三十五話 ドラゴニアの王
ドラゴニアの現王であるザダールが産まれた時、彼は竜神の力を少ししか身に宿していなかった。十八人いた兄妹の末っ子で、そして力も一番下だった。
力の優劣を知るのは国王くらいのものだったが、そんなザダールが王から目を掛けられるわけもなく、王宮の端にて出来そこないの王子として生活をしていた。
ザダールは何故自分が大切にされないのだろうかと疑問に思ったのは、十歳になった時であった。そしてそれからは年々自分こそが認められるべき王子だと尊大に育つ。
そして、彼が十四歳になった時、隣国ヴェールガへと訪れた際にザダールは見た事もないほどに美しい少女と出会う。
”聖女様”としてあがめられる少女は陶器の人形のように美しく、ザダールは心を奪われた。
「あれが欲しい。」
ザダールも王族である。欲しいと言えば手に入らないものなどなかった。
けれど、それは初めて手に入らないモノであった。
「お、王子殿下、それは無理でございます。」
「聖女様はまだ幼く、その力も絶大とか・・そんな聖女様をヴェールガは手放す事などないでしょう。」
「何だと?!この役立たずが!」
「も、申し訳ございません!」
それからはどうやったら聖女を手に入れられるかを考えて生きるようになった。
まず手始めに始めたのは、王位を手に入れること。欲のない兄妹が多かったことから、王位を手にすることは容易かった。手こずったのは一番上の兄くらいだったが、その兄も、不治の病によって死んだ。
そう、ダザールの邪魔となった者達は、不治の病、不慮の事故、として、始末されていった。
臣下達はこぞってダザールへと少しでも聖女としての力を持つ娘がいるとダザールの元へと差し出したが、どの娘もあの、ヴェールガの”聖女様”のような光は感じられない。
あれが欲しい。
どんな手を使っても。
けれど結局手に入れる作戦は失敗に終わり、手に入らないのならばとダザールは暗部を使い、”聖女様”には永遠の眠りについてもらった。けれどその日からドラゴニアに聖女が現れることは無くなり、そればかりかダザールは体が常に気怠く、睡眠不足に悩まされるようになった。
「くそっ!・・糞が!ヴェールガの呪いか!?」
ダザールは逆恨みから、ヴェールガ王国の崩壊を望み、暗部を使って最近では第一王子暗殺を企てていた。だが、それも未遂に終わり、跪く暗部の女に酒瓶を投げつけた。
「・・・役立たずめ・・・」
「も・・申し訳ありません。ですが、ヴェールガの任務の協力者である男から有力な情報を得ました!」
「何だ?」
「・・男爵家の屋敷に、不思議な力を持つ庭があるとか・・・」
「なんだと?」
「・・その庭にて採取された植物を使って第一王子は救われたそうです。」
ダザールはその言葉に目を輝かせると立ち上がった。
「帰ってきたのか・・・聖女様が・・・くそっ!なんでまたヴェールガなんだ!殺せば次こそは我が国へと生まれ変わると思っていたのに!くそっ!」
ドラゴニアでは魂は輪廻転生を繰り返し、そして求める者の所へと生まれ変わると信じられていた。だからこそ”聖女様”を求める自分の元へと生まれ変わってくると信じていたのにと、裏切られた感覚を味わう。
ダザールはいら立ちをあらわにするが、昔を思いだし表情を和らげるとクスクスと笑い声を上げる。
「懐かしいな・・あの神官の小僧が・・・こそこそと聖女の薬草を売っていたことが昨日のことのようだ。」
常に見張りを聖女につけていたダザールは、ヴィシアンドルの行ってきたことや、売られていた薬草にまで詳しかった。
それほどまでに”聖女様”に執着をしていた。
「”聖女様”を我が国へとお連れしろ。」
その言葉に女は体を震わせながら言った。
「で、ですが、その男爵家にいる令嬢は・・第二王子の婚約者で・・・」
「関係ないだろう?・・しっかり、処理し、”聖女様”をお連れしろ。」
「は・・はい。陛下・・その、伝染病らしき病については・・どうされますか?」
「ん?そんなもの臣下に任せておけ。」
「は・・はい。」
女はその言葉に頷くと、部屋から下がる。
ダザールは嬉しそうににやりと笑みを浮かべる。その時、雷鳴が轟き、天から煌めく光が降り注いだ。
「何だ?・・」
その光景は美しく、民は皆、空を見上げた。
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