「魂」の「帰還」その①
カンナキ
強烈な猛暑が襲い掛かる暁。
年々気温が上昇しており下がる気配を見せない。
こんな事態に政府は何もしない。
抗っても仕方ないという態度で毎年この夏を暮らしている。
だが一部では「この暑さは自然ではない」と囁かれていた。
「ここが暁……暑いなぁ~夏というのは」
ドージョットら家族は暁の国際線ターミナルへ到着していた。
空港の床は熱を帯び外気が流れ込むたびに肌を焼くような空気が入り込んでくる。
車椅子でリーアを引き両親と暁の尊の元へと向かう。
「尊様ならリシアを復活させられるはずだ」
「ドリアス、あなたは来なくていいわ」
「どうしてだよ母さん」
「貴方はこの暁の観光をしてなさい」
「そうだぞドリアス。お前は疲れてるだろ」
「まぁそうだけど……」
そう言うとドージョットだけ電車に乗り家族はタクシーに乗った。
「じゃあ終わったら連絡するわ」
「うん……気を付けて」
タクシーは走り去りドージョットは一人になった。
ほんの一瞬誰かに見られている気がした。
「はぁ~……何しよっかなぁ」
ドージョットはスマホを開くと観光名所を調べ始める。
スマホの画面に表示されたのは見たこともない景色の数々だった。
「へぇ……意外とちゃんと観光地あるんだな」
だがアメリカに比べるとこの国は狭い。
「まぁ東京観光でもするかな」
この国のいいところは飯が薄味で美味いことだ。
「和食」というらしい。
少ししょっぱいのは気になるが許容範囲内。
とりあえず食べたいものは「やきとり」と「そうめん」。
そうめんは暁のパスタだ。
そうしているとホテルのある駅に着く。
自分達の泊まるホテルは何と駅の中にある。
駅の中に入口が存在している珍しいホテルだ。
入口の自動ドアが開いた瞬間、外とは違う冷気が流れてきた。
「……冷房強すぎないか?」
受付の人間はどこか無表情で機械のようにチェックインを進める。
内装は4人が泊まるには十分すぎる広さだ。
ベッドに荷物を置きソファに座り少し休憩をする。
「大丈夫かな……」
そうして気が付けば眠りについていた。
夢を見た。
血だらけの一軒家の中で誰かがこちらに手を伸ばしている夢。
「助けろ……」
目が覚めると16時になっていた。
外はまだ明るく日も沈んでいない。
携帯を見てもまだ連絡はない。
とにかく不安で仕方がなかったが今はただ祈るばかりだ。
空港で買ったオレオを食べて夕食の時間を決める。
そして何を食べるかを決めようとした。
コンビニに行くかどうか悩んだが、暁のコンビニはスイーツ以外は対して美味くないと書いてあったので、スーパーマーケットで何かを買うことにした。
スーパーの店内は妙に静かだった。
人はいるのに、誰も会話をしていない。
「……なんだここ」
その日はオムライスと何かのアイスを買いその日を終えた。
次の日
9時くらいに携帯に連絡が入った。
「リシアの魂が戻った」
その一文だけだった。
すぐさま家族の元へと急ぐ。
暁の尊の屋敷へ入り、とある一室へ入るとリーアが元気そうにしていた。
「リ……リーア!おまえ!もう大丈夫なのか!」
「お兄ちゃん……私……私」
目の前には自分より少し年上くらいの人が立っており微笑んでいた。
その笑みは優しいのにどこか底が見えなかった。
「どうやら妹さんの魂は別の魂達によって隠されていたみたいですね。しかしその魂達ももういません。今のリシアさんの身体の主導権は完全にリシアに返還されました」
「ありがとうございます……!」
「本当にありがとうございます尊様!」
父と母は涙ながらに感謝しており自分も同じく感謝し続けた。
だがドージョットは一瞬だけ違和感を覚える。
「魂達ももういません」ってどういう意味だ?
「頭を上げてください。そうだケーキでも食べますか?」
その後、尊様の蜂蜜のケーキを食べて自分達は館を後にした。
リーアはまだ立てないらしいが時期に立てるようになるとのこと。
余った滞在期間はそれぞれのやりたいことをしていた。
父は何かの機械を買いに行き、母親は服を買っていた。
自分とリーアはグルグルと観光をしていた。
「お兄ちゃんお腹空いた!」
「じゃあどこかで食べよう。マクドナルドがあるからそこに行こう」
ようやく自分達の日常が戻り始めた。
今まで失われていた分をこれから埋めていこうと思う。
しかし暁は能力者社会だと聞いていたが意外と落ち着いている。
小さい島国だからなのか?それとも法律が厳しいのか。
それとも抑え込まれているのか。
散々リーアの行きたいところに付き合い15時になった。
「お疲れ様お兄ちゃん。ここからは自分で引くから大丈夫だよ」
「そう?でも大丈夫だよ押すよ」
信号待ちをしていると目の前に身長の高い外国人のような人がいた。
異様に影が濃い。
信号が青になりその人とすれ違うと
「ドージョット……リーア……」
耳元で囁かれる。
振り返った瞬間、そこにはもう誰もいなかった。
「どうしたのお兄ちゃん?」
「いや……なんでもない」
心臓が妙に速くなる。
見られている。
さっきからそんな足を引きずられる感覚が消えない。
ホテルに戻り父親に報告する。
「なるほど……名前を言われたと」
「あぁ……そいつとは知り合いじゃないんだ」
「そうか…こっちでも調べてみるよ」
ちなみに父親の職業は国際調査員だ。
「うんありがとう」
父親の表情が一瞬だけ曇ったのをドージョットは見逃さなかった。
「しかし……気を付けろよ」
その一言が妙に重かった。
次の日
外は雨模様で一日部屋にいた。
だが窓ガラスに当たる雨粒がどこか粘つく音を立てていた。
某所屋上
「……ドージョット……盾」
謎の背の高い男は古びたメモ帳に書くと、その紙を食べる。
紙は口の中で溶けるように消えた。
「リーア……リシア……吸収」
次の紙も食べる。
その瞬間、男の体の輪郭がわずかに揺らいだ。
まるで誰かが重なったように。
男は何かを思い出したように空を見上げる。
「……あいつら……俺の仲間にするか」
そして笑った。
それは人間の笑みではなかった。
こうしてドージョットとリーアに不穏な影が静かに忍び寄っていた。




