表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大嫌いは恋の始まり  作者: 氷室ユリ
第一章 大キライな人を守る理由
14/215

3-(4)


 翌朝。


 入院中の母の看病のために、一週間ほど休むと学校に連絡を入れた。


 そして病院へ向かう。

 

 もう一度、母の顔を見たかった。

 これから犯そうという罪に怖気づく自分を、奮い立たせるために…。


 もちろん直接会うつもりはない。

 こんな平日の朝に母に会える訳がない。すぐに学校を休んだ事がバレてしまう。


・・・


「ユイちゃん!」


 母の病室へ向かっている途中、廊下の後ろの方から声がした。


「片岡先生…」

 誰にも会いたくなかったのに。


 こういう時に限って、必ずと言っていいほど、会ってしまうものみたい。


「昨日はあれきり、姿が見えなくなってしまったから…。心配していたんだよ?」

 私が黙り込んでいると、先生が続ける。

「ユイちゃん、学校はどうしたんだね」


「ちょっと、ね」仕方なく、歩き続けながら答える。


「お母さんの事だったら、僕が付いてるから。ちゃんと学校に行きなさい」

 私の前に立ちはだかった先生。


「付いてるだけじゃ治らないでしょ!もういいから。別の先生に頼んだから」

 そう言い返して再び歩き始める。


「新堂の事か。あの男はやめなさい!」

 ついに先生が、私の肩に手を置いた。


「片岡先生に、とやかく言われる筋合いはないわ!」

「ユイちゃん。あの男に関わるな。警察沙汰に巻き込まれたくなかったら…」


「上手くやるからご心配なく!」 

 法外な手術代を請求された事を言っているのだと思った。

 

 ところが、そうではなかったみたい。


「知らないだろうが、奴は無免許だよ」


「え?」一瞬、何を言われたのか分からなかった。

 無、免許…?


「それって、医者じゃないって事?お母さん、助けられないの?でも、超一流の腕って」

「いや、まあ…。何とも言えないんだが…。とにかく!あいつだけはやめるんだ」


 先生の答え方は曖昧だった。


「意味が分からない!なぜダメなの?助けられるなら文句はない。免許なんて、なくてもいい」

 あの時、ナースが何を言おうとしたのかが、これで分かった。


 でも、そんな事は私にはどうでも良かった。母さえ救えれば…。


 例えあの男が闇の世界からやって来た悪魔だろうと、契約を交わす決意を変える気はなかった。

 

 私は母に会うのを諦めて、先生を振り切って病院を後にした。


・・・


 向かった先は、とある怪しげな組織。


 昨夜こっそり、父親の会社に忍び込んで闇求人を閲覧した。

 そこで見つけた、〝血液高価買取〟の文字。

 

 私の血液型はB型RHマイナス。


 中里さんも言っていたように、日本で二百人に一人しかいないとされている。

 つまりこの血液は、通常よりは高く売れるという事になるのでは?


 リスクばかりを唱えられて来たけれど、特殊な血も役に立つ!


 とは言え、五千万には到底及ばない。また神崎社長に借りる他ないのか…。


 様々な議論が、私の脳内で繰り広げられていた。

 とにかく時間がない。行動に移さなければ。


 そんな焦りの中で行なわれた交渉にて。


 自分がどんな人間であるのかを、改めて思い知った。

 何せ値を吊り上げるための交渉劇は、まるで父の様だったから…!


 私が朝霧家の人間だとほのめかすと、途端に相手の態度は急変した。義男の存在が、こんなにも絶大だという事も初めて思い知る。


 結果的に私の血液は、四百五十万という額になった。

 

 初めての交渉事に成功した上に、予想外の展開で倍以上の収入に!


 けれど。

 出足好調だったのも束の間。


 極度の貧血のせいもあり、次の手は全く浮かばず。すぐにその勢いは消え去った。

 

「やっぱり、お金を稼ぐのって簡単じゃないや…」


 お金を手に入れる事の厳しさを思い知るのだった。


遠い過去、実際に血液売買はされていたようですが。あくまでフィクションです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ