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大嫌いは恋の始まり  作者: 氷室ユリ
第一章 大キライな人を守る理由
40/215

8-(6)

本牧埠頭D突堤。とある倉庫にて。


「新堂先生!無事ですか?!」


 一番奥で拘束されている、新堂の目と鼻の先まで車で突っ込み、急停車する。


 慌ててドアを開けて飛び降りる。

 辺りに漂う、ゴムの焼けるような臭いは、私が無謀な運転をして来た事を物語っていた。


「これは驚いた…。派手なご登場だな!」


 そう言って私を見上げる新堂を確認する。

 顔には、いくつか殴られた痕があるが、大きなケガはなさそうだ。


 すぐに絡みつくロープを解いて、彼の自由を取り戻す。


「いつの間に免許を?…無免許運転か」と軽く肩を回しながら、不審そうに語る彼。


 私が教習所に通う暇などなかった事を、彼は知っている。

 誤魔化しようがない。


「今は、そんな事どうでもいいでしょ!」

 イラ立ち気味に言い返して、敵の方に目を光らせた。


 一同は呆気にとられた様子で微動だにしない。


「私の、先生に取り上げられちゃって。それ、ちょっと貸してほしいんだけど」

 一番近くの一人に近づき、拳銃を持った方の手首を掴む。


「何をする!」男は力ずくで私を振り切ろうとする。


 素早く、掴んだ男の手首を逆手に捻って、銃を奪う。

 そしてすぐさま投げ飛ばした。


 次に、私達に向けられている銃に狙いを定める。

「動かないでよね!死にたくなかったら」


 そう断った後、片っ端から男達の手にする拳銃を撃ち落として行った。


 的を狙うのは得意なので!

 

「お見事…!」新堂が私の銃裁きに目を丸くしていた。


 何人かが、落ちた拳銃を拾おうと腰を屈める。

 敵に近づきつつ、透かさず立て続けに発砲しては、それを弾き飛ばす。


「動かないでったら!」


 弾切れになった拳銃を捨てて、弾き飛ばした別のを拾い上げる。


 最後に、悪の根源、義男へと銃口を向ける。

「今度こそ、息の根を止めてやる!」


「…ユイ!やめるんだ!」思い出したように新堂が叫ぶ。


 それを無視して、照準を合わせるために再度グリップを握り直す。

「あんただけは殺す」


 銃を取り落とされて呆然とする奴の配下達に、今のところ死人はいない。


 全員の視線を感じる。


「やめろ!」まだ腰を落とした状態の新堂が、再び叫ぶ。

「なぜ?!あなたは殺されかけたのよ!」


「私は無事なんだ、もういい!」

 無事を伝えるべく、新堂は何とか立ち上がって主張する。


 その様子をチラリと見て、腹の底から押し出すように言った。

「良くない!こいつは、何度でも同じ事をして来るんだから。今のうちに…」

 視線を義男に向け直す。


 この男は、神崎さんの仇である事も判明した。

 絶好の機会じゃない!コイツは絶対に許さない…。


 そんな決意を固めた時。


 遠くの方からパトカーのサイレンが聞こえて来た。恐らく呼んだのは神崎さんだろう。

「…余計な事を」もう時間がない…。


「さあ、警察が来ないうちに、その銃を捨てろ!」

 私の横に辿り着いた新堂が、拳銃を奪おうとする。


「何するのよ…!」

 振り切ろうとしたけれど…。


 この時、またしても新堂の表情が悲しそうに見えた。それはいつもの、勝ち誇った顔とは違った。


 近づくサイレンの音もあり、仕方なく銃から手を離した。

 コンクリートの床に、乾いた金属音が響く。


 その音が合図になったかのように、義男達も移動を始めた。


「さあ、こっちも急ごう!」彼が私の腕を取る。


 突っ込んだ衝撃で、無残な姿に変わり果てた車に駆け寄り、助手席のドアをこじ開ける新堂。


「早く乗るんだ!」


 私を中へ押し込むと、猛スピードでその場を脱出したのだった。



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