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貞操観念逆転世界で100分の1の出会い(年上女性と年の差恋愛)  作者: くろのわーる
第一章

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第45話:キャンプ地

 


 休憩を終えた俺達はコンビニから峠道へと走り出した。


「すず、この先にキャンプ地への道がある」


「この道は何度も走ったことあるけど、道なんてあったかしら?」


 ヘルメットに内蔵されたインカムの感度は良好でお互いの息づかいすら拾う。


「それがあるんだ。秘密の道が……」


「ふ〜ん、智也がいなきゃ絶対に分かんないわね」


 会話をしながら、バイクを走らせていると峠道の中腹あたりに到着する。


「すず、あそこで一旦止まる」


「わかったわ」


 智也が向かった先は、道路脇にある地面が向き出しになった場所。


 軽自動車が1台停められる程度の広さしかない。


「智也、どうしたの故障でもしたの?」


 すずの頭に一瞬、嫌な想像が巡る。


「いや、これから行くキャンプ地はこの先にあるんだ」


 そういう智也が指差す先には良く言って、獣道らしきものが続いていた。


「えっ!?」


「ここからは道が悪いから気をつけて」


「う、うん」


「何かあったらすぐに声掛けて」


 今更、すずの決意は揺るぐことはないが行くには戸惑うくらいの道だった。


 不安と好奇心が交差する中、すずはバイクのハンドルを握る手に力を込める。


 ヘルメットに時折当たる枝の感触や、草に隠れた小さなわだちが、心拍を少し速める。


 最初こそ、草が伸びてすずにはどこに道があるのかすら解らなかった。


 しかし、徐々に進むにつれて、人の手によって整備された後がある道に出て、ほっと息をついた。


「すず、今半分くらいまで来てるから頑張って」


 智也の声に背中を押され、すずは視線を前に向ける。


 大きな石を避けながら、彼の通った跡を丁寧になぞる。


 神経を張り詰めたせいか、腕や肩に心地よい疲労が広がる。


 前を走る智也が突然バイクを停めると、周囲は拓け、風が心地よく頬を撫でた。


 森の香りと湿った土の匂いが混ざり、自然の豊かさを五感で感じる瞬間だった。


 そこはさっきまでの道と違い、地面が整地された拓けた場所。


「すず、お疲れ様」


 その言葉でキャンプ地に着いたことを実感する。


 ヘルメットを脱ぐと、緊張が一気に解け、肩の力が抜けた。


 バイクを降りると自然と広場の端へと向かっていた。


 木々の切れ目から広がる景色は、青空と緑の山並みが織りなす、人工物のない静かな世界だった。


 昼の光が森に差し込み、葉を透かして揺れる木漏れ日が、二人の影を柔らかく包む。


 智也の手がそっとすずの手を握り、温もりが伝わる。


 自然と心が落ち着き、緊張や疲れは景色と共に溶けていく。


 互いの目を合わせただけで、この場所が特別であることを静かに共有した。


 昼の光に照らされた森の空気が清々しく、隣に立つ智也と目を合わせただけで、この場所の特別さを互いに感じ取れた。


 木漏れ日が葉に反射して揺れる中、私は静かに景色を見つめていた。


「すず、疲れた?」


「ううん、この景色で吹き飛んじゃったわ」


 本当は自然と握られた手で疲れを忘れていた。


「良かった。すずと一緒に見たかった景色なんだ」


 智也は少し胸を張って、辺りを見渡す。


「ここさ、俺の親父と一緒に作ったんだ」


 すずが首をかしげる。


「作った…って、ここを?」


「まあ、正確には“自分たちの秘密の場所”って感じかな」


 智也は手を繋いだまま、すずを連れて身振り手振りで説明する。


「子どもの頃、夏休みに親父と一緒に木を切ったり、地面をならしたりして。誰にも教えない場所にしたくて」


 すずは少し驚きながら、智也の説明を聞く。


「すごい…だからあんなに道が険しかったのね」


「うん。だからここは俺達しか来ないし、誰もいないからなんか落ち着くんだよね」


 彼は自然の空気を独り占めするように深呼吸をする。


「昔の俺も、今の俺も、安心できる場所」


 智也は少し視線を落として、でも自然に笑う。


「親父は昔から、俺に色々教えてくれた。火の扱い方とか、テントの立て方とか、バイクもそう。全部、この場所で覚えた」


 すずはそっと智也の肩に手を置く。


「そんな大事な場所に、私も来ちゃっていいの…?」


 彼は少し間を置き、優しく私を見つめる。


「もちろん。ここは俺たちの場所にもなるんだ。親父の思い出も、俺の覚悟も、全部、共有したい」


 すずは微笑み、頷く。


「うん…じゃあ、今日はここで、私たちの思い出を作ろうね」


 智也も微笑み返し、テントの設営を始めるべく、バイクから荷物を下ろしていく。


「よし、まずは設営。木々に囲まれてるとはいえ、標高が高いせいで、風が強いから気をつけないと」


「わかったわ」


「すずは予行練習でやったこと覚えてる?」


「正直、自信がないかな…」


 二人で協力しながらテントを立てる。


 風に煽られそうになる生地を押さえながら、息を合わせてペグを打つ。


 徐々に形になっていくテントを見て、達成感が胸に広がる。


「ふぅ…やっと完成だね」


「うん、二人でやると意外と早かったかも」


 疲れた体を互いに感じながらも、自然と視線が合う。言葉はいらなかった。


 長い道のり、険しい獣道、そしてこの秘密の場所までの全ての時間が、二人をここまで導いたのだ。


 智也がそっと手を差し伸べ、すずがそれを握る。


 木漏れ日が二人の周りで揺れ、風がそっと頬を撫でる中、自然に肩を抱き寄せた。


 森の静けさが二人を包み込み、無言のまま抱き合った。


 ここにいる、というだけで、互いの存在の特別さを改めて感じる瞬間。


 強くもなく、派手でもない、ただ優しく、確かな温もり。


 鼓動がかすかに伝わり、昼の光が二人を優しく包む。


 五感すべてがこの瞬間を祝福しているかのようだった。


 しばらく抱き合ったまま、すずは目を閉じ、微かにほほ笑む。


「…やっぱり、ここは私たちの場所だね」


「うん、俺たちだけの場所だ」


 智也も微笑み返し、最後にもう一度深呼吸をする。


 風が少し強くなってきた中で、二人の穏やかな笑い声が森に溶けていく。


 テントの設営を終え、二人は荷物を整理しながら火を起こす準備に取り掛かる。


 枯れ葉や小枝を集めると、智也が丁寧に火床を作る。


 その動きを見て、すずも自然に手を貸す。


「火って、最初はなかなかつかないんだよね」


「うん、でも頑張ろう」


 小さな火種が薪に燃え移る瞬間、ぱちぱちと音を立てて炎が揺れる。


 森の静けさの中、火の匂いと熱が心地よく二人を包み込む。


 すずは思わず笑みをこぼした。


 智也が手際よく野菜や肉を切り、簡単な鉄板焼きを始める姿が逞しく、素敵だなと感じて…。


 湯気と香ばしい匂いが森に漂い、思わず深呼吸する。


「わぁ、いい匂い…」


 すずの目は楽しそうに輝き、自然と笑顔になる。


「すず、お皿の準備は?」


「出来てるわ」


 智也も満足そうに頷き、火を囲んで食材を焼く。


 小さな炎の光に照らされ、二人の顔が柔らかく温かく映る。


 火を囲む時間は、ただの食事以上のものだった。


「前に智也と食べたキャンプご飯も美味しく感じたけど、今日のは格別ね」


「それはここの空気が綺麗だからだよ」


 険しい道のりを経て辿り着いた場所で、二人で作る料理のひとつひとつが、今日の思い出をより深く刻む。


 静かな森の中、炎の揺れを見つめながら、すずは小さな幸せを胸に抱く。


 智也もまた、火の温もりとともに、二人だけの時間の尊さをかみしめていた。


 親父と一緒に作った場所で、新しい“二人の物語”が、静かに、でも確かに始まろうとしていた。



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