第四話:星九天玉とギルドと出会い⑶
翌日、星九は拠点に一人でいた。
塔の挑戦は思いの外楽しかったが、疲れたのでゆっくり休もうと思い、拠点にある階段にいつも通り座り込み、ギルド勧誘をしていた。
(レベル上限は達成したし、今はゆっくり休もう……)
この時のレベル上限は60…
十八階まで登り詰め、やる事が無くなっていた。
(しかし、あのスキルは何だったのだろう?)
あのスキルと言うのは昨晩の塔に挑戦した時、Kさんが別れ際に放ったスキルの事だった。
その後、星九はグラディエーターに転職してスキルを確認したが該当するスキルは見つからなかった。
「一体なんだったんだろう……そうだ!ギルドチャットで聞いて見よう。」
ギルドチャットを開き、メンバーさんに経緯を説明した。
「………そのスキルが分からないのですが」
「あ、EXスキルじゃない?」ミカさんが直ぐさま返信をして来た。
「「EXスキル?」」シルティアさんと星九は首を傾げて尋ねた。
「そうそう、ウィザードの雷を身に纏う奴やエレメンタラーの魔法陣のスキルをEXスキルって言うんやで!」
「なるほど……アコライトの場合はどんなのだろう?」
「アコライト系は回復スキルとちゃうんかな?」
「EXスキルが強い事は分かりましたが、どうやれば習得出来るのでしょうか?」
「ダンジョンで進化の脈石を五個集める必要があるんや……けど、その前にウィザードならウィザードのスキルを全部マスターせなあかんけど。」
「なるほど……では、クルセイダーのスキルマスターしないとダメって事ですね。」
「せや!進化の脈石五個をEXリングに変えたら使えるで!」
ミカさんはそう言い、ギルドチャットから離れた。
星九は立ち上がり、十八階に向かった。
………………
…………
……
十八階は海と海賊をモチーフにした階だった。
星九は海賊を狩り続けた。
「あ、ボスが湧いてる。」
奥を見ると一際大きな海賊のモンスターが体を回転しながらこちらに接近しつつあった。
「バックスラスト!」
星九は一歩後ろに引き、身体を回転しながら攻撃を仕掛けた。
「クロスブレイド!」
斬撃を前方に飛ばし、ボスの足止めをする。
壁際まで追いやり、後はひたすらにバックスラストとクロスブレイドを使い倒した。
………………
…………
……
「アレ?何か落ちてる。」
星九は海賊のボスを倒し、ドロップ品を確認していると見慣れないアイテムが入っていた。
(バルバロスの魂晶……何だろう?)
星九は説明文に目を通した。
装備箇所:武器、効果:対プレイヤーの時にダメージ+5%アップ
「へぇー、対プレイヤー時に5%アップか……5%アップ!?」
星九は片手剣に付けよと思い、再びバッグにバルバロスの魂晶を戻した。
………………
…………
……
「ふぅ……何とかクルセイダーのスキルをマスターした!」
星九は数え切れないくらい十八階のモンスターを倒し、クルセイダーのスキルを制覇した。
(しかし、進化の脈石ってダンジョンで入るって聞いたけど、どのダンジョンだろう?)
星九はダンジョン受付前に立っていた。
「降臨ダンジョンとチャレンジダンジョンとギルドダンジョン……どれなんだろ?」
星九はダンジョンを眺め、説明文を読み始めた。
降臨ダンジョンは、各階層のボスを倒したら魂晶や進化の脈石が入ります。
チャレンジダンジョンは、次々現れるボスを討伐するダンジョン。
ギルドダンジョンは、最大50人まで入れるダンジョンでギルドで降臨ダンジョンやチャレンジダンジョンに挑戦出来る。
(降臨ダンジョンから行ってみようかな……)
「最大五名まで入れるみたいだけど、ソロでも多分大丈夫だよな……?」
そう呟き、星九は降臨ダンジョンに挑戦した。
薄暗い空間に放り込まれ、辺り一面に虫がいた。
「うわぁ、懐かしい……フェンリルさんとシルティアさんとパーティ組んだところだ。」
ダンジョンはメインタワーの九階から十二階を一つのダンジョンにしていた。
「虫が居るって事はボスは巨大ムカデか……」
巨大ムカデと呼ばれるボスは、地面に潜り地中から姿を表し、毒のブレスを吐いて来るボスだった。
「あの時はフェンリルさんに倒して貰ったな。」
そう呟き、九階の虫に目をやる。
「頑張るか!」
スキルを放ち、虫達を倒し終えたら次の階が出てきた。
………………
…………
……
難なくクリアし、巨大ムカデがいる十二階に辿り着いた。
ボスは出会い頭に毒のブレスを吐き、地中に潜り始めた。
星九は勘を頼りにクロスブレイドを設置し、ボスが再び現れるのを待つ。
しかし、ボスはクロスブレイドと違う場所に姿を現し、突進を仕掛けて来た。
星九は突進を掻い潜り、側面にバックスラストを当てる。
巨大ムカデは突進後に、立ち上がり円を書くかの様に毒のブレスを吐く。
接近していたのが幸いし、毒のブレスに当たらずに胴体にクロスブレイドを当てダメージを蓄積する。
その後もムカデは突進と毒ブレスを交互に行い、ひたすらにクロスブレイドとバックスラストでカウンターを当てていた。
………………
…………
……
「疲れた……」
星九は無事巨大ムカデを討伐し、ダンジョンの入り口に帰還した。
バッグを確認すると進化の脈石が二個入っていた。
「残り三個か……よし、次!」
………………
…………
……
その後、ムカデ討伐を三回戦終えた時に進化の脈石は五個集まった。
「これでEXスキルが取れる!……EXリングって言っていたからアイテムショップか鍛冶屋かな?」
星九天玉は拠点に戻り、アイテムショップと鍛冶屋を覗いて見たがどちらともにEXリングの作成は無かった。
(うーん、何処で作成出来るのだろう?)
肝心のミカさんとフェンリルさんは不在でギルド内にいるのは星九とシルティアさんと他のメンバーさんが二、三人だけだった。
(手当り次第探すか!)
そう言い聞かせ、再び拠点をウロウロする事にした。
転送管理人に話かけ、転送先を確認していると新たに限解の間という場所が追加されていた。
(こんな場所あったかな?)
そう思い、転送先を限解の間にして転送された。
………………
…………
……
限解の間は、辺り一面黄金の部屋となっていた。
地面には赤いカーペットが敷かれており、奥に進むとNPCが二人いた。
一人はクエスト管理人、もう一人はスキルマスター。
星九はスキルマスターの方に話しかけた。
「EXスキルを解放されるのですね。」
「はい、進化の脈石を……」
「確かに……それではクルセイダーのEXリングをどうぞ。」
クルセイダーのEXリングを手に入れ、装備してみた。
「アストラルクロスを使えるリング……試しにやってみよう!」
「アストラルクロス!」
スキル名を発した瞬間、巨大な斬撃が現れ四、五メートル先まで直線上に進んで行った。
再度使おうとしたが、クールタイムが長く多用は出来なくなっていた。
(威力はどれくらいなんだろう?)
「EXリングを手に入れたし、今日は勧誘しよ。」
………………
…………
……
再び拠点に戻り、定位置である階段の段差に腰を掛けてパーティを開き勧誘を始めた。
「まったり系ギルド、紅葉の木メンバー募集中〜。」
すると、一人の男性プレイヤーがパーティに入って来た。
「初めまして!」
「初めまして、ギルドに入りたいですが大丈夫ですか?」
「はい、空きはあるので大丈夫ですよ!」
「ありがとうございます。」
パーティを抜け、男性プレイヤーはギルド案内所に向かい申請をして来た。
「よろしくお願いします。絶望さん!」
「絶望さん、よろしくね!」
「よろしくお願いします。」
「分からない事があれば聞いてくださいね!」
「はい!友人も連れて来て大丈夫?」
「全然大丈夫ですよ!」
「では、連れて来ます。」
そう言い、絶望さんはログアウトした。
ギルドのメンバーは30人中25人。
これは日々、星九天玉やミカさんなどを筆頭にメンバーさんがゴールドを寄付しているため、最近ギルドレベルが上がった。
ギルドレベルが上がった恩恵として、ギルドスタイルが追加されており、ギルドスタイルは五種類存在している。
傭兵は、対人戦におけるダメージを5%減少。
商人は、店でアイテムを売る際に3%アップ。
探求は、モンスターからのドロップ率を3%アップ。
保身は、デスペナルティを11%減少。
守護は、モンスターからのダメージを3%減少。
となっており、この中から最大三個まで選択する事が出来る。
星九はメンバーさんと相談した結果、探求と保身と守護にしていた。
………………
…………
……
翌日、絶望さんからの紹介を受け、£楓£さんがギルドに入り、ギルドは賑やかになった。
「絶望さんの紹介で入りました、楓と言います。」
「「「「よろしくお願いします。」」」」
「何もないギルドですが、よろしくお願いします。」
「マスターさん、申請許可ありがとうございます。」
「いえいえ!」
「実は私、本家の方でギルドマスターをしてます。」
「本家?」
「はい、このゲームの本家ね!」
「なるほど……では、ベテランさんですね。」
「ベテランになるのかな?一応ギルドマスターをしているから頼りにして貰っても大丈夫ですよ!」
「はい、分かりました!」
………………
…………
……
楓さんは絶望さんと一緒に狩りに出掛けた。
両者共にウォーリアだが、ベテラン同士なので心配は要らないだろう。
そう思い、星九は勧誘を再開した。
勧誘中にフレンドチャットが開き、相手を確認すると楓さんだった。
「そう言えば、今空いてます?」
「空いてますよ〜。」
「じゃあ、無制限2に来て下さい!」
星九は勧誘を中止し、無制限2に向かった。
無制限2に着くと絶望さんと楓さんが二人で戦っていた。
ステータスは分からないが、楓さんが放ったスキルで絶望さんは倒れた。
「来ましたよ!」
星九が声を掛けると楓さんは気が付き、こちらをジーと眺めた。
「……マスターはPvP得意な方?」
「いえ、あまり……」
「そっか……じゃあ、試しにやってみましょう!」
楓さんが武器を構える。
武器は片手剣二刀流で職業はクルセイダー。
星九は片手剣と盾を構え、楓さんに向かい合う。
「では、よーい。」
「ドン!」
掛け声と共に楓さんと星九は接近し合う。
楓さんは一歩下がり、両手に装備している片手剣を回転しながら切り付ける。
ダメージを確認する間もなく、次々と攻撃が星九を襲いかかる。
星九は一旦離れ、距離を取る事にした。
楓さんがこちらに来るのを見計らい、正面を向いた。
「アストラルクロス!」
巨大な衝撃波が楓さんを襲うが、楓さんは横にスライディングして回避。
「バックスラスト!」
回避したのを確認し、星九は一歩下がり前方に回転攻撃を行う。
「……あ、しまった。」
楓さんはバックスラストを受け、地に倒れた。
………………
…………
……
「まさか二人共、攻撃極振りとは……。」
「「だって、対人仕様だからね!」」
「通りでHPが半分持って行かれた筈……」
「あはは……ってマスターは硬すぎでしょ?」
「このゲームで恐らく唯一のタンク型ですから!」
「……何でタンク型にしたの。」
「ちょっとでも粘って勝ちたいからかな?」
「何それ!」
楓さんは呆れながら言うと絶望さんは「まぁ、良いんじゃない?マスターだし。」と納得した。
「それで用件は何ですか?」
「……そう!日曜日は本家で攻塔戦があるから参加出来ないの。」
「攻塔戦……あぁ、塔の事ですか!」
「塔を所有してるけど、相手ギルドが強くて。」
「なるほど……そう言う事なら了解です!」
「ありがとう!」
「では、こちらからも質問して大丈夫ですか?」
「いいよ!」
「楓さんはギルドマスターをしてると言われましたが、ギルドって何でしょう?」
「……難しい事聞くね。」
「ふと気になりまして……星九自身ギルドマスターをしてますが、果たしてちゃんと出来ているかどうか分かりませんし。」
「なるほど……」
「星九さんはギルドマスターとしてはちゃんとやっていると思うよ。」
絶望さんがそう言った。
「うんうん、毎朝ギルドメンバー全員に挨拶とかチャットで相談に乗ったりしてるし。」
「ありがとうございます。」
「しかし、ギルドね……星九さんの考えるギルドって何?」
楓さんからの質問に言葉が詰まる。
それもその筈、星九自身ギルドはみんなでワイワイする為だけに作ったからである。
そのため、ギルドマスターやギルドの在り方など余り考えた事がなかった。
「うーん……ギルドマスターがいてのギルドでしょうか?」
「ギルドマスターは確かに大事! けど、違うの。」
楓さんはそう言うと座り始め、ギルドについて説明を始めた。
「良い?ギルドは生き物なの。」
「ギルドが生き物?」
「そう……ギルドにとってマスターは確かに大事……けど、マスターだけが頑張ってもダメなの。」
「ギルドは、メンバーさんが合って始めて成り立つモノなの……いくらギルドマスターが優秀でもメンバーさんがいなかったら果たしてギルドと言える?」
「ソロギルドになりますね。」
「そう……メンバーさんにやりたい事や相談とかを尊重して、ギルドマスターはそれを良い方に導いてあげる。」
「そうしたらギルドメンバーさんは自然と着いて来るよ。」
「なるほど。」
「まぁ、ギルドマスターとして気をつけるのはこれくらいかな?」
「ありがとうございます。」
………………
…………
……




