雨の日の置き傘6
うーん。外からの侵入が難しいなら、塾の中にいた可能性が強いな。
何らかの目的で塾内に残り、朝までに傘を持って出ていった……ってことか。
ふと視線を感じ、視線を動かすと、梨郷がキラキラした目で僕を見ていた。
僕は自分が思ってる以上に思ってることが顔に出やすいのだろうか。
「ね、何か分かったんでしょ?」
梨郷の反応を見る限り、何かを閃いた! みたいな表情をしてたんだろうな。
「へえ、凄いじゃない。聞かせてもらおうかしら」
「いや、分かってないですって。お前も期待するな」
僕は大賀さんへ視線を向ける。この人、怖いけど協力してくれるっていうし、聞いて損はないよな。
「大賀さん、この塾のセキュリティがちょっと変わってるって聞いたんですけど」
こういうことを堂々と聞くのも抵抗あるけど。
「ええ、塾長が拘ったみたいね」
それから説明してくれたシステムについては梨郷に聞いた通りだった。当番の講師が指紋認証で鍵を閉めると、次の日の当番にその権限が移るのだ。
「ちなみに、中からそのカギは開けられますか? 開けられた場合、鍵の状態はどうなります?」
「中から? 試したことないわね」
ないのか……。
「でも、閉じ込め防止でセンサーと連動して、塾内で動くものがあったら閉められないようになってるから開けられないんじゃない?」
「センサー。防犯も兼ねてるんですね」
そんなに甘くないか。
「中から開けられることと、傘がなくなってることって関係ある?」
梨郷は眉を寄せていた。
こいつはこの現象をどう捉えてるんだ。犯人、100%人間なんだから繋がるだろ。
「露ちゃんはなんで傘がなくなるのか気になってるのよ?」
「それをつきとめるためには、必要な過程だろ」
「かていって何?」
悔しそうに僕を睨む梨郷である。
「えーと」
どう説明するかな。
「例えば、ファミレスなんかでハンバーグが食べたいと思った時に注文すれば出てくるけど、それを作ってる人はいるわけだ。作り方が分からないと自分では作れないだろ?」
「む……それはわかるけど、なんで消えるのかが知りたいのよ。それの意味っていうか」
意味か。それが消える理由。うーん、僕の捜査の方向性は確かに少しズレてるけど、最終的にはそこへ行き着くと思うんだけどな。ていうか、推測しろって言ってんのか?
仕方ない。不満みたいだし、考え直すか。
「激甘」
見ると、大賀さんがにやにやしていた。




