雨の日の置き傘4
約束の日はすぐにやって来た。
翌日に雨が降ったのだ。
「……こんな日になんで」
「ちょっと文句言わないで。私だって雨は嫌いなのよ」
隣を歩くのは桃色の傘を差した梨郷である。
「お前、カッパじゃなくていいのか? 黄色い奴」
「幼稚園生!? また子供扱いしてぇ」
子供でも大人でもカッパくらい着るだろ。まあ、黄色いやつは半分からかったけども。
「あー、もう。くだらない話してる間についたわよ」
「ここか」
『大佐塾』、その建物は三階建ての細長いビルだった。駅前という立地が関係しているのだろう。入り口はガラス扉ですぐ階段になっている。ちなみに小学生が対象らしい。
「僕もお前も部外者だけど入って良いのか?」
「玄関なら大丈夫よ。……多分」
多分て。
「ていうか、露ちゃんは?」
てっきり待ち合わせしてるものだと思ってたけど。
「今日は用事があるって。塾は毎日やってるみたいだから」
梨郷が暗い顔をしたので、それ以上は止めておく。露ちゃんは別の友達と遊びにでも行ってるのか。
びくびくしても仕方ないので、堂々とガラス扉を開ける。
「これが傘立てじゃない?」
入って右側に傘立てがあった。ステンレス製で数十本は入るだろうか。僕は天井と床を見、玄関を見回した。靴を脱ぐスペースは子供が五、六人立てるくらいの広さ。そして階段のそばに靴箱が並んでいる。
雨の日で当然だが、傘立てには色とりどりの傘が並んでいる。これ、露ちゃんがいないとどの傘かわからないし、聞き込みも難しいだろ。
「どう、わかった?」
「これだけで何がわかるんだよ。まあ、いいや。つまりこの傘が全部なくなって子供が帰ったあとに傘が一本残って、それが次の日の朝にはなくなってるんだな?」
「ええ、そういうことね」
僕は外へ出て、ガラス扉の横のセキュリティ端末へ視線を向けた。鍵がついているので、カバーを開けることができないとなんとも。
「……帰るか」
「なんでよっ」
この状態で現場検証は無理だ。関係者がいないとな。
「露ちゃんがいる時に改めて来たほうがいいだろ」
「……でも」
なんで納得いかないって顔するんだ。
と、その時。
「君達何してるのかな?」
振りかえると、二十代半ばの若い女性が立っていた。




