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りんごの怪談記録メモ~怪談話の謎を解け!~  作者: たかしろひと
第3章
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車の持ち主の行方

もやもやしながらも置き傘の謎が解かれた夜から5日。夏休み中の梨郷は喫茶『エコール』に入り浸っていた。


「ねぇ、おかわり」


 カウンター席の定位置。空のグラスを差し出された。


「いい加減にしろよ。お腹壊すぞ」


「何よ、まだ3杯目じゃない」


 僕はため息を吐いた。


「わかったよ」


 言って聞かないしうるさいからな。身を持ってわからせた方が良いだろう。もちろん、腹を壊さない可能性もあるけど。


「ねぇ、露ちゃんに聞いたんだけど、相野先生辞めちゃったんだって」


「……そうか」


 大賀さんが脅しでもかけたのかな。まぁ、小学生男子と仲良くやってるのはさすがにまずかったよな。


「なーんかもやもやするわ」


「そのうちわかるから気にするな」


 梨郷が唇を尖らせる。声にならない不満が滲み出てるな。


「あ、そうだ。ねぇ、不思議なことがあったの!」


 このウキウキ加減はまたあれか。


「なんだよ」


「この前、お母さんとおじいちゃんとドライブに行ったの!」


 目茶苦茶嬉しそうに言うな。七恵さんに聞いてはいるけど。


「よかったな。楽しかったんだろ?」


「うん。それでね! 夜に田舎のコンビニに寄ったのね。周りが田んぼとか畑しかないんだけど」


 それはさすがにど田舎過ぎる。


「駐車場に車が4台停まってて、中へ入ったらお客さんが6人いたのね」


「へぇ」


 周りに他の店がないから逆に儲かるのかもな。


「でもおかしいのよ。お会計済ませた4人家族、若い女の人と若い男の人のカップルが出て行ったんだけど、私達が外へ出た時、まだ2台停まってたのよ」


「……だから?」


「おかしいじゃない! お店の中にはお客さん誰もいないのよ?」


 よくある現象だよな。店には誰もいないのに車が停まってるとか。


「そんなの簡単だろ。店員の車だ」


 梨郷は腕を組んだ。


「1台はね」


 得意気に言うってことは確認でもしたのか。


「お母さんが店員さんと話してて、車で来てるって言ってたから間違いないわ!」


 胸を張る梨郷。


「お前もしかしてわかってるのか? 店員のじゃないもう1台の車がなんで停まってるか」


「よくわかったわね? そういうこと。尚に解けるか見てあげるわ」


 なんだ、謎解きじゃなくてクイズだったのか。


「いや、なんで仕事中にお前のクイズに付き合わなきゃならないんだ」


「いいじゃない。お客さん少ないし」


 まぁ、常連さんがコーヒー飲みながらマスターと話してるだけだけど。


「さ、どういうことだと思う?」


 客でも店員でもない車の持ち主、か。


「周りには店とか民家とか、その他建物はないのか?」


「見渡す限り田んぼと畑と山と森。ちなみに山道を上ってきたわ!」


 凄いところにあるコンビニだな。どこ行ってきたんだよ。


「うーん」


 車を停めてどこかへ行ったってわけじゃなさそうだな。ということは駐車場に停める理由はコンビニで買い物をするためだろう。でも客として店内にはいなかったと。そして店員の車ではない。


「トイレにいたとかいうオチじゃないよな?」


「違うわよ。確認済みだから」


 してやったりの顔がむかつくんだけど。


「……消去法でいくなら、車の主は車の中にいたんじゃないか」


「うっ」


 分かりやすっ。いや、考えれば誰でもわかるだろ。


「じゃ、じゃあ何してたと思う?」


 焦りすぎだ。


「買ったものを食べてたとかスマホいじってたとかそこら辺だろ」


「残念!!」


 全然残念そうじゃないんだけど。

 まぁこれも消去法だな。


「ただ車にいたわけじゃないんだな?」


「え、えっと」


 何かしてたのは間違いないと。

 僕は少し考えて、


「その車ってトラックか?」


「えっ」


「当たりか。なら運転手は寝てたんだな」


「むぅ……」


 正解だったらしい。コンビニの駐車場でよく見る光景だよな。

 それを謎解き問題にして出題してくるとは。やるな。


「じゃ、じゃあ本題に入るわよ!」


 ……え?

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