絵の中からの視線2
梨郷はじっと絵を見つめながら、ストローをくわえた。
「あの絵、曰くがあるのかもしれないわね……。尚、出番よ!」
明らかに表情が緩くなり、テンションが上がった。
「何が出番だ。だから、ライトで照らされて、そう見えたんだろ?」
「ライトは動かないじゃない。なのに光るわけないわ。それにさっきからずっと観察してるけど、光らないわよ?」
僕ももう一度絵に視線を向けた。
目が合ってると言えば、合ってるか。絵がかけられている位置は壁際のテーブル席の右側、椅子の背もたれのやや後ろ辺りだ。そういえばさっきまで客が座っていたな。
「ん……?」
「どうかした?」
「いや」
あのテーブル席のろうそく型照明、少し光が弱くないか? いや
、むしろ僕達の席だけ明るさが違う?
ちょっと目を離した隙に、梨郷が手を振った。
「すみませーん、店員さん!」
「あ、こらっ」
もちろん、呼ばれた女性店員は僕達のテーブルの横へとやってきた。
「追加のご注文ですか?」
「えーと。あれってなんていうな絵なんですか?」
店員さんは首を傾げて振り返る。
「あれはうちのマスターが描いたものです。だから題名はありませんよ」
ここのマスターは絵を描くのか。この内装を見るに、独特の世界観を持っていそうだとは思っていたけど。
「良ければ、近くでどうぞ」
店員さんは笑顔でそう言ってお辞儀をし、戻って行った。
「調査開始ね!」
「なんの調査だよ。ていうか、別に絵の目が光るくらい良いだろ。そういう時もある」
「そういう時ってどういう時よ」
梨郷はナッツオレを凄い勢いで飲み干し、絵の方へと駆けて行った。
ああなると、止められないんだよなぁ。
僕がナッツオレをすすっていると、すぐに梨郷が戻ってきた。
「やっぱり怪しいわ。目の部分だけ他とは違う絵の具が使われてる気がする!」
気がするだけかよ。
僕は頬杖をついた。
「他に気づいたことは?」
「ずっと見てても目は光らないわ! やっぱりさっきの一瞬だけだったのよ」
「一瞬光った、か」
つまり、その瞬間だけ周りで何かが動いたのか。光る原因は照明で間違いなさそうだし。
「そうそう、私達のテーブルのろうそくだけ、少し明るい気がするのよね」
それは僕も思った。絵の近くの席、テーブルのろうそくの光と見比べると違いが分かる。
と、テーブルのろうそく型ライトがゆらりと揺らめいた。
ろうそく型というだけあって、こうして時々風に吹かれたような動きをする。
「原因はこれか?」
「ろうそく? でも、今は光らないわよね」
「ていうか、光った原因が知りたいってことで良いんだよな?」
「最初から言ってるじゃない」
「ライトの光が反射した……って答えじゃダメなのか?」
「それじゃつまらないじゃないっ、ほら、尚もちゃんと見て」
腕を引っ張られ、仕方なく立ち上がる。抵抗してもよかったが、反動でカップや水のグラスを落としたら大変だ。
「早く、早くっ」
まったく、こいつといるとろくなことがないな。




