「堕胎」する「ガラス」その②
振り下ろされた包丁は中目の首を切り付け大量の血を流させた。中目は応急処置として煙で傷を塞ぎユラユラと立ち上がった。「はぁはぁはぁ…はぁ」「もうやめなさい…これ以上やっても私を倒せませんよ」「こうなったらお前は……殺さなきゃな」しかし身体全身に力が入らない。出血量があまりにも多すぎるのだ。再び倒れる中目を霞は抱きかかえ銃を取ると学園長に向ける。「あら…撃つつもり?いいわよ撃っても…けどその勇気なんてないでしょう?」銃を持つ霞の手がブルブルと震えまともに構えられない。その霞の手を中目は下げてゆらりと立ち上がる。「お前…もうだめっぽいな」「あらぁダメなのはあなたの事では?」「……さぁな」中目は残り少ない力を使い煙を大量に出すとその中へ飛び込み姿を消す。「いったいどこに…」学園長は煙に包丁を突き刺すがそこにはおらず煙は空中を漂う。すると学園長の背後に漂っていた煙から腕が伸び肩を撃ち抜く。「ぎゃああああ!!!!!!」必死に包丁を振り回し煙を振り払うが足元に漂っていた煙から腕が伸び足を撃ち抜く。「ううううあああああ!!!!!!」霞はこの光景を見ていた。学園長の周りに漂っている煙の中に一つだけ分厚い煙があることに気が付いた。その煙は他の煙と違い縦横無尽に形を変えて動き回り腕を伸ばして攻撃している。そのことに学園長は気が付いていない。学園長の両足と腕4本が撃ち抜かれるとその場に倒れこむ。「はぁはぁはぁはぁ!!!!どこにいる中目封戸!!!!」煙がゆったりと近付き学園長の背中に麻酔針のようなものを刺すと学園長はピクリとも動かなくなった。そして煙から中目が排出され大量の血を流し倒れた。霞はすぐに医療班と救急車を呼ぶ。しかし血量が多く間に合わないのはわかっていた。必死に止血するが溢れ出す。諦めかけたその時、割れた窓からアテネが入り翼を広げ中目を回復させる。「アテネ先輩…どうして!」「上からライアが落ちてきたのでただ事じゃないと思いまして…しかしこれは一体?」「話は後でもいいですか…?」「えぇ…」中目の傷は次第に癒えていき出血も収まった。しかし意識は戻らず救急車によって緊急搬送された。学園長は輪廻の部隊が回収していった。霞も病院に行き治療した。中目は未だに意識が戻らないという。ついさっき奥さんが来ていたので謝罪をした。奥さんは非常に優しく自分の心配をしてくれた。本当は気が気じゃないはずなのに。霞は学生寮に戻るとアリスに事情は離さず晩御飯を食べる。アリスは霞の怪我と悲しそうな顔に気が付き気に掛けるような行動を取っていた。「大丈夫………?」「うん」「でもおねえちゃんたくさんケガしてる」「ちょっとねぇ…」「おねえちゃん心配してるひといる」「…わかるの?」「わかる…今もベッドで寝てる」「……治せる?」「その人のところに連れていって」霞はアリスが治せるのではないかという謎の確信があり、中目のいる病院へと向かった。面会時間は過ぎていたのでこっそり侵入。中目の病室に入るとアリスは中目の身体に注射針程度の傷をつけて、その傷に指を当て何かを注入し始めた。「これで治るの?」「うん…この人には私の細胞と治すために必要な肉をあげてるの」「アリスちゃん…一体何者なの」「わからないけど…色んな力があるのはわかる」「そっか…」中目の身体への注入が終わると逃げるように病室から出て電車へ乗り込む。このくらいの時間になると仕事終わりのサラリーマンもいない。2人は揺れる電車で何も話さずにただぼんやりとどこかを見つめていた。アリスは眠り霞も睡魔に襲われる。学生寮へ戻るとすぐに寝てしまった。今日は勉強をやめて明日のために眠りについた。
翌日
学園長の辞任が全生徒に伝えられた。諸事情と言われているが事情を知っている霞ら3人は何も意外ではなかった。「結局うちらどうなるんだか」「そうですね…流石に今回ばかりは…」「ごめんなさい…」教室内に気まずさが立ち込めると教室の扉が開き教員が一人入ってくる。「金糸雀ケ原・アテネ・イリア、神代ライア、九条・サクラザキ・霞、3名を無罪放免とする。理由としては学園長の攻撃に抵抗するための攻撃でありその攻撃に正当性が認められたからだ。では引き続き勉学に励みたまえ」教員は教室を出ると皆で顔を見合わせた。「ま…そうなんなきゃやべーだろ」「ですよね」「はぁ…でもあの子はどうなるんですかね」「あーアリスか…今はうちらでどうにかしようぜ」その後もアリスについて何かを言及されることもなく捜索されることもなかった。何か不審な感じもしたが気にせずアリスとの生活を送っていた。「しっかし色々進みすぎてんなぁ~何か目回りそうだぜ」「そうですね…最近大きく事が動きすぎてます…私達も気を付けなければ」ライアの言う通りで最近の暁はドタバタしている。能力者事件の多発。原初回帰と思われる存在の暴走。そして23クラブ。全てが何かに呼応するかのようにじわじわと暁を侵食していっていた。暁の尊もこの状況をよく思っておらずスカウトした能力者全員に連絡を送っていた。そして自らも原初回帰を倒していき治安の維持に努めた。
地球の遥か彼方
謎の飛来する存在がこちらに接近してきていた。それは莫大なエネルギーを放出しながら途轍もないスピードで近づく。その存在が後々暁国全土を巻き込む大事件を起こすことをまだ誰も知らない。




