国…それは演説「憤怒」より VI
「なんだろ、あの先だけ妙に明るいなぁ」
半円アーチ状の門は近づいているが、視界を遮るものは何もないのに、太陽光で反射しているのか、その先が白くて見えない。
「行ってみよう」
私はそう言って門までゆっくり進む。足元や振り返って歩いてきた道を改めてみても、
ぬいぐるみは1つも落ちていなかった。
門が近づくにつれて、光が強くなっている気がする。手で目元に影ができるようにして、目を細めながら歩く。
まぶしい…とてもまぶしい…。
「もぉ目ぇ開けらんないよぉ〜」
彼女の文句を聞き流して、門をくぐった。
途端に視界がひらけた。
「「わぁ……」」
2人して思わず感嘆の声が漏れる。
そこは大きな広場だった。
最初に噴水の水が落ちる音がさりげなく耳に響いてきた
国はパッと明るみが増し、白い建物はいっそう輝きを増し、青い装飾はモチーフの種類が増え、それが幾何学的に並んでいる。目を瞬かせるほどの鮮やかさである。
この国は…ヒトのいないこの国は、まだ生きているようだ。
ふと、彼女が身を乗り出した。
片耳が上がっている。耳を澄ませて何か聞いているらしい。
「サマヨイ、聞こえない?」
「何が…?……噴水の音なら聞こえてるよ」
「そうじゃなくて、ホラ!」
「ウサギにしか聞こえないらしいよ」
もしくは私が聞き取れない音だったとか…高すぎたり、低すぎたり…超音波みたいな…
「サマヨイの耳がおかしいんだね」
「失敬な」
「ホラ、あそこ!あそこから聞こえる!誰かが叫んでいるんだよ!」
「ヒトがいるのか」
彼女が指したのは、この広場の中で抜群に目立つ建物。きっとあれが国の中心だ。
4つのとても高い塔で囲まれた宮殿…
つくりが他の建物とめっきり違い、高級感、王族感の漂う建物だ。
「サマヨイ、早く行ってみよっ」
「うん」
私は、特にペースを上げることもなく歩く。そして、宮殿の正面に出る、曲がり角に差し掛かった。
「わ…しは、…かいから…を…くしたいと、…もって…いま…。どうか…」
聞き取れないところもあるが、微妙に聞こえてきた。
何かを…訴えている…?
角を曲がると、宮殿が正面に見える。
バルコニーのようなところで、誰かが話しているのが見える。
だんだんと声が大きくなり、話しているのは男の人だということがわかった。
白い服を全身にまとっているようにみえ、肌色が不自然に色が違ってみえた。
私は無意識にも男の人を見ながら、斜め上を見ながら歩いていた。
「サマヨイ!!下!!!」
突如、彼女が叫ぶ。
「えっ…あ…」
私はあと一歩でぬいぐるみを踏んでしまうところだった。私はぬいぐるみから目を離さず彼女にお礼を言う。
血の気が引いた気がした。
「危なかった…ありがとう、助かっ」
「サマヨイ…前…」
彼女は私の話をさえぎる。彼女を見ると、険しい表情で前を見ていた。
前…?
前を見た私は、一瞬で青ざめるのがわかった。
「ッ!!……なんだこの数は?!!」
地面には、
ぬいぐるみ、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ…
宮殿の目の前まで、ぬいぐるみが無数に落ちている。
地面が全く見えなかった__。




