第44話「足跡」
白は。
途切れることなく。
続いていた。
二人は。
その道を歩く。
静かに。
ゆっくりと。
誰も話さない。
足音だけが。
白い空間へ響いていた。
「……ねぇ」
ミナが小さく声をかける。
「さっきの足跡」
「ああ」
「私たちだけじゃないんだね」
クロノは答えない。
その代わり。
足元へ視線を落とす。
白に照らされた床。
そこには。
また新しい足跡が残っていた。
今度は。
一人分じゃない。
二つ。
三つ。
いくつもの足跡が。
同じ先へ続いている。
「……増えてる」
ミナが呟く。
クロノは静かに頷いた。
歩幅は違う。
靴跡も違う。
歩き方も。
止まる場所も。
全部違う。
「同じ人じゃない」
「うん」
ミナも気づいていた。
「みんな」
「同じところに向かってる」
クロノは何も言わない。
ただ。
その足跡を追った。
しばらく歩く。
不意に。
一つの足跡だけが。
白から外れた。
「……あれ」
ミナが立ち止まる。
数歩だけ。
横へ逸れている。
クロノはしゃがみ込んだ。
足跡は。
そこで終わっていた。
「消えたのかな」
ミナが小さく呟く。
「……違う」
クロノは首を振る。
「ここで」
床へ触れる。
「止まった」
「止まった?」
「ああ」
逃げたわけでも。
消えたわけでもない。
まるで。
そこに立ち尽くしたような。
そんな跡だった。
クロノは静かに立ち上がる。
「行こう」
ミナは頷く。
二人は再び歩き出した。
白は。
まだ続いている。
やがて。
光が少しだけ強くなった。
「……何かある」
ミナが指を差す。
白の中に。
小さな何かが落ちていた。
クロノは近づく。
ゆっくりと拾い上げる。
一枚の紙。
何も書かれていない。
「白紙?」
ミナが覗き込む。
クロノは紙を傾けた。
その瞬間。
光が反射する。
浮かび上がる。
たった一文字。
『進』
「……」
クロノは息を呑む。
次の瞬間。
文字は静かに消えた。
白い紙だけが。
手の中へ残る。
二人は顔を見合わせる。
答えはない。
それでも。
白は。
まだ先へ続いていた。
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