、颯。絶対生き延びような」
「なーに当たり前のこと言ってんだ?俺がいるんだ、なんとかなるさ!」
「そうだぞ〜、俺っちもいるんだぜ!俺ら3人がいれば無敵さ!」
晴人と颯が自信満々に答えてくれる。俺は頼もしい親友を持てて良かったと思った。
俺らはこの後、知ることになる。この地震がまだ始まりに過ぎなかったことを……




