第42話「灯る」
静かだった。
白い空間を。
二人で歩く。
もう。
青は見えない。
何も起きない。
ただ。
足音だけが、静かに響いていた。
隣で。
ミナが小さく笑う。
「……ありがと」
クロノは視線だけ向ける。
「さっき」
そう言って。
少し照れくさそうに笑った。
「……ちょっと、かっこよかった」
クロノは少しだけ考える。
あの時。
ミナが傾いた。
気づけば。
手が動いていた。
考えたわけじゃない。
助けようと決めたわけでもない。
ただ。
そうしていた。
「……そうか」
それだけ返す。
ミナは不満そうに頬を膨らませた。
「それだけ?」
「他に何て言えばいい」
「別にいいけど」
そう言って笑う。
その笑顔に。
少しだけ。
肩の力が抜けた。
その時だった。
――カラン。
乾いた音。
二人が同時に立ち止まる。
音は。
足元から聞こえた。
「……これ」
白い光。
小さく。
床の上で揺れている。
拾った白とは違う。
青とも違う。
今にも消えそうな。
弱い光。
ミナがそっと手を伸ばく。
その前に。
クロノの手が。
腕を掴んでいた。
「……え?」
自分でも驚く。
掴んでいる。
気づいて。
ゆっくり手を離した。
「悪い」
「ううん」
ミナは首を振る。
「心配してくれたんでしょ?」
違う。
そう言おうとして。
言葉が止まる。
違わなかった。
クロノは光へ目を向ける。
「……分からない」
危険かもしれない。
安全かもしれない。
何も分からない。
今までなら。
それだけで近づかなかった。
でも。
「確かめよう」
口をついて出た。
ミナは少し目を丸くして。
ふっと笑う。
「うん」
二人で。
一歩踏み出す。
その瞬間。
足元の白が。
ふっと灯る。
そして。
少し先に。
もう一つ。
また一つ。
静かに。
白が灯っていく。
まるで。
二人を待っていたように。
クロノは立ち尽くす。
「……こんなの」
知らない。
何百回。
世界を繰り返しても。
こんな光景は。
白は。
消えない。
ただ静かに。
二人の進む先を。
照らしていた。
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