第18話
<< トッポギ02ロスト!>>
<< サムギョプサル03 ロックオンされた! よけられない >>
<<脱出しろ!! >
<< オンバン01 後ろだ! >>
鳴り止まないミサイルアラート、絶え間ない敵味方の叫び。私たちの小隊の活躍もあり連合軍の攻撃をなんとか食い止められている。とは言え敵の数は圧倒的だ。何より早期警戒管制機がいるのが痛い。早期警戒管制機はいわば空の司令塔だ。強力なレーダーを装備していて多くの目標を同時に捕捉し、味方に指示を出せる。戦闘機のレーダーでは届かない敵を補足することもできるし、戦場を広く見渡せるので戦力を適切に配置できる。味方にいると頼もしいし敵にいると厄介だ。
亜東共和国空軍は装備が旧式なこともあり対抗できていない。MiG-29も作戦開始時点では既に2,3機しかいなかった。天朝の支援でSu-27が少しあるから韓国空軍のT-50とはなんとか渡り合えているが、F-15KやF-35には刃が立たない。
私と玥はJ-11B。一番良い機体だから私たちがなんとかしないとこの戦いは一瞬で終わってしまう。
私たちの役目は神の杖の発射準備が整うまで生き残って破壊することだ。今のままではどこから発射されるかわからない。なんとか発射地点を特定するまで時間を稼がなくては。
<< プルコギ04 やられた! なんだあのフランカーは!! 脱出する!!>>
<< こちら爆撃機隊、敵地上部隊へ爆撃を開始する >>
<< 黒豹隊 前進する! 援護を頼む >>
私たちだけでは支えきれない。私たち以外が全滅してしまったらミサイルを阻止する暇が無くなってしまう。
「玥 ! 余り時間をかけていると全滅するわよ。 アユン隊を引きつけましょう」
「仕方ないね、もう少し付き合ってあげるね 」
<< アユン隊は我々天朝部隊が引き受ける >>
<< 漸くお出ましか。 あのJ-11は私と真希でやる。手出し無用だ >>
<< 真希、かかってきなさい >>
<< センパイ、私はセンパイと戦えるの楽しみにしてましたよ >>
「玥! アユンは任せたわよ。私は真希を教育してくる 」
「倒しちゃってもいいのね? 」
「できるならね」
アユンは先の戦闘で傷ついた機体を乗り換えているようだ。F-35は最新鋭の機体。悔しいが私では太刀打ちできそうにない。
アユンのことは玥に任せて旧知の真希の相手をすることにした。
<< 私の相手はセンパイですか >>
<< ええ、真希。会えてうれしいわ >>
<< アユンさんのとこいかなくて良かったんですか >>
<< 貴女の教育が終わったら行くから大丈夫よ >>
<< 昔みたいに弱い私じゃないですよ 後悔しないでくださいね >>
高速ですれ違う私たち。機体性能だけならばJ-11が上回っているが、F-15J改は電子装備が大幅に向上している機体だ。
お互いに急上昇、上昇率はこちらの方が上、頭上を抑えて上から機関砲で真希の機体を狙う。
射線をずらしながら背後に回ってくるF-15J改。流石にロックオンが早い。
<< センパイ、貰いましたよ >>
懐かしいな。真希の癖は全然変わってない。相手を見ずにミサイルを放つ癖。
機体を立ち上げ、急減速をし、ミサイルを交わしながら真希の背後を取る。
<< ほらほら、真希後ろががら空きよ? >>
<< なっ! いつの間にっ……くっ! >>
ロックから逃れようと左右に機体を振るが機動力でこちらが勝っている。そう簡単に逃がすものか。とは言えミサイルはまだ温存しておきたい。それにこの空域から離れたくない私は機関砲で誘導しつつ真希を追い込む。
速度を上げて振り切ろうとする真希。あらあら、そんな動きをして私じゃなければ死んでいたわよ。ロックを外した振りをして距離を取る。
「玥、そっちは今どんな感じ」
「F-35の相手はきつすぎるよ! もうフレアが残り少ないね」
「ほらね、アユンには勝てないでしょ?」
「良いから助けるね!! 」
「わかったわよ、待ちなさい 」
玥と軽口を叩いていたらいつの間にか背後に真希がいた。口だけじゃなく、成長はしているようね。
<< センパイ、私のことバカにしてるんですか。本気で戦え!! >>
ロックオンと同時に機関砲を撃ってくる。フレアを出しつつギリギリで交わす。そろそろ時間稼ぎも限界か。
後ろに回ってロックオンしながら真希に秘密回線で話しかける。
<< 真希、そのまま聞いて欲しい。 亜東共和国は今神の杖、秘密兵器を発射しようとしているの。その発射を阻止したい。協力してくれない? >>
<< この状況で協力しろって? 人をロックしておきながらよく言えますね >>
<< それはごめん、でももう時間があまりないの >>
その時山の中腹に巨大な火の玉が発生した。ついに来た。神の杖、つまり核弾頭搭載の弾道ミサイルが打ち上げられたのだ。
<< な、なんだあの火の玉は。まさか! >>
<< 同志諸君。ご苦労だった。神の杖は発射された。 全て発射されるまで守り切るのだ >>
<< 神の……杖......だと!? 馬鹿なアレを使う気か! 正気じゃない >>
<< ふははははは。 今更怖じ気づいても遅いわ。 貴様らの国土が焦土になるのが楽しみだなぁ。もちろん同盟を組んでる合衆国、日本、おまえらも例外では無いぞ >>
敵味方に動揺が広がっている。それはそうだ。あの兵器の恐ろしさを知らぬモノは居ない。
<< キムチアイより空域全機へ、作戦の変更だ。全力を持って神の杖を破壊しろ! >>
<< センパイ、アレのことですか? >>
<< ええそうよ、多分1発じゃない。 私が前に出るから私に向かってミサイルを撃って。あのミサイルに当てさせる >>
<< これは貸しですよ、センパイ >>
神の杖に向かって急加速した私に向かってミサイルを放つ真希。ミサイルをかすめるようにフレアを放ちミサイルの誘導をそらす。
弾道ミサイルの燃料に誘爆し眼が眩むほどの爆発が生じる。
目論見通り、神の杖の破壊に成功した。
<< なに!?爆発しただと。 だがまだまだある、次の発射を急げ!! >>
<< ねえアユン、聞こえたでしょ! 私と一緒に神の杖を破壊して >>
<< 凛桜、聞きたいことはたくさんあるが...... >>
<< 君の頼みならば断れないな。 共に行こう >>
<< 真希は玥と一緒に別方向をお願い。まだ弾はあるわよね >>
「玥、真希のこと頼んだわよ」
「もう帰りたいね、こっちはもうボロボロよ」
「まだ元気じゃない、目標地点の共有は任せた」
二手に分かれて次の発射に備える。久しぶりにアユンと肩を並べられて嬉しいが今はそんな一刻の猶予もない。
「アユン、待たせてごめんね。 行こう」
「ああ、まだまだ釈然としないことは多いがまずは目の前のミサイルだな」
「それにしてもそのマーク、ずっと付けていたのか」
機体のマークに気づいてくれた。
「うん……、覚えてくれていたんだね。もしかしたら戦場で貴女に見つけてもらえるかもって。もし堕とされるなら貴女がいいなって。」
「面白くない冗談はやめてくれ。凛桜のことは片時も忘れたことは無かったよ」
束の間、アユンと絆を確かめ合っていると、指令が飛んでくる。
<< こちらキムチアイ、敵ミサイルの発射地点を送信する。全てを破壊するんだ >>
真希は無事に玥と合流してデータリンクをしたようだ。ミサイルも燃料も残り少ないがギリギリ行ける。
あの二人は相性が良いようだ。次々と目標を破壊していく。
私たちも負けていられない、無駄なくミサイルを破壊して回る。アユンが最後の1つを破壊し漸く戦いが終わったかに見えた。
<< 目標全て破壊。ご苦労だった。戦いは終わりだ >>
<< 貴様らの野望は砕いたぞ。降伏するんだ >>
<< 待って、湖の様子が…… >>
突如水面が下がり湖の中から新たな火球が生まれる。湖の下に最後のミサイルを隠していたんだ。やられた。
私たちが一番近い。
「凛桜、行くぞ最後の目標だ、遅れるな! 」
既にミサイルは発射されかなり速度を増している。アユンがアフターバーナーを炊きながらミサイルに接近していく。私はもう手持ちのミサイルもないし、できることはないかな。そんな考えがよぎった時警告音が鳴り響いた。
レーダーロックされたのだ。地上の対空ミサイルが一斉に放たれる。最悪だ。アユンはミサイルを破壊するため狙われやすい。私はアユンに近づきながらありったけのフレアを放つ。次々と逸れていくミサイル、だが全てが外れたわけではない。反転して機銃でミサイルを狙い撃つ。一発撃ち漏らした。残弾は0。残された手は1つしか無い。
「アユン、ミサイルの破壊任せたよ。 最後に話せて良かった」
「凛桜、何を言っているんだ!? 」
「平和な世界を作ってね」
あぁ、ミサイルアラートが五月蠅い。今くらいは静かにして欲しい。アユンの叫びを聞きながら追いすがるミサイルに向かって愛機をぶつける。良かった、アユンを守れるんだ。裏切り者の末路ってこんななのかな……
私の意識はそこで途絶えた。




