後日談 3
後日談 3
王都にある大聖堂の控室。
「お嬢様、いかがですか?」
「ありがとう、とっても素敵だわ!」
「当然です。本日はお嬢様の結婚式ですもの!」
コレットの着ている純白のドレスはベルラインになっており、ふんわりとした薄手の布が重なっていて花弁のようだ。
腕と鎖骨の部分は白い繊細なレースになっており、梨の花が意匠として取り入れられている。近くで見ると、白いドレスの部分にもレースが続いていた。
腰の部分はフリルになっており、その下にある薄手の布にも、いくつもの大きな梨の花が繊細な刺繍として表現されている。
髪型も普段とは違い、首の後ろあたりで緩く団子状にまとめた上げられていた。
コレットの準備が整ったと知り、衝立から母親であるポワミエ伯爵夫人と弟のサロモンが姿を現す。
「まあ! とっても綺麗よ、コレット!」
「わあ! お姉さま、きれいです!」
伯爵夫人が笑顔でコレットを褒めると、続いてサロモンも拙いながら褒める。
「ありがとうございます。お母様、サロモン」
コレットは笑顔で感謝の言葉を口にした。
ロデールも耳を赤くしながら褒めてくれるだろうか。そう思うと、自然と笑みがこぼれる。
想像しながらコレットが少し頬を赤くすると、伯爵夫人の表情は切なげなものへと変わる。
「娘の花嫁姿を見ることができて、本当に良かったわ……」
「私も、お母様に見ていただけて嬉しいです」
母親の心情を察し、コレットはすぐに同意した。
伯爵夫人は高齢による出産で体調を崩していた。そこから快方へ向かい、今では女主人として社交や家政を取り仕切るほど回復している。
母親に花嫁姿を見てもらいたい。
娘の花嫁姿を見たい。
コレットと伯爵夫人の願いが叶ったのだ。
感傷に浸っているコレットに、ドアに待機していた使用人が報告する。
「お嬢様、旦那様とベルワーテ侯爵家の皆様がお見えですが、いかがいたしましょう」
「ええ、お入りいただいて」
入室の許可を出すと、ポワミエ伯爵とロデールを始めベルワーテ侯爵一家が部屋へと入る。
まず、口を開いたのは新郎であるロデールだ。
「コレット……とても美しい」
「ロデール様も、一段と凛々しくいらっしゃいますわ」
コレットの想像通り、ロデールは耳を赤くしていた。
そして、彼の耳と同じくらい、コレットも頬を赤くしている。
ロデールが着ているのは、明るい灰色のモーニングコート。光沢があるので銀色に見える。
スラックスもモーニングコートと同じ明るい灰色だ。
ネクタイは白みのある金色。中に来ているベストは白色で、実はコレットの着ているドレスと同じく、梨の花の刺繍が施されていた。
髪も普段より凛々しく、まとめ上げている。
少し離れたところで、ベルワーテ侯爵夫人は涙を浮かべていた。
「コレット……綺麗だわ……」
実の娘のように可愛がっていたので、感動もひとしおなのかもしれない。侯爵夫人の隣にいる侯爵も同意するように、深くうなずく。
だが、誰よりも涙を流していたのは、コレットの父親であるポワミエ伯爵だ。
「ああ、コレット……良かった……本当に……!」
「もう、お父様ったら……」
ジョイルに誘拐されてから、少し気弱になってしまった。普段は気丈に振舞っているが、コレットのことになると涙もろくなるのだ。
彼女が苦笑いをしていると、父親は涙でぐちゃぐちゃにしながら言葉を贈る。
「幸せになるんだぞ」
「はい」
コレットが答えると、伯爵はロデールへ体を向ける。
「ロデールくん、娘を頼む」
「お任せください!」
ロデールが力強く答えると、伯爵と固い握手を交わした。
「そろそろ時間だ」
ベルワーテ侯爵の声を合図に、主役の二人を先頭にして一斉に控室を出た。
そんな中、ロデールはコレットにだけ聞えるよう、小さな声で話しかける。
「コレット。互いに支え合って、一緒に幸せになろう」
「はい、ロデール様」
コレットも微笑みながら同意する。
二人の歩く廊下には、色鮮やかなステンドグラスの光で美しく照らされていた。
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