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三十六話 影


 久しぶりにローワンがココレットの元へと訪れるとの知らせを受け、ココレットはシシリーと共に気合を入れて準備をしていた。


 会うのはとても嬉しい。けれどそれと同時に、ココレットは不安も抱いていた。


 ココレットは、大きく深呼吸をすると、自分が決め他の事なのだからと気合を入れる。


「お嬢様ぁ。とてもお美しいですー!」


 ココレットは髪の毛を結い上げるシシリーに苦笑を浮かべた。


「ねぇ、そのシシリーって一体誰をモデルにしたの?」


 その言葉にシシリーは小首を傾げた。


「何をおっしゃっているんです?モデルなどおりませんよ。私はこのお屋敷に使えるただのシシリーでございますから。」


 つまり、楽しく人間になりきっているのだなとココレットは呆れ顔を浮かべながらも、シシリーのおかげで力が抜けたのであった。



 その頃、客室の一室にて、ローワンは執事のロンに紅茶を入れてもらいながら、話をしていた。


「以前私に依頼してきた女が、今、ココレット様を狙っているとの情報が入っています。」


 香り豊かな紅茶を、ローワンは一口飲むと、難しい表情のままため息をついた。


「・・他に、何かあるか?」


 ロンは静かな口調で話を続ける。


「ドラゴニアの国王は十六年前に亡くなった聖女様に異様な執着があるとか。手に入らなかったのはヴェールガのせいだと恨んでいるようです。」


「聖女様か・・・確かに、ココレットの力は聖女様と近いのかもしれないな・・・」


 噴水の水全てを聖水に変えてしまうほどである。


 ローワンはロンと情報を共有しながら、今後どうしていくべきか、頭の中で思案する。


「まだ正確な情報は入りませんが、ドラゴニアに竜神が現れ、次期国王を指名したとか・・ただ、現在それはドラゴニアでもめているようで、正確な情報はまだ入って来ていません。」


 ダシャの姿を思いだし、ローワンは眉間にしわを寄せる。


 その時であった。爽やかな風が部屋を吹き抜けたかと思うと、部屋がノックされ、可愛らしく着飾ったココレットが入ってきた。


「ローワン様!今日は来て下さってありがとうございます。」


 可愛らしい笑顔を向けられたローワンは、ふっと表情をほころばせると、ロンに話はここまでと視線で伝え、二人だけのお茶会が始まる。


「ココレット、今日も可愛らしいね。」


「ふふ。ありがとうございます。」


 しばらく話をした後に、二人は庭へと出ると、綺麗に咲く花の庭を歩く。


 今日は魔法使い達は王城で仕事があるということで誰もいない。


 ココレットは、笑顔で話を聞いてくれるローワンに、静かに覚悟を決めたように口を開いた。


「ローワン様。私、貴方に言わなければならないことがあるの。」


 真っ直ぐなその視線に、ローワンは足を止めるとココレットの方を見返す。


「どうしたの?ココレット。」


「・・・私・・実は・・・」


 震える手を、ココレットは抑えた。


 過去を清算すると決めた。そしてそれは今目の前にいる婚約者にも話をしておかなければならない事である。


 そう思い、覚悟を決めて口を開こうとした時であった。


 突然、黒い霧が辺りに広がり始め、ローワンはココレットを引き寄せると辺りを見回した。


「何だ!?」


「ローワン様!?・・これは・・・」


 黒い霧の中に影が幾人も現れ、そしてその手には剣が握られている。


「何者だ!?私をこの国の王子と知っての狼藉か!?」


 影達は揺らめくようにローワンへと攻撃を仕掛ける。ローワンはココレットが狙われている事を悟ると、その体を抱き上げて、一歩下がると剣を構える。


「・・・狙いはココレットか。」


 影達は瞳をぎらつかせると、ローワンへと一斉に切りかかった。




 



 


 


 

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