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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一


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第7話 王都の銭湯

どうにかレベル5まで到達できた。

次なるクラフトツリー……銭湯を解放した。


モンスターの素材を売って土地を買い、自宅の横に銭湯をクラフトした。


男性は50円、女性は当然無料。

そして、今なら女性限定で、俺が手とり足取りお風呂の流儀を教えるサービス付き……の予定だった。


てか、ファンタジー世界なのに、単位は円なのかよ。

世界観が台無しだろ。ま、銭湯の時点で世界観もクソもないか。


「ダイチ、女性の入浴は私が対応するから」

スターナが怖い。真顔で淡々と告げる。


わざわざパーティ解除して、俺の行動がバレないようにしたのに。

ちっ……スターナのやつ、嗅ぎつけてきやがった。


金銭的に家周りの土地しか買えなかったのが悔やまれる。


「ああ、頼んだよ。

俺は風呂さえ広められたらそれでいいから」


「ふーん。どうだか……」

アーシャさんとのお風呂イベントから、

かなり怪しまれている。


銭湯は意外と繁盛していて、俺も番頭をしつつ、忙しなく客をさばいていた。


すると、一人の少女が目の前に立っていた。


炎を思わせる赤髪をサイドテールに結い上げ、黒と紅のローブを羽織った魔法使いの少女。

小柄な体に似合わぬ尊大な態度で

「お風呂ってなに?」

と訪ねてきた。


作り込み的にメインキャラみたいだな。

メタい考察だが、これもゲームあるあるだ。


パーティー画面を開くと、リリムという名前が出ていた。


「ちょっと、キモ男――聞いてんの?」


「キモ男じゃないから返事しませーん」


なんだこの子は、スターナ以上に生意気だ。


「あんた、生意気ね。この、豪炎のリリム様に逆らおうっての?」


「剛毛のなんだって?」


「誰が剛毛よ! ご、う、え、ん! 豪炎よ!」


「わかったわかった。後衛のリリム様。

中に案内人がいるから、そっちに聞いてくれ」


「むっきー! 確かに後衛だけど、違うわよ!」


「わかったってば、うるさいから早く行けって」


俺はシッシッと手を払い、女湯の暖簾のれんに通す。



しばらくしてリリムが脱衣所から出てきた。


「どうだった?」


「ふん、キモ男にしては悪くない発想ね」


「それはよかったな」

メスガキキャラって、普通に接したらイラッとするな。


俺は、憂さ晴らしにパーティ画面を開き、リリムを選択。彼女を無理矢理パーティー加入させた。


しばらくして、リリムが帰ってきた。


「なんだ? 迷子か?」

俺は、わざとリリムを挑発する。


「違うわよ! なんでか、帰れないんだけど?」


当然だ。俺がそう仕組んだからな。

スターナとパーティを組んでいて分かったことだが、パーティー加入させると、俺から一定以上、距離を離れられなくなる。


いわば強制同行だ。


俺はにやにやしながらリリムを見下ろす。


「もしかして、あんたの仕業?」


「だとしたら?」


「なにか魔法の類ってことね。

だとしたら私にも考えがあるわよ……」


「ほほう。クソガキ風情になにができるか、楽しみじゃねえか」


完全に悪役三下のセリフだ。


すると、リリムは突然大泣きし始めた。


「うぇーん! うぇーん!」


棒読みもいいところだが、人が集まってきた。


「ちょっと、何の騒ぎ?」

騒ぎを聞きつけたスターナが、リリムに駆け寄る。


「この子が勝手に騒ぎ出したんだよ」

俺は冷静を装いスターナに説明する。


「お兄ちゃんが、あたしを誘拐するって……」

リリムは泣き真似をしつつ、俺を指差す。


「……」

スターナは、リリムを守るように自分の背後へ庇う。――ドン引きした目でこっちを睨んでいる。


「おい、俺がそんなことするわけないだろ。

信用できないのか?」


「……」

スターナの表情は、変わらない。


やっぱり俺って信用無いのな。

――確かに今回の犯人は俺だ。


だが、こっちもガキんちょに舐められるわけにはいかねえ。


俺は意地でもパーティー解除はしなかった。



帰宅後、アーシャさんがステーキを作って待っていた。


「あれ、スタちゃんは?」


リリムとかいう子を家に連れて帰ろうと、頑張っているみたいだ。


スターナって、優しいところもあるんだな。

ただ、スターナも俺がパーティーを解散しないと、俺から離れられないけど……ま、いっか。


二人ともそのうち帰ってくるだろう。


「「ふぇーん」」

しばらくして、二人して泣きながら帰ってきた。


「あらあら、どうしたの?

スタちゃん、その子は?」

アーシャさんが二人に駆け寄る。


「何故か、私もここから離れられないの」

理由は俺だけが知っている。システム上の問題だ。


「あいつが何かやっている……」

リリムは俺を指さし、アーシャさんに告げ口する。


「ダイチくん、本当なの?」


「もしかしたら、俺を中心に恋の引力が発生しているのかも……それで、スターナもリリムも俺から離れられないんですよ」


「恋の引力……そうなのかも」

スターナは小さく呟く。


スターナは騙せそうな反面、リリムは全力で否定する。


「きんもっ! 死ね!」


俺はリリムに吐息多めに耳打ちする。

「いいのか、リリム。

そんな態度だと、永遠に家に帰さないぞ」


「ひっ!」

リリムの顔から血の気が引く。


……なんか、これってガチの誘拐犯みたいじゃね。


「って……あれ?」


アーシャさんがなぜか俺を羽交い締めにしている。


「ダイチさん。なにかやっているわね?」


くっ、バレたか。


「さぁ、リリムちゃん。やっておしまい!」


アーシャさんがノリノリで焚きつける。


「えいやっ!」

リリムのケツアタックが俺の腹にめり込む。


ぐっ……ダメージ325だと……相変わらず物理の火力がバグっている。


「リリムちゃん、もう帰れるようにしたから……頼む……やめてくれ……」

もう2、3発食らったら死んでしまう。


スターナに一度殺されて分かったが、ベッドでリスポーンした後、24時間は激しい筋肉痛に襲われるという謎仕様がある。


「やっぱり、お前が犯人だったのか!」


「えいっ!」

ケツアタックがクリティカルヒットして俺は死んだ。



ベッドから蘇った俺は思わず声を漏らす。


「ふぅ、まったく……って……えっ!?」


俺の四肢をスターナとアーシャさんが抑えていた。


「いでででで!」

筋肉痛で本当に痛いんだ、これ以上は許してくれ。


「ふぎゃっ!」

俺の腹にリリムが両足で飛び乗る。


「お兄ちゃん、リリムみたいな女の子に踏まれて、苦しんでいるんだ。ざぁこ♡ざぁこ♡」


本来ならご褒美イベントなのに、本当に痛い!


「頼む、俺が悪かったから許してー」

俺は泣きながら大声で謝る。


「ふふっ、ダイチくんの苦しむ顔……たまんない」

アーシャさんが舌なめずりをしている。


「ひっ……」

思わず悲鳴が漏れる。


「ダイチには、私もいろいろ溜まっているから……リリムちゃんが、満足しても次は私の番だからね」


スターナの笑顔が怖い。


死ぬことが軽いゲーム世界の恐ろしさを身を以て味わう羽目となった。


これからは、みんなにもう少し優しくしよう。

後悔先立たず。一晩中――俺の悲鳴が王都の夜に鳴り響く。

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