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悪役と一緒。  作者: 道野ハル
なんだかんだで3クール目!
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34/34

横ならび



「うわっ!山本さん超久々じゃん!」

「どもども、ご無沙汰してます〜」


 と、ゆうことで久々にバイトに出てみた。別にお金が欲しかったわけじゃない。赤星くん、リュウくん、そしてアタルくんの様子が気になったからだ。


 だってデスロトロイザー・アケミ(=私)は、数日前、突如宇宙警察の牢屋から消えてしまったワケで。あのあとアタルくんから上手く誤魔化すことができたのでご心配なさらず的なLINEがきたけど本当に大丈夫かどうかなんて分かんないじゃん。文字だけじゃ分からない。ましてやアタルくんのことだ、絶対に私が気に病まないように気を遣いまくってるに違いない。


「あ、そっか!山本さん、欠員出たから入ってくれたんだ!?」

「そうそう、鈴木さんのお子さんが熱出しちゃったってグループLINEにあったから、じゃあ入ろうかなって」

「マジでありがたい!土昼マイナスで回すの絶対キツイもん!」


 助かったー、神だわー、と幽霊バイト化した私をこれでもかというほどに拝みまくる赤星くんは、いつもと変わらないように見える。だがしかし、安心しきってはいけない。こんなふうに振る舞ってるけど、もしかしたら宇宙警察内では「お前らアケミを逃したのか!?ポリスメンズの資格剥奪だ!」とかめっちゃ大変なことになっているかもしれない。



 キュッキュッ


 キュッキュッ



「赤星くん元気だった?青春してる?」

「青春ってっ(笑)」


 カトラリーを拭きながらさりげなく聞いてみる。12:00過ぎたら忙しくなるから、話すなら今しかない。アカボシくんはこれまたオーバーなくらいにウケたあと、あっ!と言ってまん丸の目をバッとこちらに向けた。


「アタル、恋してるかも!」

「はっ?」

「いや、あいつあんまスマホ見ないのに最近チラチラ画面つけてて、誰かのLINEまってるんじゃないかって……」

「いや、たま◯っち始めたからだよ」

「!」

「!うわっ、アタル!!」

「山本さん、お久しぶりです」

「ウンウン久しぶりーっ」


 うわっ、ビックリした。この流れからのアタルくん登場は心臓に悪いって。アタルくんはいつもの爽やかスマイルで、かつホントに久しぶりに会ったみたいに私に接してくる。……すごいな、どんだけ芝居うまいんだよ。マジで久々なんじゃないかって錯覚しそうになっちゃうよ。


 あれから、まだちょっとしか経ってないのに。


「山本さん、もう一つの職場が忙しかったんですか?」

「!、そうそう。うちの乗っ取りを企てる企業がいきなり襲撃し……電撃訪問してきてテンヤワンヤだったんだけど、何とかおさまりまして。で、これを機に他店とも仲良くした方がいいんじゃない?みたいなことになって、今いろいろ模索中ってとこかな」

「へえ!あのヤバイ店長が考え変えたってこと?」

「そう、みたい。なんか今めっちゃ頑張ってるよ」

「他に、なにかなかったんですか?」

「「え?」」


 赤星くんと声を揃えてアタルくんを振り返る。アタルくんは相も変わらず爽やかな微笑みを浮かべ……


「ゴタゴタが解決したのと店長が考えを変えた間に何かあったんじゃないかなって。そうじゃないとその店長、考え変えなさそうじゃないですか?」

「……」

「え?他の店とやり合うのは大変だから仲良くしようと思ったんじゃないの?」

「まっ、自分で言うのもアレだけど私も活躍したかな!」

「「活躍?」」


 今度は私がアタルくんと赤星くんの注目を集めることになった。ちょ、久々のダブルイケメンの視線は眩し過ぎるって……とかいってる場合じゃない。アタルくんの笑顔がどことなく黒い。イヤ気のせいかもしれないけど。アタルくんに報告してなかったことに対してプチ罪悪感を抱いてるからそう見えてるだけかもしれないけど。


「いや、私もバタバタしてて店に居られない期間があったのよ。たぶんそのことで私が普段どれだけお店に貢献してるかが分かったんじゃないかな!」

「なるほど!山本さんがシフトから抜けることで、ありがたみが分かったんだな!」

「そうそう。そしたら私の意見も結構聞いてくれるようになって」

「他のお店と仲良くした方がいいっていうのが、山本さんの意見ってことですか」

「うん!でもアレだよ、言い出したのは本人だよ。いやあ、とてつもない進歩ですよ」

「だなー!やっぱり人間って変わるんだなー!」


 ウン、これである程度伝わったんじゃない?我ながら上手く暗号化(?)できたと思うよ。意外とスパイとかいけるんじゃない?そんな危ないことしたくないけど。



 いらっしゃいませー!


 いらっしゃいませ、ようこそー!


 

「お、ランチ始まったな!」

「だね」

「じゃ、俺今日キッチンなんで」

「あ、アタルくんっ」

「はい」


 自然な表情でアタルくんが振り返る。……たぶん、私がそのために来たって分かってるんだろうな。


「今日あがり同じだよね?一緒に帰ろー!」

「はい」

「えー!いいなー!俺も久々にいろいろ語りたいんだけど!!」

「ユウジは夜まででしょ」

「くそー!シフトミスったぁぁ!!」


 レッド感満載で悔しがる赤星くんを軽めに諭して、私とアタルくんはそれぞれの仕事に向かった。




 数時間後、夕方――公園。


「と、ゆうことなんだけど、あの小ギツネさんがどうしてるかアタルくん知ってるかな?」

「ウチにいます」

「え!?」


 いつものごとく、アタルくんにこれまでのあらすじをお伝えして本来の目的を告げてみたら意外や意外、探しものはソッコーで見つかったのでした。


「あ、家じゃないですよ。地球署です」

「ああ!てっきりアタルくんと同棲してるのかと」

「家、ペットNGなんで」

「なるほど」


 確かに見た目はキツネさんだからご近所の目とか厳しそうだもんね。ってか普通に考えて一緒に住まないか。未遂に終わったとはいえ、ガチで一人の人間(=私)を殺そうとしたもんね。


「でも、なんで地球署にいるの?」

「彼――ルーっていうんですけど、昔、102の王と何かあったみたいで」

「え、あのスネ……キツネ王と?」

「はい」


 アタルくんが目線を下げる。夕陽に照らされた長いまつ毛が、白い肌に影をつくった。……その姿がなんだか儚くて、私はちょっと不安になった。


「山本さん、ルーがあの時言ったこと覚えてますか?」

「!、うん」



“キレイ事だ……”


“そんなのキレイ事だーっ!!”



 私がロイの代弁者としてスネ王に語りまくった後に飛んできた言葉だ。いろいろバタバタだったけど、意味深だったからちゃんと覚えてる。


「昔なんかあったって……どうゆうこと?」

「ルーの発言が気になったので身辺を調べてみたら意外なことが分かって。どうやらルーは今の王――フォクス三世の実の息子らしいんです」

「え!?」


 息子!?ってことは王子だよね??なんで王子が兵隊に紛れてたんだ?もっと王の横で偉そうに座っててもいいもんじゃ……


「あ、ロイに奇襲かけるために兵側にスタンバってたってこと!?」

「俺もそう思ったんですけど、周りの話を聞くとあの時だけじゃなくてもう何年も前から一兵卒として務めてるみたいで」

「え……なんでだろう」

「わかりません。ルー自身は、そのことについて一切口をききません。本来は傷が快復して事情聴取が終わったら102に送る予定だったのですが気になって……。だから適当に理由をつけて、まだ地球署にいてもらってます」

「……そっか。それでアタルくんが、面倒みてるんだ」


 アタルくんは優しい。でも色んな人を気遣って、庇って、いつも自分のことは後回しにしがちだ。だから、大丈夫かなって不安になる。今回だって友達でも知り合いでもない小ギツネさんのことを心配して……。大丈夫なの?たくさん抱えて、疲れてない?


「大丈夫です。ユウジもリュウも協力してくれてます」

「え、」

「山本さん、俺一人で大変じゃないか?って思ってくれたんじゃないですか」

「!!、エスパー!!」

「だから分かりやすいんですって」



 ふっ



 あ……アタルくんのこの笑顔、久しぶりに見たかも。


「なんか、コスモマシーンの中でいろいろ話したじゃないですか」

「!ああ、うん」

「俺たちずっと一緒にいるけど、過去に何があったのかとか、そうゆう話ってほとんどしたことなくて。あれから、お互いにちょっと見え方が変わった気がします。それにもっと知りたくなった。ルーのことは、俺が気にしてるのに気付いてユウジが声かけてくれたんです。“あいつのこと、どうしたい?”って。上層部への掛け合いはリュウが進んでしてくれました。無愛想だから苦労してたけど……。でも二人のお陰で、ルーは今、地球署に居られるんです」


 アタルくんは瞳を細めながら優しい口調で話してくれた。その姿から、赤星くんとリュウくんのことが大好きだって分かる。ちょっと、変わったな。今までも二人を大事にしてたと思うけど、たぶん少し距離があった。でも今は違う。同じラインに並んだ気がする。


「あ。すみません、話逸れて」

「いやいやいや!!なんか、嬉しかった。なんかいい方向に進んだっていうか……。アタルくんが嬉しそうで、私も嬉しいっ」

「……ありがとうございます」


 ちょっと戸惑いながら、はにかむようにアタルくんが笑う――なんだなんだ、今日は色んなアタルくんが見られちゃうじゃないか。おばはんトキめいちまうじゃないか。


「ねえアタルくん、ルーくんのことで、やってみたいこととかある?」

「え?」

「私テレポーテーションできるじゃん、自分で言うのもアレだけどだいぶポテンシャル高いと思うよ。アタルくんのこと手伝いたいし、こっちの問題も解決したいし……なにか出来ることがあれば是非!」

「……例えば、俺も一緒にテレポーテーションしてもらうことは可能ですか?」

「もちろん!」

「そうですか」


 私がそう答えると、アタルくんはどこかホッとしたような様子で笑った――そして目を見て話し始めてくれた。これからアタルくんがどうしたいのかを。





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