最期話、あなたと一緒に。
窓から暖かな日差しが差し込んだ。照らされたのは人肌の消えた冷たい布団と、ただ呆然と横たわるだけの私。
「…ダーリン、おはようって言ってよ。」
まだ眠り眼のまま彼へと手を伸ばした。はずだった。
もうそこには誰もいない。毎朝おはようと微笑みかけてくれた彼の姿はない。
「…そっか。」
私は今にも溢れ出しそうな気持ちを抑えて、そっと独りで呟いた。
仕方の無いことだ。だって、それが運命なんだから。
重たい身体を起こしてみたけれど、歩くどころか、立つ気力すらも消えていた。
ただ布団の上に力なく座り込んだまま、ぼーっとカスミソウに寄り添うシオンの花を見つめていた。
「…もう会えないんだね。」
現実は残酷だ。いままでたくさんの人の死を見届けてきたはずなのに、慣れていたはずなのに、それなのにこんなにも辛くて、痛くて、胸が苦しくなって…
…あれ、私はなんでたくさんの人の死を見届けてきたんだっけ。
このまま居るのはまずいと思い、とりあえず窓を軽く開けてみた。肌を鋭く刺すような冷たいそよ風が私の身体を包み込んだ。
その時、1枚の葉っぱが部屋の中に入ってきてしまった。
「あっ、いけない…。」
私はその葉っぱを追いかけて、そっと捕まえた。
「よし、捕まえた。」
その時、ふと影の中に佇む箱に気づいた。
「これ…なんだろう?」
箱を開けると、萎れた2本の薔薇が入っていた。
”だめだよ、泣いたら”
”いつも笑顔で居て”
「………どういう事なの、ダーリン?」
その時、ふと昨日貰った5本の薔薇のメッセージと、この2本の薔薇のメッセージを並べてみた。
”だ れよりもきっと幸せになれたよ”
”い つも笑顔で居て”
”す ごく幸せだった”
”き みと居られた7日間”
”だ めだよ、泣いたら”
”か なしくなったら、僕を忘れて”
”ら くになれるなら、それでいいから”
「………だから、何なの…?」
「教えてよ…ダーリン。」
そのメッセージに気がついたとき、私は溢れ出す感情を抑えることなど、もうできなかった。
今までにないくらい、激しく泣いた。こんなにも苦しいなら、私は彼と一緒に居たくなかった。
終わりなんて、辛いから。
…だけど、そんなこと言ってられない。だって彼がくれた人生なんだ。憎めるはずが無い。彼がくれた幸せも、驚きも、喜びも、すべて私の中に宿ってる。
これからも生きなければならない。”白咲玲奈”として。彼の妻として。
それが…あなたが本当に願った最期の望みだったのかな…。
──1年後 10/31──
プルルルルルル…………
「もしもし、どうしたの?」
「「玲奈ちゃん!今日の夜うちでハロウィンパーティしようと思ってるんだけど、よかったら来ない?」」
「…あー、ごめん!今日は夜少し予定があって…。」
「「りょーかい!」」
ガチャ
白咲玲奈、21歳。○○大学卒業、勤務先※※会社。
…彼が居なくなってから1年が経った。彼から貰った指輪は未だに薬指に付けたまま。彼が居なくなる前に作ってくれた私の身分でずっと生活していた。
”仕事”というのはとても体力を使う。最初の頃は知らないことだらけで何度も体調を崩してしまった。
けれど今はそうでもない。この1年ですごく慣れた。周りからも覚えが早いとよく褒められた。
未亡人ということは誰にも話していない。
”旦那さん”との他愛もない日常を周りに話して、偶像の幸せを共有した。
未亡人と知られたくなかったんじゃない、彼が死んでしまった世界を、まだ受け入れることが出来ない。
「…。」
枯れ果てたカスミソウとシオンの花をそっと撫でた。
「行ってきます、ダーリン。」
私は会社のスーツに身を包み、バッグを肩にかけて外に出る。
私の勤務先は、ここから電車で1時間ほど移動した所にあるタクシー会社だ。
「各駅は……10分後かぁ…。」
駅の中はハロウィンの仮装をした人達で溢れていた。
「朝からすご…。」
「あ、お姉さんいま1人?」
「…旦那います〜。」
「なんだよ〜…いこーぜ。」
大学生くらいだろうか。お友達が言っていた。私はどうやら”美人さん”らしい。
だから私はよく狙われる。こういう、”ナンパ”はもう慣れっこになってしまった。
「…まだ、私はあなたが好きだよ。ダーリン。」
小声でそう呟きながら、指輪をそっと撫でる。
それから暫くして電車が停まった。私は席に座り、本を読みながら目的の駅に着くまで暇をつぶしていた。
最近は恋愛小説ばかり読んでいる。そこで仕入れた言葉があった。”運命の相手とは1度別れる”と。もしかしたら………そんな淡い思いに馳せた。
「「まもなく〜★★駅〜」」
「…あ、降りなきゃ。」
急いで本をしまい、電車から降りて駅のホームへと足を踏み入れる。
この駅は少し都会に近いのもあってか、先程の駅よりも人で溢れていた。
「…困るなぁ。」
私はこの駅をよく通るようになってから、田舎の静けさが好きということに気がついた。
…もしかしたら彼との生活が好きなだけだったのかもしれないけれど。
プルルルルルル……
「「もしもし、玲奈さん?」」
「すみません、今日は少し遅れそうです…。」
「「わかったよ。タイムカード先に切っておくね。」」
「えっ!?いやいや、申し訳ないです…。」
「「なーに、これくらい良いんですよ。上司として当然ですから。」」
「あ、ありがとうございます…(紳士的だ。)」
それから私は急いで会社に向かった。
「遅れました…すみません…!」
「玲奈ちゃん待ってたよ…って汗すごい…これで拭いていいよ?」
「あ…ありがとう咲ちゃん。」
「ううん良いの。」
お友達の貸してくれたハンカチで軽く額を拭いた。
「これ…洗って返すね!」
「えっ、大丈夫だよ!?」
「ううん!このまま返す訳にはいかないからさ…!」
「…わ、わかったよ。ねぇ、夕方は時間ある?」
「夕方なら空いてるよ!」
「じゃあハロウィンパーティは来れなくても、せっかくだし少しご飯でも食べよ?」
「うん…!ありがとう。」
「いいって事よ〜!あ、お仕事だ。遊園地まで飛ばせる?」
「もちろん、今から行ってくる!」
「玲奈ちゃん、気をつけてね!」
そしてタクシーへと乗り込み、遊園地前まで向かった。
「…懐かしいなぁ。」
初めて車に乗った時から、遠くに映る遊園地を眺めていたこの道。
あの頃は、まだ少しあなたのことを疑っていた。でもあなたは誰よりも真っ直ぐだった。
こんなにも彼のことを考えているのは久しぶりだった。それが今日という日だからなのか、この道が思い出させているのかは分からない。
遊園地前に到着すると、見た事のある影が乗ってきた。
「お客様、どちらまで………」
「近くのビジネスホテルまでお願いしますわ…。」
「…か、かしこまりました。」
相手はこちらに気づいていないみたいだった。そんなことよりも、彼女はとても疲れきっているように見えた。
「…お嬢様、お仕事終わりですか?」
「なっ、いま…”お嬢様”と…?」
「ええ。お嬢様。」
「…ま、まったく…その呼び方は慣れませんわ。」
「お嬢様はたしかこの遊園地の従業員さんでしたよね。」
「…なぜご存知で?」
「覚えていませんか?コーヒーカップに乗って彼氏が酔っちゃったカップル。」
「……………1年前ほどにそんなことがあったような、なかったような…。」
「…たしかに、1年も経っていたら覚えていませんよね。」
「…あ、レイナさん?」
「そうです!覚えててくれた…。」
「あの頃は…少しわたくし騒がしかったですわよね。」
「いえいえ、とても賑やかで楽しかったですよ。」
「…お恥ずかしい。」
「あれから本職になったんですか?」
「…ええ。このお仕事は少し大変ですけれど、やりがいがあるんですのよ。」
「なるほど…。どんなやりがいですか?」
「んー…1番はやっぱりアトラクションに乗った後に見せる素敵な笑顔ですわ。」
「お嬢様らしい、素敵な回答ですね。」
「……お、お嬢様と呼ぶのは」
「わ、分かりました。お名前お伺いしても…?」
「簪 御崎と申します。」
「素敵なお名前ですね、簪さん。」
「…レイナさん、距離が近いってよく言われませんか?」
「あまり…言われませんね。」
「あら、そうですか…。わたくしとこんな親身にお話してくれる人はあまり居ないもので…少し珍しくて。」
「そうなんですね…。」
「”お嬢様”という身分は、わたくしは嫌いです。みんなから特別扱いされてしまって、普通の生活ができなくて、普通のお友達も作れない」
「みんな、見ているのはお金ばかりなんです。」
「……辛いですね。」
「何ごとにも、代償があるんですの。不自由の無い生活の代償は世間的な普通になれない
こと。そして、孤独になること。」
「代償…ですか。」
「私は1年前に彼氏を失ったんです。」
ふいに、そう口に出てしまった。誰にも話したことの無い秘密を。
「…え?」
「私が彼と出会った時、彼の余命は7日でした。そして私はその7日間、彼とずっと一緒に居て、恋をして、幸せをたくさん貰いました」
「その代わりに、彼は居なくなってしまった。私の幸せは時間に奪われちゃったんです。」
「………そうだったんですの。レイナさんも、辛かったんですね。」
「…でも、まだ受け入れられないんです」
「彼はまだそこに居るみたいに感じられて…だから、まだ………」
そう言いかけた時、自然と涙が零れた。
「…レイナさん、近くのコンビニで一旦止めてくださるかしら?」
「…ええ。すみません…。」
「いえ、大丈夫ですわ。視界が悪いと運転に支障が出てしまいますから。」
「……。」
「もう、いないって分かってます」
「彼に触れられないし、話すこともできない。それだけで、彼が居なくなったという証拠としては十分です」
「だけど……それでも彼の事がずっと好きなんですよ、私…」
「本当に、馬鹿ですよね。」
「……そんなこと、ありませんわよ。」
簪さんはそっと私の肩に手を置いた。
「貴女が好きという気持ちは、きっと彼に届いていますから。」
「………うぅ。 」
私はそのまま簪さんに慰められて、少しお話をした。業務中であるにも関わらず。
─数時間後─
「レイナさん、ありがとう。ここで降ろしてもらって大丈夫ですわよ。」
「分かりました。お会計………」
メーターには6万と書かれていたが、流石にそんな額を払わせる訳にはいかなかった。
「あ、えっと…4000円くらいのはずです。」
バッ。
簪さんは1万円札を7枚置いて、「お釣りは要りませんわ。」と言い残してそのまま去っていった。
「あっ………。」
そしてお札の1番下には彼女の電話番号が書かれたメモがあった。
「…簪さん。」
それから少しして、お友達から電話がかかった。
「あ、もしもし咲ちゃん?」
「「玲奈ちゃん今どこ!?大丈夫!?」」
「あ、だ、大丈夫!ちょっとお客さんと長い時間お話に没頭しちゃって、気づいたらこんな時間に……。」
「「…はぁぁ安心した。あまりに連絡もなにも無いものだから、事件とかに巻き込まれちゃったかと思ったよ。」」
「大丈夫だよ!心配かけてごめんね。」
「「ううん、平気だよ。それより、ご飯これから一緒に食べに行こう?美味しいシチュー屋さん見つけたから!」」
「うん、わかった!いまから向かうね!」
「了解〜!」
そして、私はお友達の教えてくれたお店へと向かった…。
「おまたせ、咲ちゃん!」
「玲奈ちゃん!待ってないよ〜っ。いこっ!」
中へ入るとカフェのような雰囲気でテーブル席が6つあり、天井がガラス張りになっている不思議なお店だった。
「いらっしゃいませ、ご注文はタブレットからどうぞ〜。」
そして端っこのテーブル席に2人で座り、お友達がタブレットを取った。
「ここは自家製シチューがメインなんだけど、ほかにもケーキとかアイスとかデザートもあるんだよ〜。」
「デザート…見せて!」
「ほい。」
タブレットの画面にはたくさんの美味しそうなデザートが並んでいた。
「クッキー……。」
”占いクッキー”という妙な名前に目を惹かれた。
「この…占いクッキーってなに?」
「これはね、フォーチュンクッキーみたいな感じなんだけど、中の紙に1日の運勢〜みたいなのが書いてあるの!」
「じゃあ、シチューとこれにする!」
「りょーかい。私も同じやつにしよ〜!」
タブレットを操作し終えると、元の位置に戻した。
「それで、今日の夜は旦那さんとお祝いするの?」
「…うん。そうしようかな。」
「……ねぇ、玲奈ちゃんさ。」
お友達は私の顔を覗き込むような仕草を見せた後に口を開いた。
「”旦那さん”の話を出すと、毎回少し暗くならない?周りと話してる時も、無理して笑ってるように見えるよ。」
「…え、そ、そんなことないよ。」
「ううん。私は玲奈ちゃんの友達だから分かる。何か、隠し事してない?」
「………実は、彼、長期の出張に行っちゃってて、全然会えてないの。」
「……そっか。遠距離なんだね。」
「…うん。」
ある意味、自己暗示だったのかもしれない。
今はただ、彼がいない事実から目を背けたかった。
「…そのままでいいの?」
「…え?」
「だから、本当にそのままでいいの?」
「……どういうこと?」
「…本当の事、聞かせて?」
「…。」
「……気づいてなかっただろうけど、タクシーの無線ずっと繋がってたよ。」
「………。」
「…玲奈ちゃん。」
「…嫌。」
「…。」
ギュッ…。
「今まで辛かったよね…。1人で抱え込んで。」
「…違う、違うの。まだ、受け入れられないの。」
「誰だって、受け入れたくないよ。こんなこと。玲奈ちゃんはおかしくない。馬鹿じゃない。」
「……。」
「自分勝手だけど、私はただそう伝えたかっただけ。」
「…ありがとう。」
「ううん、いいの。」
お友達はそう言いながら強く抱きしめてくれた。
私はいつまでもこうしてはいられない。真実と向き合わなきゃいけない。そう思えた。
「お待たせしました、ご注文の品です。」
猫型のロボットが料理を運んできた。
「さて、食べよっか!」
「うん…!いただきます。」
「いただきま〜す。」
1口、そのシチューを口に運んだ。舌が急激に温まり、口の中で滑らかな感触が広がった。
「おいしい?」
「…うん、おいひい。」
それから少しゆったりとした食事の時間を楽しんだ。
「さて、クッキー一緒に開けよう?」
「うん…!」
「せーの…!」
パキッ
「私は健康運最高だぁ〜!玲奈ちゃんは?」
「えっと、想定外の事が起こるかも…だって。」
「ほほう…もしかしたらさっきの事かな?」
「…あはは。たしかに、バレちゃうのは想定外だった。」
「このクッキーサクサクで美味しいんだよね…。」
「ん…ほんとだ、美味しい。」
「ちょっと高いけどね…へへ。 」
「これ1つ500円するんだね…。」
「うん。今日は私が奢るよ。」
「えっ、そんなそんな…割り勘しよう?」
「いーや!今日は私がぜーったい奢ります〜。」
「えぇ…じゃあ、お言葉に甘えて…。」
「ふふん。借りは返さなくていいからねっ。」
「はぁい…いつか返すよ。」
「いいってば〜!」
そうこうしながらお会計を済まし、お店を出た。
「さて、じゃあ今日は解散〜!」
「ありがとう、すっごく美味しかった!」
「じゃ、また明日ね〜!玲奈ちゃん、ハッピーハロウィン!」
「うん!またあした!ハッピーハロウィン!」
そして、タクシーを会社に戻した後、駅に到着した。
「あんまり人居ないな…静かだ。」
各駅停車に乗り込み、席に座ってまた静かに本を読んで暇をつぶしていた。
”そして、王子は言いました。
「もう、1人にしないから。」
幾度もの困難と壁に当たった2人だった。けれど、最後に待っていたのはハッピーエンドだった。
「…その言葉、約束してよね。」
王女は頬を赤らめながら、王子へそう呟いた。
END───
パタン。
「…いい話だったなぁ。」
数百ページある小説をちょうど読み終えた時、電車が止まった。
「さて、家まで帰らなくっちゃ。」
日が沈み、街灯が照らす道をゆっくり歩いた。ふと空を見上げると、満月だった。
「…綺麗。」
月に目を奪われる…なんて、ロマンチックな事だな…と考えながら歩いている内に、家の前まで着いた。
ガチャ。
「さてと…とりあえずバッグ下ろして…。」
バッグを掛け、スーツを脱いだ。
「……はぁぁ。」
1日の疲れと辛せをため息ですべて吐き出した。
「…このまま寝ちゃおうかな。」
電気も付けないまま、その場で座り込んだ。
「………。」
そして目を閉じかけた時、ガタンと大きな音がした。
「僕の寿命は、あと100年。」
暗く、静まり返った私の部屋の窓に、腰を掛けて現れた彼はそう言った。
白いローブを身にまとい、1本の青い薔薇を口にくわえた彼の言葉はとても暖かく、現実味を帯びていた。
「……健、くん…?」
「これからずっと、玲奈と一緒に居る。」
「……!」
逸る気持ちを抑えきれず、そのまま勢いよく立ち上がり、駆け寄って抱きしめた。
「あたっっっ」
私の勢いが強すぎて、危うく彼は倒れるところだった。
「会いだがっだ…だーりん…!!!」
「…ごめんね、玲奈。遅くなっちゃった。」
「…ぐずっ。」
1年という時が経っても、私の愛はずっと彼に向けられていた。
「本当に…だーりんなの…?」
「…うん。玲奈のダーリンだよ。」
「…それ、なに?」
「あ、これ……プレゼントだよ。」
その薔薇には、”逢いに来た”と書いてあった。
「…そっか。あれの続き?」
「うん。”好きだから逢いに来た”。」
「…死ぬ前、私の前から消えて?」
「…本当に」
「…1年待たせて?」
「……ごめん。」
「…ダーリンの、ばか。」
「…玲奈」
「好きだよ、ダーリン。」
そして、彼の唇に自分の唇を重ねた。
「…………………。」
あの時とは違う、時間の流れを忘れてしまいそうなほどに、長い口付けだった。
チュッ…。
「…待ってたよ、ダーリン。」
「おまたせ、玲奈。」
「寂しかったよ…。」
「もう、1人にしないから。」
「……ふふ。その言葉、約束してよね?」
「もちろん、約束するよ。」
「…ねぇ、どうやって帰ってきたの?」
「あ…えっと、それを話そうとするとすごく長くなる……。」
「そっか…じゃあ、またあした聞かせて?」
「ふふ、分かった。」
「ん、ねぇ。」
「…ん?」
「健くんの作った”生活のためのリスト”あったでしょ。」
「うーんと…あんまり覚えてないや。」
「もー。でもさ、あれのおかげで1人でもどうにか生きられたよ。」
「そっか…それはよかった。」
「…ふふ。」
そして、彼は私にビデオレターを残した。
”いつか、帰るから。”と。
「信じてよかった。」
「…ん?」
「なんでもないよ、ダーリン。」
「…夜も遅いし、寝ようか。」
「うん。久しぶりに一緒に寝よう。」
そして彼が私に布団をかけて、優しく抱き寄せてくれた。
「玲奈、おやすみ。またあした。」
「ハッピーハロウィン、健くん。またあした。」
───Thanks reading.




