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りんごの怪談記録メモ~怪談話の謎を解け!~  作者: たかしろひと
第1章
23/91

窓の外の廃村2

 翌日、再び梨郷が攻めてきた。


「尚ー!」


 店へ入るやいなや、僕の立つカウンターの前へ。


「ご注文は?」


「カフェオレ、アイスで!」


 はいはい、いつも通りっと。

 グラスに氷をいれていると、梨郷がカウンターに十数枚の写真を並べた。


「言われた通り撮ってきたわよ! 現場写真」


「わざわざ現像してきたのか?」


 僕はアイスコーヒーと牛乳をグラスに注ぎつつ、写真へ視線を落とした。


「これが音楽室の写真よ」


 音楽室関係の写真数枚。音楽室周辺の廊下、扉、入り口からの室内、壁の音楽家の肖像、ピアノ、黒板と教壇、教壇から見た生徒用の机、問題の窓とカーテンにベランダの様子二枚。


「ふーん?」


 枚数多いから、間取りが想像しやすい。

 音楽室の入り口は一つ。入って右は壁、左を向くと生徒達の机が並んでいて、その先に教壇と長い黒板、そしてピアノ。窓の外に見えるのはベランダの手すり……え?


「お前、この写真よく見たのか?」


 僕はベランダの写真を掴んで梨郷に見せる。


「何?」


「どの位置から窓の外を見たのか知らないけど、少なくとも室内から外は見えないみたいだぞ」


 手すりは意外に高い。恐らく飛び下り防止なのだろうけど、小学生の身長では空しか見えないだろう。もちろん、ベランダに出たなら別だ。


「何言ってるの? 異世界に迷いこんだのよ? 手すりで見えないなんてあるわけないでしょ。そんな常識は通用しないわ」


 僕は呆れて、カウンターに両肘をついた。


「お前なぁ、今まで幽霊がイタズラの犯人だったことあったか? 異世界確定なら、僕達は何を調べようとしてるんだよ」


「う……」


 異世界なら異世界で別に良いけどな。異世界話を信じておらず、それを証明したいからこんなことをしてるんじゃないのか。


「だって…………あ、そうだ。異世界かそうじゃないかを知りたいのよ! どっちなのかをね!」


「だったら、決めつけるのは良くないだろ。現に手すりで外が見えないのに、その六年生は見えたって言ってるんだからな」


「も~っ。なら、夜の学校に行って見ましょ! 写真より現場を調査するわよ!」


「なんでそうなる」


 しかし、梨郷は即行動に移した……。



 バイト終わり、僕は梨郷の小学校の前にいた。時刻は夜の七時。  もちろん、居残りしている小学生はおらず、正門近くの警備員室の明かりがついている。朝と夜の見回りをするために雇われているのだ。ちなみに日中はいない。


「本気で行くのか?」


「当たり前でしょ。ちゃんと兄の振りをするのよ?」


 梨郷の指示で僕達は手を繋いでいる。忘れ物を取りに来た兄と妹……という設定だ。


「さ、行くわよ」


 梨郷に引っ張られ、門をくぐる。


「なぁ」


「何よ」


「お前、前は兄妹扱いを嫌がってなかったか」


「……本気で間違われるのが嫌なのよ。今は作戦中」


「作戦、ね」


 さて、警備員室に着いて窓口を叩くと眠たげにアクビをする中年男性が出てきた。


「んー? なんだ、君ら」


 寝てたっぽいな。


「四年生の今居です。忘れ物しちゃって。入っても良いですか?」


「……君は?」


「妹の付き添いで」


 思いっきり怪しまれたけど、なんとか侵入に成功した。


「もう、危なかった。尚が真剣にやらないから」


 いやいや、僕が真剣にやっても怪しいって。

 さて。昇降口から中へ入り、一階廊下から渡り廊下を通って隣の校舎へ。音楽室は三階だそうだ。

 道中、さらに詳しく聞いてみることにした。


「やっぱり気になるんだよな」


「何が?」


「廃村だ。その言葉は本当にその六年生から出たのか?」


「だからそう言ってるでしょ? ……多分」


「自信ないのか?」


「そうじゃなくて、改めて聞かれると」


 僕は考える。小学生から『廃村』などという言葉が出たのは何故か。窓の外の光景を見て、そんな言葉がすぐに出るとは思えない。考えられるのは、何かの影響。大人が口にしていた、とか何かの映像を……あ。


「確か全校生徒でミステリー映画を見たんだよな?」


「え? ええ。そうだけど、それが何?」


「どんな内容だった?」


「海の見える別荘で、殺人事件が起きるの。嵐が来て、閉じ込められて」


 廃村とまったく関係ないな。だとしたら授業で聞いたのか? と、その時。


「ん!?」


 僕は思わず梨郷の服の襟を掴んだ。


「ヴッ!? 何すんのよっ、信じらんないっ」


「い、今のは悪かった。すまん」


 それにしても凄い声出したな。


「で、なんなの?」


 丁度、渡り廊下の扉を開けようとしたところだったのだが、ノブの少し下に赤い光を放つ妙な機械が取りつけられていたのだ。


「……」


「尚ー?」


 なんだろう。でも、なんか良くないものの気がする。


「梨郷、ここを通るのは止めよう。外から入れないか?」


「え……そうね、非常階段を上って三階の非常口からなら」


「ならそっちへ回り込むか」


「何? どうしちゃったの」


「ちょっと気になることがあってな。ああ、そうだ。最初にこの話を持ってきた時に言ってたよな? いくつか変な噂を聞いたって。その異世界の話以外に何かあったのか?」


「もしかして、資料室から聞こえる話し声……のこと?」

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