第1章『開幕』⑪ー終ー
———あら、遅かったわね、レイちゃん。
人気のない公園に立っていたのは一人の老婆。
「……なんで、その『姿』なの」
「レイちゃんのお家に寄ったからよ」
「……。」
「そんな睨まないで。ただポストを覗いただけよ」
「何があった」
「素敵な招待状が届いてたのよ。レイちゃん宛に」
杖をつき、胸元から手紙を取り出した。
手紙を受け取り、中身を見た。
「どう素敵な内容でしょ?」
「ふ、ふふ、ふははは、あーははははははっ!!!」
高笑いが空にこだまする。
あぁ、ユウ——
やっと君に会える、会えるよ!
夢の中だけじゃなくて、これからはずっと、いつでもそばにいるからね!
「あのね、レイが⚫️⚫️⚫️り、い⚫️——⚫️⚫️⚫️⚫️も⚫️⚫️⚫️のは——」
——声が、途切れた。
——もう夢の中のユウの声は聞こえない
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静まり返った家の中で、声がした。
「最低最悪ゴミ屑下衆野郎」
「……。何、これ」
「連続誘拐犯だろう男が持ってた封筒の中身」
「……レイには——」
「オリヴィアが家にきた。ポスト漁ってたってことはもう知ってんだろ」
「……。」
アサヒは俯き、唇を強く噛み締めた。
「わざわざご丁寧に防犯カメラがついてる方に目線飛ばしやがって」
「でも、まだ中身が同じだとは——」
「わざわざ、手に持ってる手紙をこれみよがしに見せつけてんだ。同じだろ」
「でも分かったことはあるな」
乙は封筒の中に入っていた、写真とメッセージカードを見た。
そのメッセージに書かれた言葉は
「『君の弟はここにいる 迎えにおいで』……か。」
写真にはユウの『体の一部』と犯人が書いたであろうメッセージと思しき文字が映っていた。
写真をそっと撫で、目を閉じる。
深く息を吐いて、言った。
「敵は一人じゃねぇってことだ」
単独じゃない——
そう呟いた。
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「そこで男は考えた!敵はきっと写真の数から6人であろうと!だから男は——」
「うっるせぇよ!今いーとこなんだ!静かにしやがれ!握りつぶされてぇのか!」
「ていうか、あなたなんでマイクなんて持ってるんですか……?」
「ちょっと机に足乗せないでよ!私の化粧品が汚れるでしょ!」
「おい、みろ!はは!ルーレットを回しただけで1000万買ったぞ?!やっぱ賭博はいい!金なんてすぐ増える!」
「……あぁうるさい……これなら猿の方がマシだ……」
それはどこかの海の上。
広い豪華な部屋のソファに座る6人の人間。
「な、なんでこんなに元気なんですかこの人……」
「さぁね。なんかいいことあったんじゃなーい?」
不振そうな顔をする眼鏡の男に、化粧直しをする女。
そんな言葉には気にも止めず、被り物をした男?はマイクを持ったまま言い続ける。
「さぁ!みんな!『それ』を持って!今宵、記念すべき舞台の幕開けに乾杯しよう!」
被り物をした男?の音頭に一斉に静まり返る。
それぞれ目の前に置いてある『それ』を手にとり、上に掲げる。
———それと同時に三つの声が重なる。
「あっはははははは!やっと、やっとだ、待ち侘びたよこの時を!」
金髪の長い女は愉快そうに言った。
「…一人だろうがなんだろうが、やることはかわらねぇよ」
静かに意思を灯した瞳の女は言った。
「あぁ諸君…!素晴らしきこと日に共に立ち会えたことに感謝を!」
「そして彼女を産み落としてくれた世界に誓おう!」
「僕たちは、僕は、彼女の祝福を邪魔する奴らから——取り返すことを!」
「「「必ず」」」
「殺してやる!」
「止めてみせる」
「奪って見せる!」
——舞台のカーテンが静かに開く。
『さぁ、そろそろはじまるぞ。全員舞台に上がれ!
物語は脇役ばかりじゃ進まない、主役がいないとね。
……僕?僕はこの舞台の観客さ。鑑賞は勿論特等席だ。
観客がいないなんて、そんな寂しいことはないだろう。
楽しみだね、一体どんな物語なんだろうか。』
「…あぁそうだ。舞台を開けるにはタイトルが必要だね。そうだな、タイトルは——」
「 『開幕』 」
……なんて、少しありきたりだったかな。
えっ?
なぜ僕たちは彼女を奪うのか?
それはね——




