雨の日の置き傘13
僕が二人を、というか梨郷を足止めしている間に中で何か話し合いが行われ、十分ほどで終わったらしい。その間のやり取り。
「もお、どいてっ」
僕の腹を思いっきり両手で叩く梨郷を必死で押さえる。
「やめろ、バカ。何むきになってんだよ」
「あんたが隠すからでしょっ。ずるいー」
「ずるくない。隠してないっ、いい加減にしろ」
「なんで必死なのよっ」
「それはおまえだろっ」
夜にこんな大声上げることになるなんて。
「あ、あの、二人とも落ち着いて」
ほら露ちゃん困ってるだろ。
こういうのはアクシデントで見せるものじゃないからな。学校で習うか親に教えてもらってくれ。
「あらあら、何騒いでるのかと思えば」
僕はびくっと肩を揺らした。大賀さんが戻ってきたようだ。扉を開けて廊下へ出てくる。
「お、大賀さん、さっきのは」
「ええ、ばっちり写真撮ってきたわよ? あの浮気性淫乱講師の」
くすくすと笑う。
浮気性って相野さんのことか。
「まったく、小学生の男の子捕まえてよくやるわよね」
そういうことか。相野さんてヤバい人なんだな。大賀さんも大概だけど。
「どういうことですか?」
露ちゃんの問いに僕は大賀さんを見やった。仮にも子供たちに勉強を教える立場なんだから上手い説明してほしい。
「茅部君は全部分かってるから説明してもらいなさい?」
おい。
「そうなんですか?」
「やっぱり、分かってるんじゃない。どういうことなの?」
梨郷はかなり不機嫌そうに言って来る。
「どういうって」
「さて、車に戻りましょ」
大賀さんが歩き出してしまったので、仕方なくついて行く。
「で?」
僕はため息を吐いた。
「あの傘の目印を使ってたのは相野先生で、ここの塾生の男子小学生と……お、お付き合いしてたんじゃないかな」
「えっ、何その言葉遣い」
「お付き合い……こっそり二人で会ってたってことですか?」
露ちゃんが顔を赤らめていう。
「う、うん。多分」
「だから何その言葉遣い。気持ち悪いわよっ」
僕は咳ばらいをした。
「ま、先生と生徒でそういう関係になるのはよくないことなんだ。だから誰もいない塾で会ってたんだな。相野先生は他の生徒と先生がいなくなるまで隠れてて、自分の指紋でセキュリティを操作できるようになったら相手の男子小学生を中へ入れてたんだ。」
「でも、大賀先生と皆で見回った時塾の中には誰もいなかったですよ?」
「隠れてたのは男子トイレだろ」
梨郷と露ちゃんは顔を見合わせた。
「え、じゃあ」
「一緒に見回ったその男子が相手だな」
男子トイレを確認したのは彼だと言ってたしな。
てか、大賀さんは完全に知らんぷりだ。僕の出番はないとか言っておいてなんなんだ。




