034 『帰路その1 「あんたは犬かー!」』
■春の一月、八の日 其の六■
馬場和子です。
魔獣肉が美味しいので魔獣飼いたいですね。
飼育してみます!
出立の手続きを終え、都市を出ると裏へぐるりと回ります。
馬車が想定した以上の人数になってしまいましたね。交代で歩きます?
時は金なりなので馬を1頭借りました。要返却ですが、トンボ返りしますので返却は可能です。
そして・そして、姫さまの陰謀がまたしても発動するのです。
「ハ~イ~スピリアルさん乗ってください。次~サイカさんも落ちないように後ろに乗ってください~」
「男同士になるのはアレだが俺達で交代しようか?」何を余計なことを言うんですかーライズさん。姫さまの行為を無碍にするのです?
「えっ、えっとー、そうか、そうだな。それがいい、そうしよう。名案だ……そんな気がする」何をシドロモドロになってるんだか? 振り返るとにこやかに姫さまが笑っています。
「サイカ姐を落とさないようにお願いしますねー」
「そんな無茶な。しっかり捕まってください!」
「サイカ~そんな裾だけ持ってても落ちるよ~」あー黒姫です、黒い姫さま降臨です。
あとで根掘り葉掘り聞きましょうねと頷き合うあたし達でした。
「それはそうとよ~こんな配置で大丈夫なのか?」
何がでしょう? 馬車の後ろからライズさんが声を掛けてきました。
「普通よぉ、戦える人間が前と後ろに付いて警戒するもんなんだがなぁ」そうなのです?
「だってよぉ、魔物とか出たら直ぐに対処しにくいだろうがぁ」
「えっとー遭ったことありませんよ?」魔物どころか人も通りませんしね。
「そんなはずないだろぉ。冒険者達にはこんな格言があるぜ? 半日もあるけば魔物に当たる」
ライズさん何ですかその格言? そんな安っぽい諺は。看過できません。
「他にもあるぜ? 一匹見つけたら十匹いると思え!」
なるほどー。そうですか。
「では、例外を除いて一匹も出会っていないので一匹も居ないのです!」アレが10匹も居たらヤバイです。
そもそもですねー。戦って勝てるのなら遭ってみたいです。出来ればですけど魔物じゃなくて、魔獣。さらには魔獣より獣がいいです。
「そんなのんきによぉ」
でも事実ですよね? 姫さま。
「ごめんね~カズコ」
「ん? 何をでしょうか? 告白ですか??」
「むぎゅ~ぅ」綺麗に全員一致でスルーされたので悔しくて声が出ました。
「ああー威圧石の件ですか? お気になさらずにー」
その後、姫さまに促されて威圧石の説明を行います。
「威圧石って知ってますか?」
「たまにダンジョンから抽出されるアレだろ?」
そうなのです? 振り返ると全員が頷いているようです。へ~そういうアイテムなのですね。知らないのはあたしだけです?
「そのなんだかレアな石が、馬車のココに搭載されていますので安心かと思います」
「いざとなれば投げますしー」
「え、投げるのか?」男性陣が不思議そうな顔をしてあたしを見ます。
「だって、威圧できない魔物が来たら危ないでしょ?」
「威圧できない魔物がどのようなものを指すのか、知りたくもないな!」
「そうなのです? 威圧できないどころか、逆にイラついて威圧石自体を襲ってきますよ」
「投げれば事は収まるのか? で? その石を飛ばすのは誰の役目なんだ??」
「近くにいた人でいいのでしょうけどー。一度、誰が一番遠くに飛ばせるか実践してみますか?」
「威圧石なげるの?」スピリアルさんが馬を寄せて、訪ねてきます。
「いえ、投げるのはその辺に転がっている石でいいと思いますよ?」
「ここはひとつ姫さま! お願いします」
馬車を止め姫さまが手ごろな石を拾い上げると、ベルトを外し石を仕込みます。
ベルトのバックルに石を仕込むとスリングという武器になり、姫さまはグルグルと回し始めます。
回転速度が一定以上上がらなくなったところで、姫さまが最後の勢いをつけます。
「けっこう~飛ぶのよ~」パッと石が放たれます。
「とるのよ~!」なっ!?
姫さまのカバンから飛び出したアシュリーが投擲した石に追いつき、キャッチすると戻ってきました。
「エヘン! なのよー!」アシュリーは誇らしげに両手で石を抱え上げます。
「あんたは犬かー!」思わず大声をあげてしまうあたしです。
アシュリーが途中キャッチした石を受け取り、それをライズさんに渡します。ん? どうしたのです?
「おまえんとこはピクシー飼ってるのか!?」
「ああ、いえいえウチの住人ですよ?」
「「「「はぁ!?」」」」声が大きいですよーもう。
「この子はウチに迷い込んできたピクシーのアシュリーです。ほら、挨拶なさいー」
「なのよー!」いや、挨拶! まぁ挨拶みたいなものか……。
「ちょっと意思の疎通が大変ですが悪い子じゃないので……」
「つぉいのよー!」
一同、目が点になり・口があんぐりになっています。どうしたのでしょうか?
「そんな希少な高価な物を投げるわ。ピクシーが住人だわで……混乱してる」とはライズさんの談です。
価値観に大きな開きがあるようですねー。
「あッ! そうだ!」
「アレ! アレはベヒモスなので近づかないでくださいね」
見覚えのある山を見つけたので指差しておきます。
□カズコの後書き□
人は信じたくないものを信じないようです。
冗談はいいますが嘘はつかないのですがね……。
■目標レベルと現在の数値■
総人口:19
総人口レベル:48
次 回 目 標:62
最 終 目 標:65534
正直に言います!
アシュリーが早すぎて……見えませんでした。




