「絶対的」な「支配」
日本時間12時8分。
バチカン市国にて厳重に保管されていた「黄金の真殻咲」が倉庫から盗まれ、同時に教皇の側近7人が殺害されるというテロ事件が発生した。犯人とみられるアジア系の男は現在も逃走中。このニュースに強い関心を示す者は少なかったが、唯一愿太郎だけは異常な反応を見せた。「愈堕の野郎……やりやがった!」腕の真殻咲が疼く。最近感じていた違和感はこの出来事を察知していたのだ。じっとしていられず彼は「真殻咲家」へ向かうことを決意する。その頃、暁市内では異変が起きていた。人間の形をした「何か」が街を暴れ回っている。全身が「鉱物や金属」で構成された存在それは店を破壊し、人を叩き潰しあらゆるものを壊していた。その存在が幼稚園児たちに突っ込もうとした瞬間「ふん!」一人の男が現れ突進を受け止めて投げ飛ばした。「なんだお前は!」返答はない。男は構え市民へ叫ぶ。「皆さん逃げてください!ここは俺が何とかします!」「おい…あれって…!」「間違いねぇ!『最強!陸海空』だ!
「次期日本代表候補じゃねぇか!」陸海空はすぐに異常に気付く。あれほどの投げを受けても相手は無傷。追撃で突きを放つがまるで効かない。「まるで鉱石そのもの…!」その存在は一瞬で動き薙ぎ払う。腕で防ぐも勢いを殺しきれず壁へ叩きつけられた。「ぐはっ…!」どうやら知能はある。だが人間のようなものではなく、より「原始的な生存本能」「くそ……だが!」陸海空が構えると空気が一変する。相手もそれを察し構えを取った。今までの経験によって創り出した型を思い出す。一の「起」で全てを構えなおし二の「流」で繰り出される攻撃をよけ三の「断」を力強く叩き込む。するとあれほど頑丈だった身体にヒビが入る。「今だ!」すかさず四の「圧」と六の「貫」を叩き込む。存在は悲鳴ともつかぬ声を上げうねうねと身体を細長くするとマンホール内へ逃走した。「皆さん!もう大丈夫です!」市民から拍手が起こる。30分後、中目封戸が現場に到着した。「それで?鉱石のような人型がいたと?」「はい…応戦はできましたが、かなり危険です」瓦礫だらけの街を見回し中目は頷いた。一方、愿太郎は新幹線で移動中だった。胸騒ぎが止まらない。今度は「向かってくるものを待つ」のではなく、自分から動くべきだと感じていた。2時間後、目的地へ到着。そこからさらに徒歩40分の山を登り真殻咲家へ辿り着く。すると門は破壊され人が倒れていた。「どうしたんですか!」「あなたは…源愿太郎様!……愈堕様を…!」そう言い残し気を失った。館の中はさらに悲惨だった。負傷者が至る所に倒れている。奥へ進むと激しい衝突音。襖を開けると愈堕が三本の真殻咲を操り老人と戦っていた。老人は聖職者のような服をまとい杖を持っている。「おい愈堕!誰だそれは!」「お前か!悪いが手貸してくれ!」愿太郎も参戦する。老人が杖を突くと空間に光の輪が出現。そこから絵に描いたような悪魔のような存在が現れた。「悪魔か…?」「どこぞの教皇のくせに悪魔使いや!」悪魔はそこまで強くないが数が多すぎる。愿太郎は真殻咲を大きく鞭の振り回し悪魔を倒しきり老人への攻撃を開始する。しかしバリアで触れられない。蜘蛛の足のように展開させ突きの連続攻撃も全て弾き無効。「なんか効かんトリックがあるな…」願太郎は気付く。老人は30秒ごとに杖を畳に突いている。「愈堕!攻撃を止めろ!」「なんでや!」「策がある!」一瞬、杖が離れた0.2秒、愿太郎は真殻咲を一本高速で射出し杖に巻きつけると破壊した。「なんじゃと!」「そのバリアは完璧だ…何も寄せ付けない…それで…バリアの展開には杖が必要なんだろ。本当ならずっと展開していたいが完璧すぎるそのバリアは酸素まで防いじまう…だから呼吸するために一瞬でも離し酸素を入れる必要があった!」老人は歯ぎしりをし睨み付ける。「若者よ…お主らは呪われている!その真殻咲の鎖に人生を任せ自分自らの選択肢をそいつなしでは決められない身体になった!もうお主らは元の人生には戻れん!」「話長いわ!」愈堕は老人の襟を掴み畳に叩きつけると顔面を殴り続ける。何度も殴りおおよそ23発目で気絶していた。46発目の拳が振り下ろされようとしたとき愿太郎が止めた。「こいつはもう動けない。今は館の人達を手当だ」その後、負傷者の手当てと搬送を終える。全てが落ち着いた後客間で愈堕と二人きりで話し合った。「それで…なんで来たん?」「ニュースを見た…お前なんであんなことしたんだ?」「あんなぁ…俺は真殻咲奪っただけで…!人は殺してないわ!まぁ~これで真殻咲は全部揃ったわ!」「この真殻咲をどうするんだ?」「これからこいつらを量産して復興や!色んな大物に売りつけたる」「馬鹿らしい…でもいいんじゃないか?」「せやろ?真殻咲は銃より強いでぇ~!」それから今後について話し合う。「なぁ……こんな事突然言うのはあれだけどさ…暁の尊と協力しないか?」「なんでや?嫌やわぁあんな胡散臭いやつ」「でも君たちの力をいい方向に使えるんだぞ」「元からいい方向にしか使っとらんわ!どうしてもっていうなら家移し終わってから交渉するわ」そして愿太郎は真殻咲家をあとにすると東京へ戻った。




