些細な親娘喧嘩
大体サブタイ通りの内容
あ、ラリーが父親として娘に何か教えてる(嘘は言ってない…かもしれない
ターミネーター達が彷徨く迷宮から脱出後。ハンヴィーの機動力によって、ラリー達は昼前にグラースルに戻る事が出来た。
ラリーは自分とビアーヌが宿泊してる宿へ娘のエレナも含めた"死人候補"から外れた少女達を連れて来ると、指揮官の如く告げる。
「今日1日はこの街に逗留して、明日の朝には列車でシェルドンへ向かう。飯は各自で好きに取って構わんし、飯代とか無いなら俺が用意する」
本来ならば、さっさとシェルドンに戻るべき所だろう。
だが、流石に50を過ぎた老体のラリーには些かしんどいモノがあった。
それ故に休息を得る必要があった。
ラリーの思惑を知ってか?知らずか?少女達が異論を挟む事は無かった。
そんな少女達にラリーは指揮官の如く問う。
「何か質問は?」
少女達から質問は無かった。
しかし、ビアーヌから質問が出た。
「良いの?直ぐにシェルドンに戻らなくて?」
指揮下にある部下として、悠長な予定を立てるラリーに尋ねればラリーは正直に答える。
「移動開始予定までは5日以上は時間に余裕があるし、救出が想定よりも早くに成功したんでな……だったら、今日1日を休息に使う方が合理的。そう判断しただけの事だ」
本来の予定ならば、シェルドンにて大司教であるトレモアスと言う協力者が身分証始めとした書類関係を揃え終えるのを待つ所であった。
だが、思わぬ幸運から救出対象であるエレナの居場所が解った。
その為、本来の予定であったシェルドンでの待機が無くなり、救出に赴く事になった。
そして、予定外の救出任務はラリーの想定した期間を大幅に前倒し出来た形で終わった。
それ故にトレモアスが設けた待機時間が5日以上残ってしまった。
こうした事情を知れば、ビアーヌは直ぐに納得してくれた。
だが、疑問が全て解消された訳ではない。
「そう言う事なら別に良いけど、彼女達はどうするの?」
「シェルドンに到着後、例の協力者に保護して貰う」
ラリーからエレナ達と言う余計な荷物をどうするのか?ソレの答えが返ってくれば、ビアーヌの中にあった疑問が全て解消される。
「ソレなら異論は無いわ」
ビアーヌが納得すると、ラリーはエレナ達に告げる。
「そう言う訳で、君達は夜まで自由行動とする。部屋は2人部屋を3つ確保するから好きに使え」
その言葉と共に解散となれば、ビアーヌと少女達はラリーの部屋を後にして行く。
だが、エレナは大事な用がある。そんな面持ちで残っていた。
そんなエレナに気付くと、ラリーは用の内容を薄々ながらに察しながらも面倒臭そうに問う。
「何だ?ソフィアとお前を棄てた事に対する17年分の文句でも言うつもりか?」
察している内容とは異なる事を問えば、エレナは「ソレは帰った後にブチ撒けるから」そう返すと、問うた。
「他の皆を殺さずに私達の様に日本へ帰す事は出来ないの?」
ラリーは心の中で「やっぱりな」と、予想通りの問いが投げられた事に対して呆れながらも否定で返した。
「無理だ。確かにお前とお前の友達は依頼人の温情から"死人候補"から救出対象に変わった。だが、他の連中は死人候補のまんまだし、ダーイシュみてぇなもんだから殺した方が手っ取り早く済む」
「どうしても無理なの?」
エレナが苦痛に満ちた面持ちと共に改めて問えば、ラリーは斬り捨てる様にして告げる。
「無理だ」
そんなラリーにエレナは娘としての立場を抜きにして懇願する様に言う。
「皆はこんな勇者召喚さえ無ければ、貴方と違って普通に生きていた。それに私達以外にも日本に帰りたい奴だって沢山居るだろうし、ソイツ等にだってママが私を愛してくれてる様に愛してくれる大事な人達が居るのよ!」
エレナが今にも泣きそうな面持ちで想いをブチ撒けると、ラリーはソレも斬り捨てた。
「泣き落としするつもりなら無駄だから辞めておけ」
「そんなつもり無いわよ!でも、草薙を名乗るクソ野郎さえ片付ければ、全ては済む話なんでしょ!?だったら、ソイツだけ殺せば良いだけで、他の皆を殺す必要なんて無いじゃない!私達は被害者なのよ!?それなのに殺されるなんてあんまり過ぎるわよ!!」
エレナが本心を込めてブチ撒けた言葉も正論と言えるだろう。
実際問題。草薙なるクソ野郎が実行に移さなければ、エレナ始めとした少女と少年達は普通に生きて、普通に死ぬのだから当然だろう。
そんなエレナに対し、ラリーは心の中で「俺の血を引いてる割にメッチャ善良過ぎないか?本当に俺の娘か?」と、困惑混じりに漏らしながらもハッキリ告げる。
「お前の言い分は筋が通ってる。まさに非の打ち所の無い正論と言っても良い」
「それなら……」
「だが、駄目だ。俺に依頼した依頼人はお前とお前の友達以外は"死人候補"扱いを辞める気は無いし、俺としてもダーイシュみてぇな死人候補なんぞさっさと皆殺しにするべきと感じてるし、既に9人殺してる」
ラリーから告げられた内容。特に最後の既に殺してる部分を耳にした瞬間、エレナはとても恐ろしいモノを見る様な視線を実の父親であるラリーに向けてしまう。
そんな視線を浴びてもラリーは涼しい顔で淡々と言葉を並べていく。
「依頼人が心変わりすれば、話は変わるんだろう。だが、暴力の世界で30年以上生きる俺は残念な事にダーイシュみてぇな連中に対し、慈悲を見せる奴を1度も見た事が無い」
その言葉にエレナは悍ましいモノを見る様な目を向けると、何か覚悟を決めたかの様な面持ちで尋ねて来た。
「アンタの依頼人はアンタが死んだ後、代わりの奴を寄越すの?」
エレナから覚悟を決めた面持ちと共に放たれた問いに対し、ラリーは口元に笑みを浮かべると愉快そうな様子で言葉を漏らす。
「成る程。そう来たか……マトモな育ちの奴なら、普通はその考えに至らない。いや、その考えすら思い浮かばないってのが正確だな」
実に愉快そうな様子で言葉を漏らしたラリーはエレナに向け、歓喜に満ちた様子でハッキリと告げる。
「認めよう。お前はソフィアと俺の娘だ」
ラリーの言葉と表情から察したのだろう。
エレナは沈痛な面持ちや悍ましいモノを見る目を一変させると、不愉快そうに問う。
「その様子だと私が何を考えたのか?察してるのね」
「当たり前だ。俺がお前の立場で、クラスの皆を助けたい。そう考えるんなら、同じ事を考える」
全て見透かされていた。
そう判断すると、今までの様子が嘘だったかの如くエレナは不愉快そうに言葉を漏らす。
「私の泣き落としやら何やらは無駄だった訳ね」
「お前ね、お前の目の前に立つ男は仮にも暴力と謀略に満ちた邪悪な世界で30年以上生き抜いてるんだよ?そんな男からすれば、お前の振る舞いは純情な奴ぐらいしか騙せない茶番。いや、この場合は猿芝居か?兎に角だ、お前の演技なんざ最初から解るんだわ」
エレナの目の前に居る父親。もとい、ラリー・ウェスティンと言う男はCIAに居た頃も含め、30年以上もの間ずっと暴力と謀略に満ちた邪悪な世界で生き続ける歴戦の猛者。
そんな歴戦の猛者からすれば、エレナが見せた全ての演技は猿芝居も同然でしかないのだ。
実の父親に見破られたエレナは猫を被るのを辞めるや、ハッキリと告げる。
「アンタが依頼人に助命嘆願してくれるんなら、私はアンタを殺さないでやる」
告げられた内容に対し、ラリーは呆れ混じりに指摘する。
「生命を握ってもいないのにそう言うのは場末のチンピラぐらいだ。そう言うのはな、相手の生命を握ってから使うのが一番効果的なんだ」
教師が生徒に。否、父親が娘に教えるかの様にラリーが指摘した。
それと同時にエレナは床を蹴るや、瞬時にラリーの目と鼻の先まで迫り、何時の間にか腰から抜いたナイフを両手で握り締めてラリーの腹に突き立てんとする。
だが……
「キャッ!?」
ラリーの腹に刃が突き立てられる事はなく、エレナは何が起きたのか?解らぬまま床に倒されて短い悲鳴を挙げていた。
床に倒されたエレナを見下ろすラリーは教師。否、訓練教官の如く評価し始めた。
「スピードとタイミング。それに狙ったであろう刺そうとしたポイントと両手で刺そうとした点は悪くない」
その言葉を聞きながら立ち上がったエレナは持っていたナイフを右手だけに握ると、再び床を蹴ってラリーに迫らんとする。
そうして、実の娘から殺されそうになるラリーは目の前に迫ったエレナから繰り出される幾つもの刃を躱し、時にはエレナの右手を自身の左右の手でいなしていった。
自分の刃がラリーに一切届かぬ事に対し、エレナは焦りを覚えた瞬間。
エレナのナイフが握られた右手の手首を両手で軽く握ると、ラリーは一瞬の内に軽く捻ると共に足を半歩だけ前に踏み出す。
ラリーが足を踏み出すと同事。エレナは右手首への痛みを覚えながら、場に崩れ落ちる様にして膝を着いてしまった。
そんなエレナの右手首を掴んだままのラリーは一瞬の内に背後に回り込むと、ナイフを取り上げて告げる。
「だが、若さ特有の無鉄砲さと日本の異世界モノにある様なチートに過信して俺に勝てる。そう判断した点は大きなマイナスだ」
何事も無かったかの如く淡々と評価を告げると、エレナは悔しそうな面持ちを浮かべてしまう。
そんなエレナを解放すると、ラリーはナイフを放り投げる。
そして、マトリクスのネオの様に腕を前に伸ばすや、手をクイクイとやって掛かって来い。そう告げた。
ラリーから誘われれば、エレナは直ぐに突っ込んだ。
突っ込んで来るエレナが右拳をラリーの顔に目掛けて突き出すと、ラリーはソレを左手でキャッチする。と、同時に掴んだ右拳をそのまま引っ張る。
突然引かれた事でエレナの態勢が崩れると、ラリーは半歩前に左足を踏み出して右膝をエレナの腹部に打ち込んだ。
「ゴフっ゙!?」
鈍い痛みと共に呻き声が挙がると、ラリーは躊躇いなくエレナの頬に右拳を打ち込む。
「がッ!?」
打ち込まれると共にエレナの口内が切れ、舌を血の味が支配する中。何時の間にか右手首から放した左手で拳を作っていたラリーは間髪入れず、鳩尾へブローを打ち込んだ。
「ガハっ゙!?」
エレナが苦しそうな面持ちとなれば、ラリーは淡々と告げる。
「若さ故の瞬発力がチートやらで強化されるのは確かに脅威と言って良いな。左手がメッチャ痛いし……だが、感情的になってるのも相まって動きが単調になってる。戦いは常に冷静な者が勝つ」
まるで子に教えるかの様に告げれば、息を整えながらエレナは冷静にラリーを見詰め、距離を取り始める。
「ほう。直ぐに冷静さを取り戻したか……其処ら辺はソフィアの血だな」
感心する様にラリーが言うと、冷静になったエレナは腹部に鈍い痛みを感じながらも然りげ無く周囲を見ていく。
そんなエレナを察したラリーは褒める様に言う。
「良いぞ。素手で敵わないと判断して、周りに勝利の為に利用出来るモノは無いか?捜す事は……」
褒めるラリーを他所にエレナは見廻していくと、ある物に目が止まった。
エレナの視線の先にある物……分解整備待ちの硝煙匂い立つ銃器を見ると、ラリーは直ぐに指摘する。
「見所は良い。だが、ソレを気取られない様に心掛けるべきだな」
言葉を以て使う事を制限すると、ラリーはエレナに問う。
「俺やソフィアは国が違えど、同じ事を教わってる。ソレが何か?解るか?」
唐突に問われると、エレナは首を傾げてしまう。
そんなエレナに向け、ラリーは答えた。
「答えは簡単だ。どんな手を使っても相手に勝て……コレに尽きる」
その言葉を実践するかの様にラリーは一瞬の内にホルスターからファイブセブンを抜けば、卑怯者!!そう罵りたがってるだろうエレナに銃口を向け、言葉を続けていく。
「卑怯者。そう罵りたくなる気持ちは解るが、負けはイコール死って状況ではクソの役にも立たんし、こうした殺し合いにルールなんてものは無い」
ラリーが指導するかの様に言うと、エレナは降参。そう言わんばかりに両手を挙げ、吐き捨てる。
「撃ちたきゃさっさと撃てよクソ野郎」
そんなエレナに対し、ラリーは銃口を下ろすや一瞬の内に持ち方を変えてエレナに差し出して来た。
エレナが恐る恐る近付いてファイブセブンを掴んで取ると、ラリーはその場にしゃがんでファイブセブンを掴むや、銃口を自らの眉間に押し当てて告げる。
「このまま撃てば、当然ながら俺は死ぬ」
「え?」
その言葉にエレナが困惑の声を漏らすと、ラリーは更に言葉を続けていく。
「俺が死ぬと、多分。否、間違い無く依頼人はプランBを発動させる」
「プランBって何?」
エレナが問えば、ラリーは真剣な面持ちと眼差しをエレナに向けて答えた。
「どんな方法で実行されるか?其処は流石に解らない。だが、お前等含めた召喚された連中だけでなく、この世界全ての生きとし生けるモノが死に絶える結果に終わるのが確実なのは保証してやるよ」
ラリーから突然言われた内容にエレナは言葉を失い、大いに困惑してしまう。
そんなエレナにラリーは狂気に満ちた笑みを浮かべると、更に言葉を続ける。
「保証してやる。そうは言ったが、この言葉が真実か?お前には確かめる術が一切無い。だから、俺を殺した後に依頼人がお前に鞍替えして仕事を継続する可能性もある訳だ」
突然迫られた選択に対し、エレナはどうすべきなのか?悩んでしまう。
そんなエレナの瞳をジッと見詰めながら、ラリーは無情に突き放した。
「お前が決めろ。俺を殺すか?俺を殺さずにクラスメイト達の死を受け入れるか?を……」
その言葉にエレナはファイブセブンを握る手をブルブルと震わせてしまうと、銃口を下ろしてラリーにファイブセブンを差し出すと沈痛な面持ちで告げる。
「私の選択が皆を殺した事を私は忘れない」
「どうやら本心からの言葉だな。さっきの様な芝居臭さが一切見当たらない」
ファイブセブンを受け取ったラリーはホルスターに戻すと、ネタバラシをした。
「あ、俺がさっき言ったプランBは嘘だ」
「ハァ!?」
思わぬネタバラシにエレナが間抜けな声を挙げると、ラリーは愉快そうに言葉を続ける。
「芝居をするならコレくらい上手く演じろ。良い教訓になったな」
「このクソ野郎!!」
エレナが吐き捨てると、ラリーは悪怯れる事無く言う。
「何時だったか見た、日本の昔のアニメにあったんだが……舌先三寸で死地から逃れる。コレ即ち、生き方。良い言葉だな」
全ての面で手玉に取られ、良いように踊らされたエレナからすれば不愉快極まりなかった。
そんなエレナに対し、ラリーは真実な面持ちで告げる。
「お前の選択を俺は尊重するし、責める点も一切無い」
「ふざけんな」
エレナがまたも不愉快極まりない様子で吐き捨てると、ラリーは優しい面持ちで言葉を並べていく。
「世の中。死体が無いと片付かない事が沢山あるし、綺麗事だけでは回らない。残念極まりない事だが、ソレが現実なんだ」
「ハイハイ、そうですか」
「そんな世界からお前を護る為にソフィアは母親として、俺の前から姿を消した。そして、俺はお前をソフィアの元へ帰す為にこの仕事を請け負った」
「私の為にクラスの皆を殺すとか感動のあまり、涙出そうね」
「お前にすれば当然の感情だろうな……だが、父親として言うのを許して貰えるなら、俺は他の連中が死んでもお前が生きて帰る事の方が良い」
ラリーが本心から想いを伝えれば、エレナは言い放つ。
「そんな事を言われたって嬉しくないわよ!クソ親父!!」
エレナは吐き捨てると、踵を返して歩き出す。
そんな娘の後ろ姿をラリーが見送ろうとすると、エレナは立ち止まって告げる。
「最初に会った時、クソ野郎って言ってゴメン」
それだけを告げると、エレナは今度こそ部屋を後にした。
独り残されたラリーは「ガラじゃねぇな」そうボヤくと、何事も無かったかの様に使った銃器の元へ赴いて分解整備を始めるのであった。
いやぁ、親娘のじゃれ合いは描くの大変だわ
エレナがラリーに勝てないのは経験値の差と言うべきか?技術の差と言うべきか?悩む(小並感
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