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片割れがいない世界で君は笑う ――愛と執着が交錯するダーク・サスペンス  作者: 愛薆 藍


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第2章『目的』①







「「「「「「乾杯」」」」」」




それぞれ手に取った“それ”を掲げる、異様な面々。



——ふざけた被り物の“やつ”、帽子を深く被った男、どこか浮ついた男、気弱そうな眼鏡の男、美しい顔の女、そして刺青の男。



そこに、美しい顔の女が化粧をしながら冷めた声で言った。



「……それで、なんであんたはそんな上機嫌なの?」


「聞いてよー!あの子がついに見つかったんだ!」

「あの子って?」

「レイちゃんだよレイちゃん!僕の愛しのお姫様!」

「だから今日、会いに行ったんだー!」




「!?」

帽子の男と被り物の“やつ”を除いた、全員が声をあげた。





「会いに行ったのは俺だ。お前じゃない」





その瞬間。

二メートルはあるだろう、腕に刺青の入った男から、殺気が溢れ出す。






「…おい抜け駆けはなしって言ったよなぁ」






男は、帽子の男を睨みつけた。

空気が一気に張り詰める。


帽子を深く被った男が、口を開いた。



「本人かどうか、確認しに行っただけだ」

「別にこちらからは何もしていない」




刺青の男は不満げな顔をし、まだ納得いかない様子で帽子の男に語りかける。





「見つけたのなら、なぜ俺たちに言わない!」





——ガンッ!


刺青の男が机を殴る。

「ちょっと!」と女の抗議する声。



「そ、そうですよ!それに、それだと『約束』とは違うんじゃ……」



眼鏡の男が、慌てた様子で言い返す。

だが、被り物の“やつ”は、会話に楽しそうに割って入る。



「『約束』は破ってないよ!本当に嘘じゃないか、確認しただけ!」

「誤情報流したら、君たち怒るじゃん。特にきみね、きみぃ!」



被り物の“やつ”が、勢いよく指を突きつける。

その言葉に、刺青の男は「あぁん?!」と不機嫌そうにしたが、舌打ちをしてソファにふんぞり帰る。




「……だから確認したのは俺だ」

帽子の男が、小さくため息をついた。




「そのテンションの高さから察するに、本人だったってこと?」




「だいせぇーかぁーいぃー!」




被り物の“やつ”は、ついには『それ』を持ちながら踊り出す。

発する声の気色悪さから思わず、「きもっ」と言葉が出てしまうほどだった。




「……てめぇらが勝手に動いた落とし前は、後にするとして」



「それで?」



「奇襲はいつだ」




刺青の男が、楽しげに笑う。

——だが。




「奇襲はしない」

「あぁ!?」



帽子の男はすぐさま訂正する。

その言葉に、刺青の男は腹を立て、即座に言い返した。



「なんで行かねぇんだよ!居場所分かってんだろうがぁ

!」


「……怒る前に、少しは物事を考えてから言え」



今度は、帽子の男が刺青の男に、鋭い眼差しを向ける。



「あの家にはかなりの『罠』が仕掛けられていた」

「そんな場所に乗り込めば、こちらが返り討ちに会うだけだ」


「それに——前の無垢で可愛いやつじゃない」

「わざわざ『ねずみ取り』にかかりに行ってやるのか?」

「ずいぶんとお粗末なことだ」



帽子の男は鼻で笑い、蔑むような物言いをした。




「……てめぇ……言わせておけば——」




席を立ち上がり、拳を上げ暴れようとする刺青の男。

その一瞬のうちに、被り物をした男は間に入り、声をかける。




「はいはいはい!こんな楽しい日に喧嘩しないで!仲良くやって!」




「喧嘩はダメよぉ!ダメダメ!」とふざけた声で止めに入る。

その姿を見て、興が覚めたのか刺青の男は再度、舌打ちをして乱雑に座り直した。


その隣で、高々と笑う声が聞こえた。



「あぁ!やった!やったぞ!今度は一億買った!はは、爆もうけだ!」



二十代の若そうな男が、立ち上がっておおはしゃぎしていた。



「……まったく、これが、かの有名な名家の坊ちゃんだなんて……。世も末ねぇ」



女ははしゃいでいる男を横目で見ながら、軽蔑の眼差しを送る。

そんな目に気付いたのか、男は興奮しながら反論した。



「お、お前たち!僕のパパのおかげでここにいられるんだからな!それを忘れるなよ!」

「はいはい。……本当に『運』だけは最高に良い男ね」



「運だけじゃない、僕の努力の結果だ!」とぶつぶつ呟く男をよそに、美しい女は尋ねる。



「それで、奇襲じゃなければどう仕掛けるのよ」


「よくぞ聞いてくれました!」

「……手紙を送ったのさ、会いにきてって」



被り物の“やつ”の声が、段々と低くなる。



「今日の目的は何も、生存確認するために出向いたわけじゃない」

「迎える準備をするために出迎えにいったのさ」


「——そう!2番ちゃんと一緒にね!」



「……俺は一人でいいといったがな」



低い重低音になったかと思えば、また高音に戻す被り物の“やつ”。

そして、もう一人は呆れ顔だ。



「て、手紙って何を送ったんです……?」


「もちろん『それ』の写真だよ!」




眼鏡の男が疑問を口にすると、被り物の“やつ”は指をさした。


その方向を見ると、そう——腐らないように保管されている死体の一部。

まさしく『それ』の正体を指していた。






「迎えにおいで。ってメッセージ付きでね」







「2番ちゃんがレイちゃんに直接、僕がレイちゃんちのポストに入れて来たんだー!」



「……何で二枚いる?一枚で十分だろう」



胸にハートを作りふざけたポーズをとる、被り物の“やつ”に、怪訝そうな顔で質問する刺青の男。



「あぁ!2番ちゃん以外は知らないっけ?」



「……レイちゃんの周りに、僕らと会うのを邪魔してくる奴らがいるんだよねー」


「だから警告もかねて手紙を送ったんだよ」

「邪魔したら『そうなるよ』って意図も込めて」



先ほどとは違い、また低い声で、ポツリと呟く被り物の“やつ”。



「ほっときゃいいだろ。そんなやつら」

「敵にもならねぇ」



呆れ顔の刺青の男のほうに、被り物の“やつ”は顔を向ける。



「ほっときたいんだけどね」

「あいつらレイちゃんが動くと、ついてくるんだ」

「金魚の糞の如くね」



「それがさ——すごく邪魔なんだよ」



「だからみんなにもお願いがあって」

「そいつらがきたら消してほしくてね」




「はいこれ写真ー」と言いながら、テーブルに六つの写真を置く。

写真には女二人、男が四人写っていた。





「まぁ、それらの使い方は君たちに任せるよ」

「消してもいいし」

「人質にとってもいい」


「好きに利用してもらって」




「邪魔してきたら容赦しなくていいからねー」と、怠そうに言った。

そこで、悪意に満ちた顔で刺青の男は口を開く。



「なるほどな」

「招き入れて、両方叩く」

「シンプルでいい」



刺青の男が写真を一枚取り上げ、口角を上げた。



「それで俺の『手足』を借りたのか」


「そうだ」

帽子の男が短く相槌を打つ。



「だったらもう、用は済んだだろ。『手足』はどこにいる」


「貸したんだからちゃんと返せ」と、刺青の男は不満げに言い捨てる。



「あの……僕の買った『動物』も、連れてくるはずでは……?」



続いて口を開く、困り果てた顔の眼鏡の男。





そんな二人に帽子を被った男は、吐き捨てるように言う。










「お前の『手足』なら、殺して捨ててきた」

「子供はあいつらに返した」










——一瞬時が止まった。


が、すぐに眼鏡の男と刺青の男が反論する。



「っえ?」

「はぁ!てめ——」



「えー!なんで捨てちゃうの、もったいない!」

「まだ“中身”使えたじゃん!ちゃんと健康状態も良かったし!ジャンク品じゃないのにさ〜」



刺青が入った男の言葉を遮り、被り物の“やつ”が残念そうにまくし立てる。

その横で眼鏡の男は「ありえない……僕のが……」と力なく呟いた。




「こちらのことを喋られても面倒だ。消すに限る」

「消した代わりはちゃんと用意しておく。それならいいだろ?」

「子供もな」



帽子の男は淡々と言い放つ。



「借りた手足よりも使える奴を寄越してやる」



「……早めに用意しとけ。それでチャラにしてやるよ」

「……なるべく同じものがいいです……」



刺青の男は、満足げに答え、眼鏡の男は肩を落としながらも小さく頷いた。




それでもなお「もったいなーい!」と、

被り物の“やつ”だけが、不満げに声を上げる。



「それに健気で可愛かったのに〜!『ナンバー』入りできるって」


その一言で、全員の動きが止まる。







「…ふっ」



——あはははははははっっ!!!



帽子の男と被り物の“やつ”以外を除いた、全員が笑い出した。



「あっほみたい!何が『ナンバー』入りよ!」

「便宜上、ただ番号で読んでるだけなのに!」


「このクソみたいな関係は、ただの利害が一致しているだけだ!」

「それ以上でも以下でもねぇ!」


「な、何もお友達ごっこしているわけでもないですし……。」


「……まぁそれには同感だ。名前なんてなんでもいい」


「でもでも、普通の一番とか三番とかよりも」

「『ナンバー』って付けた方が、かっこよくない?!」



それぞれの意見が、バラバラに飛び交う。

被り物の“やつ”は、そんな光景を見て思う。





——仲間、ねぇ?






「そもそも組織として機能してないからねぇ」

「この集まりに『上』なんてものは存在しないし」


「みーんな、目的のために一緒にいるだけ」







——そう。レイちゃん、彼女がいれば機能する遺伝子。その名も——





『変異革命遺伝子』





この遺伝子をみーんな使いたいだけなんだよねぇ









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