複雑な娘心
約1週間ぶりの更新
娘としては色々と複雑な心境なのよ
薄暗い中で耳を劈く銃声が響き合い、銃火の応酬が繰り広げられる中。
地面に横たわる様にして伏せるラリーは通路の縁から最低限露出し、正面から飛んで来る頭上を飛ぶ無数の弾を他所にバレットM107を撃ち続けていく。
バレットM107の銃声が響く度。右腕部に取り付けられた複数の銃身が束ねられた重機関銃を以て制圧射撃を敢行するターミネーター達の右膝が銃声と共に放たれたラウフォスMk211によって粉砕され、バタバタと倒れていく。
ターミネーター達の移動能力を奪ったラリーは急いでバレットM107からMk18に持ち替えると、ターミネーター達の頭上とも言える天井付近を飛ぶカミカゼドローン達へ銃口を向けて引金を引いた。
サプレッサーを介してくぐもった銃声が絶え間なく響くと共に一気に放たれた多数の5.56ミリNATO弾が弾幕となり、即席のCIWSとしてカミカゼドローンへと襲い掛かる。
即席のCIWS。または槍衾とも言える弾幕に襲われれば、カミカゼドローン達は成す術もないまま穿たれて撃墜され、地面に落ちていく。
そして、撃墜されたカミカゼドローン達は膝を破壊されて転がるターミネーター達を巻き込む様に爆発し、ターミネーター達を誤爆する結果に終わった。
そんな状況を他所に身を引っ込めて居たラリーはバックパックからバレットM107とMk18の弾倉を引っ掴むと、慣れた手付きで詰め替えていく。
程なくして弾倉を詰め替え終えると、ラリーは伏せたまま頭だけ出して様子を窺っていく。
視線の先には多数の残骸が転がっていた。
それらは全てラリーによって撃破されたターミネーターとドローン達であった。
そんな残骸を見詰めると共に耳を澄ませると、微かながらも奥から足音とローター音が聞こえて来る。
ローター音が近付き、大きくなって来るとラリーは直ぐにMk18を手に取って構え、待ち構える。
程なくして銃身を備えたドローンが複数やって来るのが見えて来る。と、同時にラリーは引金を引いた。
再びくぐもった銃声を連続で響かせ、即席の槍衾ともCIWSとも言える弾幕を浴びせてドローン達を撃墜すると、Mk18からバレットM107に持ち替えて構える。
それから少し遅れてターミネーター達がやって来れば、ラリーは即座に狙いを定めて引金を引いた。
砲声にも似た銃声が響き、派手な銃火が吐き出される度に放たれたラウフォスMk211が次々にターミネーター達の首を穿ち、喰い千切っていく。
そうして首を喰い千切られて頭が胴体から泣き別れると、ターミネーター達はバタバタと倒れて逝く。
未だ弾倉に弾が残るバレットM107を向けたままラリーはジックリと見据えると、そろそろ退却する頃合い。そう判断すると、急いで行動を始めた。
地面に散らばる多数の空の弾倉を急いで引っ掴み、バックパックに放り込んで蓋をして背負うと、Mk18を肩にかけてバレットM107を手に立ち上がって駆け出す。
その後は疲労が積み重なる歳老いた身体に鞭打ち、脇目を振る事無く一心不乱に全力で走った。
黙々と走り続けて今居る階層から上の階層へ移動したラリーは休む事無く、ひたすらに走り続ける。
50を過ぎた老体を鞭打ち続け、疲労が困憊してるにも関わらずラリーは延々と静かに走り続け、距離を稼ぎ続けた。
暫く走り続けて2つの階層を通り過ぎると、ラリーは其処で一旦休む事にした。
流石に積み重なる疲労が限界一歩手前まで来ていた。
若い時と違い、無理が効かない老体なのだから仕方ない事と言えるだろう。
荒くなった呼吸を数度の深呼吸と共に落ち着かせると、ラリーはターミネーター達が来るであろう後方を警戒しながらその場にしゃがみ、Mk18とバックパックを降ろしていく。
そして、バックパックの脇に取り付けられた大型の水筒を取ると、唇を湿らせる程度に一口飲んだ。
「ふぅ……流石に疲れた。歳は取りたくないもんだ」
唇を濡らし、喉を潤すと共に一息吐いたラリーは再び水筒に口を着けて水を飲んだ。
渇きを完全に癒してリラックスすると、ラリーはFASTヘルメットを脱いで頭から水を浴びていく。
そうして、物理的にも頭を冷やしたラリーは実の娘であるエレナと元カノであるソフィアの事に関して振り返っていく。
ブルーには当時の俺はソフィアを捜す気になれなかった。
そう言ったが、ソレは嘘だ。
実際はその1年と3か月後に見付けていた。
1年と3ヶ月後なのは優先すべき仕事が立て込んでて、捜すのを後回しにしたからに過ぎない。
ソフィアを日本で見付けた時。傍らには赤子が居て、ソフィアは幸せそうな表情をしていた。
会う気は元々なかった。
だが、当時の俺は赤子の父親が誰なのか?気になってしまった。
だから、俺はアイツが可愛らしい赤子と出かけて家を留守にした時。昔取った杵柄で忍び込んだ俺はベビーベットにあった赤子から抜けたであろう小さな毛髪を回収し、そのDNAを調べて貰った。
結果は俺と血縁関係のある。即ち、俺の娘と言う結果が出た。
その時に俺は自分に娘が居る事を知った。
俺は依頼を持ち込まれるずっと前……約16年と9ヶ月前から、自分に血の繋がった娘が居た事を知っていた。
だが、ソレでも俺はソフィアとエレナの前に姿を現そうって気にはなれなかった。
理由は単純だ。
俺は知り合いの居ない刑務所が地球上には無いって程の裏の世界の住人。まぁ、ソフィアも俺と同様に知り合いの居ない刑務所は無いが……
ソレでも、その時のソフィアは俺の同類とも言えるロクデナシから表社会に生きる母親に変わっていた事に変わりはない。
それに産まれた娘も明るい表社会に生きる真っ当な住人である事は変えようのない事実だ。
何れにしろ、住む世界が違う。
だが、一番の理由は俺みたいなロクデナシってのは愛する者を持ってはならない。コレに尽きる。
何せ、俺を殺したがってる奴はソレこそ昔の電話帳程に沢山居て、列を成してる。そう言っても良い。
そんな俺に娘が居るなんて知れれば、何が起きるのか?火を見るより明らか。
だからこそ、俺はソフィアとエレナの前に姿を見せない事を決めていた。
「まぁ、ソレ以外の理由も無い訳でもないんだが……」
ラリーはソフィアとエレナの事を依頼を受けるずっと以前……約16年と9ヶ月前から知っていた。
ソレでも父親になる道を選ばなかったのは、ソフィアが真っ当な世界で生きる母親になり、自分の娘であるエレナが真っ当なカタギだからに他ならない。
しかし、ソレ以外の理由も存在する。
だが、此処では割愛する。
閑話休題
短いながらも休息を取って溜まった疲労を和らげたラリーはFASTヘルメットを被り直すと、バックパックとMk18を背負った。
それからバレットM107を手に立ち上がり、再び駆け出して行く。
時折、後方を警戒してターミネーター達から追われてないか?確認しながら黙々と走り続けたラリーは漸く脱出を果たす事が出来た。
ダンジョンの外で警戒しながらも休んでいたビアーヌ達と合流すると、ラリーは自分を見詰めるエレナを含む少女達からの視線に恐怖と警戒心が混じってる事に気付いた。
「この様子だと、俺の仕事内容を知ってる。そう判断した方が良いか?」
その問いに少女達がビクッとする。
だが、エレナは違った。
「私達は殺害対象じゃない。そうなんでしょ?」
エレナの問いに他の少女達は恐怖の色を浮かべながら見守る中。ラリーはアッケラカンに肯定すると、淡々と事情を語っていく。
「そうだ。本来ならば、エレナ……君は元々の契約で救出対象に含まれていた。ソレ以外は殺害って条件でな」
語られた言葉に少女達がギョッと驚き、益々恐怖の色を増していく。
そんな仲間達を他所にエレナは問う。
「なら、私と行動していた皆が殺害対象から外されたのはどうして?」
その問いにラリーは吐き捨てる様に答えた。
「俺に依頼した奴の意思。ソレ以外に言いようが無い」
吐き捨てる様に答えると、ラリーはエレナが更に問おうとするよりも早く告げる。
「問答してる暇は無いぞ。さっさと移動するから来い」
問答無用。そう言わんばかりに告げれば、エレナ達は恐る恐ると言った様子ながらも後方を警戒するラリーと共に歩みを進めて行く。
数分後。
ハンヴィーまで来ると、ラリーはエレナ達へ「さっさと乗れ」そう命じた。
その言葉に従う様にエレナ達がハンヴィーに乗り込むと、ラリーは運転席に座り、ビアーヌと金子 彰は銃座に立った。
改めて皆が乗り込んだ事を確認すると、エンジンを始動させたラリーはサイドブレーキを解除してギアを入れると、アクセルを踏み込んでハンヴィーを走らせる。
森の中をディーゼルエンジンの重いエキゾーストを響かせて走らせていると、助手席に座るエレナが尋ねて来た。
「私達以外は殺害する。ソレを取り下げるのは出来ないの?」
その問いにラリーは態とらしく驚いた様子で問い返す。
「お前、本当に俺の娘か?俺の血を引いてるんなら、他の連中の事なんざ知ったこっちゃないだろ?」
人でなし感丸出しの問いにエレナは笑って返す。
「良かったわ。私がアンタみたいな奴じゃないって確認出来て」
実の娘から敵意剥き出しの答えが返って来れば、ラリーは真剣な面持ちを浮かべて告げる。
「無理だ。連中はダーイシュの同類で、依頼人を大いに不愉快な気持ちにさせてる。現に俺も俺でお前のクラスメイトが村を焼いて、愉しそうに女を犯してるのを実際に確認した。10年前のシリアでダーイシュがしてたのと瓜二つだった」
ラリーの答えにエレナばかりか、金子 彰も含めた少女達が絶句してしまう。
そんな少女達へ追い打ちを掛ける様にラリーは更に続けて告げていく。
「何日か前に殺した野郎なんざ、夥しい数の死者を操って俺を襲わせて来た。その死者の中には民間人と思わしき女子供も居た。日本人ってのは、死者を敬うと思ってたんだが違うのか?」
ラリーから告げられた内容にエレナを始めとした少女達は言葉を完全に失ってしまう。
そんな中、銃座にウンコ座りして話を聞いていた金子 彰がラリーに尋ねた。
「本当なんですか?」
その問いにラリーは吐き捨てる様にして返す。
「お前等に嘘を吹き込んだ所で俺にメリットは無い。まぁ、コレ自体が嘘って可能性も否定出来ないのは認めるがな……」
ラリーが余計な事を言うと、今度はビアーヌが金子 彰の様にしゃがんで皆に告げて来た。
「生憎と彼の言葉は真実よ。貴女達の同胞は平和に生きる隣国を侵略し、大勢の人達を虐殺したし、その内の1人……トージョーは世界征服を企てていて、何人かは乗り気だったわ」
ビアーヌから告げられた内容に信じられない。そう返したかった。
だが、エレナ達はクラスメイト達がおかしくなっている事を薄々ながらも感じていた。
だからこそ、元の世界へ帰る方法を捜す目的も含め、あの王城から去るのを選んだのだ。
そんなエレナ達へラリーは告げる。
「本来なら、俺の依頼人は君達を直ぐに送り返すつもりだった。だが、君達の召喚には不可解な点が存在するばかりか、君達の中に召喚を目論んだ首謀者が居る事も判明してしまった」
其処まで告げると、エレナは確認する様に問う。
「その首謀者は草薙 仁って名乗ってたりしない?」
エレナから出た名前に少女達ばかりか、ラリーも驚いてしまった。
「何でソレを知ってる?」
ラリーが当然の様に問えば、エレナは答える代わりに皆に尋ねた。
「ソレを答える代わりに……ねぇ、皆は草薙 仁がどんな奴だったか?覚えてる?」
唐突ながらもエレナから改めて問われると、少女達は草薙 仁がどんな生徒だったか?思い出そうと首を傾げていく。
暫く考えても思い出せない事に唯一の男子である金子 彰も含めて少女達が益々首を傾げ、困惑するとエレナはソレが当然の様に言う。
「そう。皆の様に私もどんな奴だったか?思い出せなかった。普通なら、何かしらの形で記憶に残ってる筈なのにね……」
蛙の子は蛙。
そう言わんばかりに記憶力と頭の回転。それに何かを嗅ぎ付ける才をエレナが見せれば、ラリーは何処か嬉しい気持ちになりながらも尋ねる。
「ソレが確信に変わったのは何時だ?」
「私達を召喚した奴等が私達に奴隷の首輪とやらを用意して来た時。草薙 仁はスキルとやらでコレは奴隷の首輪と言って来たわ。その時、私を含めた東條達に反乱を持ち掛けて来た口調とか振る舞いが……何て言えば良いのかしら?」
エレナが何と言えば、良いのか?解らずに首を傾げると、ラリーは助け舟を出すかの様に問うた。
「手慣れてる。でもって、ソイツ自身は反乱時には安全圏でほくそ笑んで居た……そんな感じか?」
ラリーが代わりに言語化すれば、エレナは腑に落ちた。そう言わんばかりの様子で肯定した。
「そう!そんな感じ!」
スパイとしての教育や訓練を一切受けていないにも関わらず、エレナがスパイとしての才の片鱗を見せると、ラリーは呆れ混じりに感心してボヤいてしまう。
「お前の場を読む力は俺の血か?アイツの血か?迷う所だな……」
そんなボヤきを漏らすと、ラリーは話を戻す様に告げる。
「さて、話が大きく脱線したが……兎に角だ。依頼人は君達のダーイシュめいたクラスメイトに死んで貰いたいし、首謀者である草薙 仁なる野郎にも死んで貰いたい。で、君達はダーイシュめいていないから殺さずに済むなら殺さずに帰してやりたい。其れ等が依頼人の意思だから俺は君達を元の世界へ帰れる様に尽力する立場にある以上、君達が敵対行為や依頼遂行の妨害をしない限りは殺害対象にはならない訳だ」
長々と告げられた内容を聞いたエレナを始めとした面々は複雑な心境となり、表情にも浮かべてしまう。
そんな面々に対し、ラリーは何処か他人事の様に言う。
「俺に殺されずに済む上に、俺が仕事を完了させた後に家に帰れるんだ。少しは喜べ」
「アンタみたいな奴なら喜ぶんでしょうけど、生憎と私達はアンタみたいな冷血で非情じゃないから素直に喜べないのよ」
不愉快極まりない。
そう言わんばかりにエレナが言えば、ラリーは「お前のママはお前を見事に真っ当な人間に育ててくれたみたいだな」そう茶化した。
そんなラリーに対し、エレナは売り言葉に買い言葉と言った様子で「アンタみたいなクソ野郎が父親なんて此方から願い下げよ」と、吐き捨てた。
だが、エレナの言葉からは18年分の寂しさを取り戻す様な感情があったのを2人の遣り取りを目の当たりにする少女達は感じていた。
「エレナ、何か嬉しそうだったりしない?」
「うん。何か、今まで居なかったイケオジのパパさんに戯れる子供みたい」
双子……飯島 美樹と飯島 由紀が言えば、長谷川 千束も同意見と言った様子で漏らす。
「ずっと会えなかったパパに会えて嬉しそうに感じる」
少女達が他人事と言わんばかりに言えば、エレナはムッとした様子で吐き捨てた。
「誰がこんな18年も育児放棄しやがったクソ野郎に会えて嬉しいと思うのよ!」
エレナが吐き捨てれば、それを茶化す様にラリーは告げる。
「俺もこうして君に会う事になってしまって、実に残念な気持ちで胸がいっぱいだ」
茶化す様な態度のラリーにエレナは吐き捨てる様に言う。
「アンタが残念な気持ちで胸が張り裂けそうってんなら、最高の気分よ」
普段のエレナは大人びて物静かな雰囲気で、指揮官としての振る舞いも素晴らしいレベルだ。
しかし、今のエレナは子供っぽい様子があり、普段ならば絶対に見る事が出来ないだろう姿に少女達はずっと会えなかった父親に会えて、嬉しい気持ちなんだと……
そう、感じるのであった。
後書きというか解説めいたモノ
前も言ったけど、ラリーとソフィアと言う2人の凄腕の娘ちゃんであるエレナはある意味でサラブレッドなのよ
だから、両親譲りの場を読む能力や記憶力やら頭の回転やらがあり、草薙 仁なる人物に対してこんな奴居たか?から始まってコイツは危険と判断出来たし、周りに流される事無くおかしくなってくクラスメイト達を尻目に仲間を集めてさっさと脱出を図る事が出来たって言うね…
あ、金子 彰含めた他の少女達も周りのクラスメイト達がおかしくなってるのを何となく感じていたよ…だからこそ、エレナの誘いに応じて帰る方法捜しに出た
勿論、日本に帰りたいって意志も強く存在してる
ソフィアに関してはラリーを愛し、娘を愛してるからこそ姿を消すって選択を母親として選んだ
で、ラリーはその選択を察すると共に尊重して絶対に姿を見せない事を選んだ
要するにお互いに距離を取り、交わらない様にするのも1つの愛って事(赤面しながら




