梨郷が考えているものは1
「ねえねぇ、今暇?」
僕は珈琲カップを磨きながら、梨郷を見やった。
「バイト中だ」
「お客さんいないじゃない。ちょっとゲームしない?」
夏休み二日前。いつものごとく僕の前には梨郷が座っている。ちなみに今日は珍しくアイスティーだ。
「どんな?」
道具を使わない系のゲームなら受けてやっても良いけど。
「えーと」
梨郷は小さな手帳を開いた。
「まず、問題を出す人があるストーリーを考えます。なんでも良いんだけど、謎が隠された不思議な話が良いみたい。他の人は問題を出す人に質問するのね。YES/NOで答えられる質問よ。そうやって、ストーリーの謎を解き明かして行くっていうゲーム」
「あぁ、やったことあるな。確か……水平思考ゲーム?」
「そんな名前だったかも! じゃあ、『海亀のスープ』っていう話でやるわよ」
僕は一瞬固まった。目をそらす。
「悪いけど、それの内容知ってるぞ」
このゲームにおいて、かなり有名な話だ。聞いたのは小学生の頃だったので結構ダークな内容に思えた。
ちらっと見やると梨郷が凄い表情をしている。人間の絶望したような顔って初めて見た。いや、ただのゲームでそこまで?
「おい、大丈夫か?」
「……出直して来るわ」
なんでそんなにダメージ受けてるんだよ。
「なら、似たようなゲームやるか」
「え?」
「まず、お前はゲームの問題の答えを考える」
「答え?」
「算数で1+1は?」
「物凄くバカにされてる気分だわ」
梨郷は頬を膨らませた。
「良いだろ、例えなんだから」
「2、でしょ!」
逆ギレ寸前だな。
「そう、その答えを先に考えるんだ」
「問題の方は?」
「問題は一つだ。『私の考えてる答えは何か』お前はその問題を僕に出す」
「んー……ん?」
「海亀のスープと同じだよ。お前が設定した答えについて僕が質問を繰り返し、それに対して『はい』か『いいえ』で答えるんだ。難しいなら『どちらでもない』でもいいぞ」
「あ、そういうこと」
「質問は十回。ただし、答えは紙か何かに書いておけよ。途中で変えられたらゲームにならないからな」
「う、うん」
僕はボールペンと紙ナプキンを梨郷の前に置いた。僕に隠しつつ、問題の答えを書いていく。
梨郷の場合、子供っぽい答えにはしないだろう。無理矢理難しい答えを設定して来そうだ。
「はい、書いたわよ!」
「ん。じゃあ、始めるか」




