第14話 待遇に見合った成果を出していないとけっこう気まずい
ヴァレリアに拒絶されたあの日から、一週間がたった。
あれからヴァレリアとはまともに話ができていない。
というか、完全に避けられていた。
ルメンヴァル公邸には食堂があり、みんなここで食事をする。
食事の時間帯は決められているため、顔をあわせて少しでも会話ができればと思ったが、ヴァレリアは一度も姿を見せなかった。
それ以外にも、照平はこの一週間、チャンスを見つけてはヴァレリアとの接触を試みた。
また、当初予定していた授業開始の時間に毎日ヴァレリアの部屋を訪れ、扉の外から声をかけてみたりもした。
しかし、会話どころか顔を見ることさえできない。
一度突きつけられたノーは照平が思っていた以上に重く、挽回のチャンスは与えてもらえそうになかった。
「......て言うか、元々家庭教師として受け入れてくれる気がなかったんじゃないか?」
照平は貸し与えられたルメンヴァル公邸の自室で、ひとりため息をついた。
受け入れられないことが最初から決まっていて、照平がどう対応したとしても結果は変わらなかったということなら諦めがつく。
「そもそも家庭教師なんてやったこともないし、最初からミスマッチだったんだよなぁ。」
ヘッドハンティングに浮かれて、のこのこ付いてきてしまったことが悔やまれる。
転職する時は待遇に目がくらんではいけない。
ちゃんと仕事内容も確認して、自分が活躍できる職場かを見極める必要がある。
4回の転職を通じて身に染みて分かっていたはずなのに、同じ失敗を繰り返してしまうところが、照平の転職がうまく行かない理由のひとつであった。
できることなら、アルベルトに事情を話して村に帰りたい......
しかし、それは簡単にはできなかった。
アルベルトは、照平をルメンヴァル公邸に送り届けた次の日の早朝に、従者のルカとともに長期出張に出掛けてしまった。
村から逃げ出した時と同様に、書き置きを残して村に帰ることも考えた。
しかし、あの村の領主はアルベルトである。
アルベルトに失礼なことをしておいて、村で平和に生活できるだろうか。
そう考えると、やはり直接アルベルトに会って許してもらう必要がある。
次にアルベルトに会えるのは二か月後。
それまでどうにかここで生活していかなければならない。
コンコン
その時、誰かが照平の部屋をノックした。
「失礼いたします。お掃除してもよろしいでしょうか。」
ルチアだ。
「は、は、はい!大丈夫です。よろしくお願いします。」
ルチアは部屋に入ると手早く掃除を開始する。
これも照平がここにいづらい理由のひとつだった。
照平は家庭教師としての仕事をなにひとつしていない。
にも関わらず、温かい食事が提供され、部屋を貸し与えられ、その部屋を毎日掃除してもらっていた。
......気まずい。
つづく




